国家安全保障に不可欠な鉱物の選定に重要な資料となるリストの作成方法の検討
2023年09月13日、米国下院のエネルギー鉱物資源小委員会は、米国地質調査所(USGS)の重要鉱物リストの作成方法とその内容に関する監視公聴会を開催しました。ここで、小委員会委員長であるピート・スタウバー議員(共和党、ミネソタ州選出)は「業界の専門家たちがこのリストをどのように改善すべきかについて貴重な見識を示してくれた。しかし、リストを参考に行動するには少し遅い。」という共和党側からの意見を述べました。
背景・概要
米国は、国家の安全保障と経済的繁栄に必要な特定の鉱物資源を他国に大きく依存している、と考えています。これは、①燃料以外のニッケル、コバルト、リチウム、その他多くの非燃料鉱物の需要は、主に再生可能エネルギー技術の成長によって、今後数年間で急速に増加すると予想されている、②これらの資源を他国に過度に依存することは、国家の防衛戦略的にも経済的にも大きな懸念をもたらす、③これらの最大の供給国の多くは、米国とは相反する利害関係を持っている、という予測や事実が根底にあります。このような懸念に対処するため、2017年12月、当時のドナルド・トランプ大統領(共和党)は、米国の経済と国家安全保障に不可欠な鉱物の国内供給を支援する国家戦略と計画を求める大統領令を発布しました。
そして、2018年、内務省は米国地質調査所(U.S. Geological Survey’s、USGS)を通じて、35品目の重要鉱物の初期リストを公表しました。 この時、内務省は、鉱物の「供給不足リスクの定量的評価」、「供給網に問題があるかどうかの評価」に加え、「特定の鉱物に対する米国の他国への純輸入依存度」、「米国外で生産される量」、および「外国の供給者が米国への供給を継続する意思」などを考慮に入れました。そして、重要鉱物とは、(1)米国の経済および国家安全保障に不可欠な非燃料の鉱物、(2)切断されやすい供給網から供給される鉱物、(3)重要製品の製造に不可欠で、無くなった場合米国経済または国家安全保障に大きな影響を及ぼす鉱物、であるという定義付けを行いました。この内容は、その後2020年エネルギー法7002条に成文化され、2021年統合歳出法で法制化されました。
一方、バイデン政権下では、2018年の重要鉱物最終リストに含まれていた35品目の重要鉱物リストに変更が加えられました。変更内容には、2018年リストの公表時、USGSが「燃料と非燃料の両方の用途を持ち、大幅な輸入依存を示している鉱物の1つである」と強調していたにもかかわらず、ウランの除外が含まれていました。そして、科学的検証結果を提出したUSGSの思いに反して、重要鉱物リストからウランを削除する法案、「2019年ウラン分類法」も提出しました。加えて、2020年エネルギー法でも、ウランを重要鉱物でないと特定こそ行いませんでしたが、同法で重要鉱物リストへの除外カテゴリーとして、(1)燃料鉱物、2)水、氷、雪、3)一般的な砂、石、砂利の3つを挙げました。そして、ウランが「燃料鉱物」であるため除外対象とすることを方法論として確立しました。2021年後半から2022年初頭は世界最大のウラン供給国であるカザフスタン、ロシア、ウズベキスタンが東欧での軍事的緊張に係わっていたにもかかわらずです。最終的に、2022年02月、ウランを重要鉱物とせずに、重要鉱物最終リストを発表しました。この時のリストの変更では、天然ガスの成分として生産されるヘリウムやカリ(potash)もリストから削除され、希土類元素グループを単一項目から個別項目にすることで、2022年重要鉱物最終リストを50品目としました。
以上のような背景や共和党側からの見方を踏まえ、現在共和党が優位である米国下院のエネルギー鉱物資源小委員会は、USGSの重要鉱物リストの作成方法とその内容に関する監視公聴会を開催しました。
注目すべき内容
2023年09月13日、米国下院のエネルギー鉱物資源小委員会は、監視公聴会を開催しました。そしてこの場で、USGSの重要鉱物リストの作成方法とその内容に関する現政権下での変更点や、将来の重要鉱物リストの選定に追加される可能性のある基準に関する質問や意見交換を行いました。参考人として米国地質調査所の鉱物情報調査チーフ、鉱物経済学コールター財団チェアーの経済学・ビジネス研究教授、アトランティック・カウンシル、グローバル・エネルギー・センターの研究・プログラム担当ディレクター、ユタ鉱業協会の会長、カリフォルニア州サンホセ州立大学の環境学部教授などが参加しました。
この公聴会では、特に2023年07月にエネルギー省(Department of Energy、DOE)から公表された重要物質リストとUSGS の重要鉱物リストの違いについて、討論されました。そして、USGSリストが「米国内で採掘された鉱物を部門横断的に分析している」のに対して、DOEのリストは「エネルギー技術部門における最終用途に焦点を当てて鉱物を分析している」ことが明らかになりました。例えば、銅はDOEでは重要な鉱物とみなしていますが、USGSでは重要な鉱物とはなっていません。また、USGSのリストが「現在の供給と消費のデータに基づいて供給リスクを決定」しており、DOEのリストが「近い将来の供給と消費の予測に基づいて決定」していることとは異なっていることもわかりました。どちらにしても、USGSの重要な鉱物リストの更新時期が迫ってきており、米国やエネルギー鉱物資源小委員会にとって鉱物の重要性についての基準をどのように決定していくかは、極めて重要な検討事項となっています。
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