2023.12.17
米国|連邦自動車安全基準(FMVSS)への、新型軽自動車に対して車両間(V2V)通信を義務付ける規則案を取り下げ
米国運輸省の道路交通安全局、衝突防止のための車両間通信の方法に新しい技術を取り入れるため、従来の規則案を撤回
2023年11月20日、米国運輸省の道路交通安全局(NHTSA)は、新型軽自動車に車両間(V2V)通信を義務付けるという、連邦自動車安全基準(FMVSS)への従来の規則案(2017年01月12日に公表)を撤回しました。新しいV2V通信方法の登場、そして5.9GHz(ギガヘルツ)帯の規制に関する最新の連邦通信委員会(FCC)の決定を受け、新しい車両間の通信方法を模索しそれを取り入れる目的で取り下げを行っています。この内容は自動車製造や通信機器に係わる事業者に影響が及びます。この規則案は2023年11月20日に撤回されています。
背景・概要
車両間(Vehicle-to-vehicle、V2V)技術は、車両が特定の無線周波数帯を使用して、速度、方位、ブレーキ状態などの車両情報を周囲の車両と送受信する技術を指します。この技術を生かしたシステムは、周囲の車両との衝突の可能性を計算し運転者に警告することができます。V2V技術は、カメラやそれ以外の感知システムを含む、いわゆる「車両常駐型」技術とは別にそして補完的に機能します。V2Vでは、物理的な障害物を避け、天候や光の条件が最適でない場合でも送受信できる様に、無線周波5.9GHz(ギガヘルツ)帯が採用されています。日本では、この5.8GHz帯は、高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems、ITS)の道路側機器と車両の間の通信で使用され、高速道路の渋滞情報サービスなどが提供されています。
2017年01月12日、米国運輸省の道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration、NHTSA)はV2V通信に関する新たな連邦自動車安全基準(Federal Motor Vehicle Safety Standard、FMVSS)を策定するための規則策定提案公告(notice of proposed rulemaking、NPRM)を発表していました。このNPRMでは、車両間で使われる専用近距離通信であるDSRC(Dedicated Short Range Communications)を使用したV2V通信技術をすべての新型軽自動車に義務付けることを提案していました。加えて、DSRC以外の技術を使用した送受信システムを用いた場合の規則への準拠方法、V2V通信の内容・セキュリティ保護・取り扱いに関する技術要件などを提案していました。この時のNPRMでは、DSRC以外の送受信システムは認められていたものの、DSRCと相互に運用する要件が提案されていました。ただし、この時点ですでに、従来型のDSRCが運用されてきた5.9GHzの無線周波帯が、コードレス電話、屋外用ブロードバンドを用いたトランシーバなど、免許不要の機器に開放される可能性についても言及されており、DSRC技術を使用したV2V通信システムの実現可能性についても、関係者もしくは一般からの意見を求めていました。
2023年11月20日、NHTSAはこの2017年NPRMに関して得られた492件のコメント、新しいV2V通信方法の登場、そして連邦通信委員会(Federal Communications Commission、FCC)の5.9GHz帯の規制を考慮し、2017年に発表された規則案を撤回しました。
注目すべき内容
- 492件のうち100件以上の意見が、自動車メーカーやサプライヤーおよび関連団体、無線会社およびその関連団体を含む事業体からでした。また、消費者団体、業界団体、非営利団体、シンクタンク、連邦政府、州政府、地方自治体、さらに個人からも350件以上の意見が寄せられました。その意見のほとんどはすべての新型軽自動車にV2V技術を義務付けることに支持を表明していました。ただし、同時にコメントを寄せた多くの個人からは、通信によるセキュリティ、プライバシー、電磁波過敏症に対する懸念も表明していました。
- 2017年NPRMの発表以降、DSRCの代替手段として、携帯電話の通信規格であるLTE(Long Term Evolution)を利用したCellular-V2X、いわゆるLTEのC-V2Xが、登場しました。V2Xとは、「Vehicle to everything (X)」の略で、車両と車両以外に、様々なもの(信号機・道路標識などのインフラ、歩行者、地図情報を提供するネットワークなど)との間の通信や連携を行う技術のことを指します。LTE C-V2Xは、携帯電話の通信技術を基本しながらも、通信の中継地を必要とせず通信機器同士で直接送受信できるシステムです。さらに現在では、第5世代(5G)移動通信システムを標準化する団体も、C-V2Xの5Gバージョン(5GのC-V2X)の開発に取り組んでおり、DSRCまたはLTEのC-V2Xよりも通信性能がさらに向上すると考えられています。加えて、この技術は車両のプラトゥーニング(先頭の車両だけ運転者が操縦し後ろの車は先頭車両を追従する自動運転で隊列走行させること)、高度な運転、拡張センサー、遠隔運転のさらなる進化を可能にすると言われています。そのため、DSRCの代替ではなく、むしろ最新のV2X通信システムに重点を置いた規則提案が求められています。
- 2020年11月18日、FCC は9GHz帯規制を改定し、5.9GHz帯の5.850から5.895GHzの再割り当てを承認する最終規則を発表しました。再割り当てでは、それまで、車両間通信のために確保されていた周波数帯のうち下の方の45MHz分を免許不要の電話やトランシーバなどの機器に解放されました。また、FCCは車両間通信の用途として残りの30 MHzのうち20 MHz分を、DSRCからC-V2X技術を用いたシステム使用に移行することもNHTSAに求めました。すでにNHTSAは、米国商務省の電気通信情報局(National Telecommunications and Information Administration、NTIA)、米国国防総省、NASA(National Aeronautics and Space Administration、米国航空宇宙局)、国立科学財団(National Science Foundation、NSF)と協力して技術分析等を実施しており、C-V2X技術が車両間の通信を行えるかどうかについて活発な研究活動が行われています。
今回、運輸省とNHTSAは、V2Vが、道路での車両の安全性を向上させ、運転者に適切な情報とサービスを提供する技術であると認めた上で、新たなV2X技術通信の通信方法の登場や、FCCによる5.9GHz帯の管理を行う規制の改正を考慮して、2017年に提案された規制案を修正するだけでは妥当ではないと判断しました。そして従来のV2V規制案を、2017年1月12日の連邦官報に掲載され時点で撤回しました。
参考情報
連邦自動車安全基準(FMVSS)への、新型軽自動車に対して車両間(V2V)通信を義務付ける規則案を取り下げ
電気通信情報局とは
米国商務省電気通信情報局(National Telecommunications and Information Administration、NTIA)は、米国大統領に対して電気通信および情報政策に関する助言を行う行政機関です。具体的には、他省庁と協力して、ドメイン名関連、電波の周波数割り当て、ブロードバンド、 インターネットの利用に関連する政策課題、例えばネット上のプライバシー、 サイバーセキュリティ、著作権などの管理に対して、助言や協力を行っています。
連邦通信委員会とは
連邦通信委員会(Federal Communications Commission、FCC)は、米国政府の独立機関(Independent agencies of the United States government)です。1934年通信法に基づき設立され米国の国内で発信するラジオ、テレビ、電信、電話、衛星、ケーブル、ワイヤレス、インターネットを含むすべての通信を規定、管理していいます。また、規則の制定以外に、事業者に対する免許交付、更新、または法律違反の罰則を下す裁定も行っています。アメリカの行政機関ですが、大統領を頂点とする行政府に属さず、国民の代表である議会が責任を負う機関です。そのため、FCCの予算は連邦議会で承認されなければならず、FCCは連邦議会に年次報告書を提出する義務があります。
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