結晶シリコン太陽光発電(CSPV)のセルの関税率割当(TRQ)量が5GWから12.5GWに拡大
2024年08月15日、特定の結晶シリコン太陽光発電(CSPV)のセルの輸入に関する関税率割当(TRQ)量を変更する大統領令が公布されました。具体的には、米国統一関税表(HTS)に記載されたCSPVセル、およびモジュールなどのその他のCSPV製品の輸入に適用される関税措置が、この公布の附属書Iに定めるとおりに、関税率割当(TRQ)量が5 GWから12.5GWに拡大されました。
同時に、このTRQの拡大は、米国東部夏時間2024年08月1日午前12時1分以降に、米国に輸入もしくは輸出される商品より有効となることも発表されました。ただし、この公布で言及されたセーフガード措置の終了(2022年から4年間)から1年後、この公布の附属書Ⅰで定められた関税規定は、HTSから削除されるものとされています。結晶シリコン太陽光発電(CSPV)を米国に輸入している事業主などは注意が必要です。
この大統領令の背景
この大統領令は、以下3つの大統領令による施行とその他の報告や嘆願を経て、最終的に発表されたものです。
- 2018年01月23日、大統領令(布告9693号)により、部分的または完全に他の製品に組み立てられていない特定の結晶シリコン太陽光発電(crystalline silicon photovoltaic、CSPV)の両方を含むセルの輸入に対する関税率割当(tariff-rate quo、TRQ)に4年間(2018年~2022年)のセーフガード措置が設定されました。具体的には、結晶シリコン太陽電池の輸入と、TRQを超えるCSPVセルおよびCSPVモジュールを含むその他すべてのCSPV製品の輸入に対する関税(セーフガード関税)の引き上げが施行されることが発表されました。
- 2020年10月10日、大統領令(布告10101号)により、(a) 二重構造モジュールのセーフガード措置の適用除外を取り消し;(b) 二面体モジュールのセーフガード措置の4年目のセーフガード関税を15%から18%に調整を行いました。これは、米国国際貿易委員会(United States International Trade Commission、USITC)から「国内太陽電池産業に関する動向の監視結果に関する報告書」および「セーフガード措置の修正が国内CSPVセル・モジュール製造産業に及ぼすと思われる経済効果に関する報告書」が提出され、また国内のCPSV関連の産業代表者の過半数からの嘆願書を受け、「国内産業が輸入競争に対して前向きな調整を始め、国内のモジュールの生産能力、生産量、市場シェアが増加している」と判断し結果、行われた調整でした。
- 2021年11月16日、米国国際貿易裁判所(United States Court of International Trade、CIT)は、株式会社Solar Energy Industries Associationなどと米国との裁判において、2020年10月10日の大統領令が法定権限を逸脱していると判断し、その布告の執行を差し止めました。しかしながら、2023年11月、連邦巡回控訴裁判所のパネルメンバーが、このCITCの決定を覆しました。
- 2022年02月04日、大統領令(布告10339号)において、CSPVセルの輸入に対するセーフガード措置は、国内産業への深刻な損害を防止または救済するために引き続き必要であると判断し、以下の(a)と(b)を施行することを発表しました。(a) 太陽電池の輸入に関するTRQを4年間追加して継続し、TRQ量を変わらずに5ギガワット(GW)とし、5~8年目にはこの大統領令の付属書Iに記載されているとおり、5GW超えて持ち込まれた商品に適用される関税率を毎年段階的に引き下げる。(b) CSPVモジュールの輸入に関するTRQを4年間追加して継続し、関税率は毎年段階的に引き下げる。
- 2024年02月06日、USITCは「国内太陽電池産業に関する動向の監視結果に関する報告書(第2回)」を発表し、セーフガード措置が国内産業の前向きな調整につながったことを明らかにしました。この報告書は、延長4年間に対する、合衆国法典19編「関税」の通商法(Trade Act、19 U.S.C.2253)に基づいてUSITCが行った中間発表で、国内産業の労働者や企業が行った進捗状況や具体的な努力など国内産業に関する動向を大統領と議会に報告した内容が含まれています。
- 2023年09月19日、国内産業の過半数を含む代表者の名前で、「TRQを撤廃し、CSPVセルの全輸入品を無関税とすることでセーフガード措置を修正する」もしくは「TRQ量を年間5GWから20GWに引き上げる」のどちらかを行うように請願書が提出されました。
この大統領令の内容
2024年08月15日、大統領令(布告10790号)により、米国統一関税表(Harmonized Tariff Schedule of the United States、HTS)に記載されたCSPVセル、およびモジュールなどのその他のCSPV製品の輸入に適用される関税措置が修正されました。
修正では、①USITCの中間報告と嘆願書を受け、国内産業が輸入競争に対して前向きな調整が継続していると判断されたこと、②CSPVモジュールの生産実績および生産計画の増加、国内セルの生産計画に関するさまざまな発表、国内産業の財務、貿易、雇用に関するいくつかの指標が改善されたこと、③CSPVセルの輸入が増加していること、という3点の理由から、TRQ量が12.5GWに引き上げられています。
このため、CSPVに関連する事業体は注意が必要です。具体的に以下のことが施行されます。
(1) 大統領令の附属文書I内のTRQ量を示す数字を5(GW)から12.5に修正
(2) この大統領令(附属書Iを含む)によるHTSの修正は、米国東部夏時間2024年08月1日午前12時1分以降に行われた商品の輸出入に対して有効
(3) 対象となるCSPV製品で、2024年08月1日以降に米国に持ち込まれるものは、修正後のTRQ上限が有効
(4) 米国税関および国境警備局(U.S. Customs and Border Protection)による、この公布の施行のために必要な措置
(5) 大統領令で言及されたセーフガード措置(2022年からの4年間)の終了から1年後、この公布の附属書Ⅰで定められた米国の注記および関税規定は、HTSから削除
(6) この布告で行われた措置と矛盾する以前の布告および大統領令の規定は、その矛盾の範囲内で優先
参考情報
注目情報一覧
新着商品情報一覧
調査相談はこちら
概要調査、詳細調査、比較調査、個別の和訳、定期報告調査、年間コンサルなど
様々な調査に柔軟に対応可能でございます。
- ●●の詳細調査/定期報告調査
- ●●の他国(複数)における規制状況調査
- 細かな質問への適宜対応が可能な年間相談サービス
- 世界複数ヵ国における●●の比較調査 など