バッテリー用重要鉱物の価値の割合

2022年08月上旬、上院で可決されたインフレ抑制法は、7,500ドルの電気自動車連邦税額控除を改めています。その内容は、税額控除を2032年まで延長すること、OEMごとの販売台数上限を20万台までとすること、北米で組み立てられた適格車種を新たに義務づけること、などが挙げられます。

さらに法案では、重要鉱物を米国または米国と自由貿易協定を結んでいる国から調達するよう、段階的に義務付けています。

具体的には、米国または米国との自由貿易協定国で抽出・加工された、あるいは北米でリサイクルされたバッテリー用重要鉱物（法案で定義）の「価値の割合（percentage of the value）」を次のように定めています（第4部13401条(e)(1)(A)）。

■　2024年1月1日より前に使用開始された車両：40％
■　2024年暦年中に使用開始された車両：50%
■　2025年暦年中に使用開始された車両：60％
■　2026年暦年中に使用開始された車両：70％
■　2026年12月31日以降に使用開始される車両：80％

概要

法案では、部品価格の割合に同様の制限を設けていますが、2028年12月31日以降に使用される車両については、100％の要件へとなります。

さらに、2024年12月31日以降に使用される車両で、車両のバッテリーに含まれる該当する重要鉱物（第(e)(1)(A)項に記載）が「外国関係法人」によって抽出、加工、リサイクルされたものは除外されます。

法案は次に、適用される重要鉱物のリストを定義しています。

適用重要鉱物のリスト

■　アルミニウム：ボーキサイトから純度99質量％以上のアルミナに変換されたアルミニウム、または純度99.9質量％以上のアルミニウムに精製されたアルミニウム

■　アンチモン：三硫化アンチモン濃縮物に転換され、質量比90%以上の三硫化アンチモン、または質量比99.65%以上のアンチモンに精製されたアンチモン

■　バライト：硫酸バリウムを純度80質量％以上に精製したもの

■　ベリリウム：銅-ベリリウム母合金に転換されたもの、またはベリリウム純度99質量％以上に精製されたもの

■　セリウム：酸化セリウムを純度99.9質量％以上に精製したもの、または純度99質量％以上に精製したもの

■　セシウム：ギ酸セシウムまたは炭酸セシウムに変換されるか、またはセシウムの純度が99質量％以上になるように精製されたもの

■　クロム：60質量％以上のクロムからなるフェロクロムに転換、または99質量％以上のクロムに精製されたクロム

■　コバルト：硫酸コバルトに変換されたもの、またはコバルト純度99.6質量％以上に精製されたもの

■　ジスプロシウム：質量比で99%以上の純度のジスプロシウム鉄合金に変換したもの、または質量比で99%以上の純度のジスプロシウムに精製したもの

■　ユーロピウム：ユーロピウムは、質量比で99.9%以上の酸化ユーロピウムに変換されるか、または質量比で99%以上の純度に精製されたもの

■　蛍石：フッ化カルシウムを純度 97%（質量比）以上に精製した蛍石、または純度 99%（質量比）以上に精製した蛍石

■　ガドリニウム：酸化ガドリニウムを純度99.9質量％以上に精製した酸化ガドリニウム、または純度99質量％以上に精製した酸化ガドリニウムに変換したガドリニウム

■　ゲルマニウム：四塩化ゲルマニウムに変換されたゲルマニウム、または質量比で最低純度99.99%に精製されたゲルマニウム

■　グラファイト：質量比で99.9%以上の黒鉛炭素に精製されたもの

■　インジウム：酸化インジウム錫、または酸化インジウムを純度99.9質量％以上に精製したもの、あるいはインジウムを純度99質量％以上に精製したものに変換されるたもの

■　リチウム：炭酸リチウムまたは水酸化リチウムに変換されるか、または質量比99.9%以上のリチウムに精製されるリチウム

■　マンガン：硫酸マンガンに変換されるか、または質量比99.7%以上のマンガンに精製されたもの。

■　ネオジム：質量％以上のネオジム-プラセオジム酸化物に変換されたネオジム、質量％以上99.5％未満のネオジム酸化物に変換されたネオジム、または質量％以上99.9％未満のネオジム酸化物に精製されたネオジム

■　ニッケル：硫酸ニッケルに変換されたもの、またはニッケルの純度が99質量％以上になるように精製されたもの

■　ニオブ：ニオブをフェロニビウムに変換したもの、または純度99質量％以上のニオブに変換したもの

■　テルル：テルル化カドミウムに変換されるか、または純度99質量％以上に精製されたテルル

■　錫：純度99.99質量％以上の低アルファ線放出錫に精製され、1平方センチメートル当たり毎時0.01カウント以下のアルファ線放出率を有する錫

■　タングステン：パラタングステン酸アンモニウムまたはフェロタングステンに変換されるタングステン

■　バナジウム：フェロバナジウム又は五酸化バナジウムに変換されるもの

■　イットリウム：イットリウムを酸化イットリウムに変換したもので、酸化イットリウムの純度を99.999質量％以上に精製したもの、または、イットリウムの純度を99.9質量％以上に精製したもの

■　その他：その他の鉱物で、質量比99％以上に精製されたもの。ヒ素；ビスマス；エルビウム；ガリウム；ハフニウム；ホルミウム；イリジウム；ランタン；ルテチウム；マグネシウム；パラジウム；プラチナ；プラセオジウム；ロジウム；ルビジウム；ルテニウム；サマリウム；スカンジウム；タンタル；テルビウム；ツリウム；チタン；イットリビウム；亜鉛；および、ジルコニウム。

業界団体Alliance for Automotive Innovationの代表兼CEOであるJohn Bozzella氏は、この法案の上院通過について、次のように述べています。

残念ながら、EV減税の要件により、ほとんどの自動車が直ちに優遇措置の対象外となる。これは重要な時期に機会を逸するものであり、新車を購入しようとする顧客を驚かせ、失望させる変更だ。また、2030年までに電気自動車を40〜50％販売するという私たちの目標も危うくなる。

先のコメントで、Bozzella氏は次のように指摘しています。

現在、米国では、バッテリー、プラグインハイブリッド、燃料電池など、72種類のEVが販売されている。この法案が成立すると、そのうちの70％のEVが直ちに不適格となり、追加的な調達要件が発効しても、クレジット全額の適用を受けられるものはないだろう。ゼロになる。

当該団体は、米国で販売される新車および小型トラックの約98％を生産するメーカー、相手先商標製品供給会社、技術会社、その他の自動車関連会社、業界団体で構成されています。

参考

■　H.R.5376 – Inflation Reduction Act of 2022／Congress
■　Alliance For Automotive Innovation

出典－GreenCarCongress

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