FTC、合併事前届出(HSR Filing)で提出が義務付けられている情報内容を改正
2024年11月12日、連邦取引委員会(FTC)は、司法省反トラスト局の同意を得て、ハート・スコット・ロディノ反トラスト改正法(HSR改正法)に基づいた合併前通知規則を改正し、最終規則としました。この規則には根拠および目的説明書が付随しており、特定のM&A(Mergers and Acquisitions、合併と買収)に関する合併前通知、報告および待機期間要件に関する説明書を含んでいます。
今回の改正で、HSR法の下で報告対象となる合併などの当事者(買収者と被買収者)は、合併の初期評価を行うための適切な文書資料と情報を提出することが要求されます。この最終規則は、2025年02月10日に発効します。
独占禁止法とは
米国の独占禁止法は、単一の法律ではなく、すべての州に適用される3つの連邦法から構成されています。1890年制定のシャーマン法、1914年制定のクレイトン法、1914年制定の連邦取引委員会(Federal Trade Commission、FTC)法です。シャーマン法は、反トラスト法とも呼ばれ、カルテルなどの取引制限を禁止する法律です。
クレイトン法は、シャーマン法の予防的な規制を目的とし、競争を阻害する価格差別の禁止や不当な排他的条件付取引などを禁止しています。FTC法は、不公正な取引方法などを禁止するとともに、執行機関である連邦取引委員会の権限や手続きを規定しています。シャーマン法は司法省(Department of Justice)の反トラスト局(Antitrust Division)が、クレイトン法は反トラスト局とFTCが共同で、FTC法はFTCが担当しています。
ハート・スコット・ロディノ反トラスト改正法とは
ハート・スコット・ロディノ反トラスト改正法(Hart-Scott-Rodino Antitrust Improvements act、HSR法とも呼ばれる)とは、米国の連邦反トラスト法のひとつで、クレイトン法の一部を改正する法律として制定されました。米国では、違法なM&Aが行われるまたは行われた場合、司法省や利害関係者はその差し止めを求めて訴訟を提起でき、FTCが合併禁止の命令を出すことがあります。
しかし、このような手続は非常にコストと時間がかかるため、一定規模の合併(例えば、合併により取得される資産や株式その他の持分の価値が6,520万ドル以上など)に関してはその内容を事前に司法省とFTCに届出(「合併事前届出(HSR Filing)」という)させ審査します。HSR法は、この「合併事前届出」を規定しています。
米国での合併事前届出(HSR Filing)とその後の合併への流れ
HSR法では、合併前に司法省とFTCが当事者により提案された合併を評価する法定待機期間を30日間(ただし、現金による株式公開買い付けや特定の倒産による売却の場合は15日間)としています。この間、合併の当事者は合併取引を完了しないことが義務付けられています。この「最初の待機期間」で、司法省とFTCは買収者、被買収者または第三者からの情報である「合併事前届出」を審査(初期評価と呼ばれる)します。
クレイトン法の下では、司法省とFTCは、当事者に対して追加的な情報または文書を要求する権限があり、これを「2回目の情報要求(Second Request)」と呼びます。この Second Requestsが当事者に認められた場合、待機期間はさらに30日間(現金による株式公開買付けまたは特定の倒産による売却の場合は10日間)延長されます。この2つの待機期間中に、提案されたM&A取引が独占禁止法に違反する可能性があると司法省とFTCが判断した場合、連邦地方裁判所にM&A取引の完了を禁止する差止命令が要求されます。
この規則により変更された連邦規則集とその内容の抜粋
- 連邦規則集(CFR)16巻「Commercial Practices(商慣習)」パート801:「独占禁止法」について
- 連邦規則集(CFR)16巻「Commercial Practices(商慣習)」パート803:「独占禁止法」、「手数料」または「報告および記録要件」について
今回、当該取引が独占禁止法に違反する可能性があるかどうか、およびSecond Requestsを出すかどうかを決定する初期評価において、当事者が提出する文書資料および情報の要件が改正されました。具体的には以下の内容などが含まれています。
- M&A取引が独占禁止法に抵触する可能性が低く、情報要件遵守のコストが限定されている「パート801.30:選択的取引」という新たなカテゴリーが設けられました。
- FTCのコスト削減のため、いくつかの文書要件が削除されました。例えば、「既に存在する資料」の提出要件が削除されました。
- 買収者と非買収者の両者から「重複する情報の提出」の要件が免除されました。
- 最近の情報のみを提出対象とし、一部の要件が制限されました。
- 定義などの一部を明確化しました。
- 経済的影響の少ない情報が提出要件から「例外」とされました。
- M&A取引が独占禁止法に違反する可能性があるかどうかを評価する上で重要な「取引関係者間の特定情報」の一部が提出の条件となりました。
これら内容を含む最終規則は2025年02月10日に発効します。米国で事業を行っている事業体すべてのM&A取引に関わる内容で、注意が必要です。
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