2022.10.21
EU|欧州委員会、欧州における貧困と社会的排除の削減に向けた最低所得制度の近代化を要請
貧困からの脱却と労働市場への参加促進
2022年9月28日、欧州委員会は加盟国に対し、欧州における貧困と社会的排除を削減するという継続的な誓約の一環として、各国の最低所得制度の近代化を行うよう要請しました。
積極的な社会参加を促す適切な最低所得に関する理事会勧告案では、加盟国が最低所得制度を近代化かつ効果的にするという目的のもと、貧困から脱却して労働市場への参加を促がす方策を定めています。
本要請の目的
最低所得は、それを必要とする世帯が、生活費を支払い、尊厳ある生活を送るために、一定の所得水準までのギャップを埋めるための現金給付です。特に、経済が低迷している時に重要であり、対象となる人々の家計所得低減を緩和することで持続可能で包括的な成長に貢献しています。
これまで、最低所得制度は、サービスや労働市場にアクセスするための受動的な現物給付で補完されてきましたが、今後は社会との一体化と雇用の見通しを向上させるためのステップとして機能させるべきと考えられています。最適化された最低所得制度では、貧困の緩和、労働の奨励、持続可能な予算コスト維持の間でバランスをとることが可能としています。
最低所得と社会的セーフティネットは、働ける受益者が労働市場に参加するための十分なインセンティブと支援を組み込んだものでなければなりません。したがって、その設計は、労働市場の移行と不利な立場にある人々の積極的な参加を支援することによって、グリーンおよびデジタル移行の可能性を完全に実現することにも役立つはずと考えられています。
本要請は、「欧州の社会権の柱」の行動計画で定められた、排除の危機にある貧困層を少なくとも1500万人減らすというEUの2030年社会目標の達成に寄与し、20歳から64歳までの人口の少なくとも78%が雇用されるべきであるという加盟国の目標達成にも貢献することになるとされています。
背景
2021年、EUでは5人に1人以上、つまり合計9,450万人が貧困や社会的排除のリスクに曝されていたとされています。社会的セーフティネットは、こうした人々を支援し、可能であれば労働市場に再参入できるよう支援する上で重要な役割を担っています。
しかし、貧困リスクのある失業者の約20%は所得支援を受ける資格が無かったり、資格者の約30%~50%が最低限の所得支援を受けていないと推定されており、より効果的な社会保障制度が必要となっています。
「欧州の社会権の柱」には、適切な最低所得を得る権利に関する原則14が含まれています。ソーシャルインクルージョン※と雇用を促進し、誰一人として取り残されないようにするために、本提案を補完する多くの追加的な構想を示しています。
これには、労働によってまともな生活ができるようにするための適切な最低賃金に関する指令の提案、主要なサービスを無料で効果的に利用できるようにするための欧州児童保障、特に女性や介護関係者の状況を改善するための欧州介護戦略などが含まれています。理事会勧告では、公正な移行のための政策を、特に弱者世帯に配慮して実施するための具体的なガイダンスを示しています。
ソーシャルインクルージョン※:誰も排除されず、全員が社会に参画する機会を持つこと
委員会メンバーの発言
ヴァルディス・ドンブロウスキス(人々のために働く経済担当)上級副総裁は、次のように述べています。「社会保障制度は、社会的不平等や格差を是正するものであり、働けない人々に尊厳ある生活を保証し、働ける人々には仕事への復帰を促すことを可能とするものである。
加盟国は今秋、最も必要としている人々を助けるために、積極的な包括的アプローチを用いて社会的セーフティネットを近代化することが重要になる。」。
ニコラ・シュミット雇用・社会権担当委員は、次のように述べています。「今日、EUでは5人に1人以上の人々が貧困と社会的排除のリスクにさらされている。最低所得保障制度はすべての加盟国に存在するが、それらは必ずしも適切ではなく、必要な人すべてに行き届くわけでも、労働市場への復帰を動機づけるものでもない。
生活費の高騰と不確実性を背景にセーフティネットがその役割を果たすようにしなければならない。特に、若年層が排除の悪循環に陥らないよう、所得支援を通じて仕事に復帰できるように配慮する必要がある。」。
理事会勧告案の概要
本日の理事会勧告案は、加盟国に対して、その最低所得制度が貧困と闘い、社会及び労働市場への積極的な参加を促進する上で効果的であることを保証する方法について、明確な指針を与えるものです。
加盟国には、以下のことが推奨されています。
■ 所得支持の妥当性を向上させる。
■ 透明で堅実な方法論を通じて所得支持の水準を設定する。
■ 労働へのインセンティブを保護しつつ、所得支持に様々な妥当性の基準を徐々に反映させる。加盟国 は、財政の持続可能性を守りつつ、遅くとも2030年末までに所得の適切なレベルを達成する。
■ 所得水準を毎年見直し、必要な場合には調整する。
■ 最低所得の適用範囲と利用率を向上させる。
■ 資格基準は透明で非差別的であるべきである。例えば、特に女性と若年層の男女平等と経済的自立を促進するために、世帯あたりではなく、一人あたりの所得支援の受給を促進することが必要である。さらに、主に女性のひとり親世帯による最低所得の利用を確保するためのさらなる措置が必要である。
■ 申請手続きは、アクセスしやすく、簡素化され、利用しやすい情報を伴うべきである。
(中略)
積極的な社会参加のための適切な最低所得に関する欧州委員会勧告の提案は、理事会での採択を視野に入れ、加盟国により議論される予定です。採択された場合、加盟国は3年ごとに実施の進捗状況を欧州委員会に報告する必要があります。また、欧州委員会は、欧州セミナーとの関連で、この勧告の実施の進捗を監視するとしています。
また、欧州委員会は、加盟国の改革がもたらす分配への影響を評価するための声明も発表しました。同声明では、透明性のある方法で政策の的を絞り、既存の不平等への対処に貢献することを確認し、女性、子供、低所得世帯などの異なる地理的地域や人口集団への影響を考慮する方法についての指針を提供するとしています。
この声明は、政策分野、ツール、指標、時期、データ、評価の普及に関するガイダンスを網羅しており、加盟国が最低所得制度の設計を行う際にも有効であるとしています。
質問と回答-適切な最低所得
本要請に関する質問と回答の一部を以下に示します。
最低所得(ミニマムインカム)とは?
最低所得は、尊厳ある生活を送るための十分な資源を持たない世帯が、一定の所得水準に達するまでのギャップを埋めるための最後の手段としての金銭的な給付です。最低所得給付金は「ミーンズ・テスト(means-tested)」と呼ばれ、収入や資源が十分でない人だけが利用できる公的資金による社会的セーフティネットであり、貧困と社会的排除を防ぐと同時に、働ける人の労働市場への統合を促進することを目的としています。
最低所得は、最低賃金やユニバーサル・ベーシック・インカムとは異なります。最低賃金は、雇用主が従業員に支払うことを許された最低の報酬であり、欧州委員会が提案した「適切な最低賃金に関する指令」では、EU全域の最低賃金保護を改善するためのEUの枠組みを確立するものです。
欧州委員会は何を提案し、なぜそうするのか?
EUのすべての人々が尊厳ある生活を享受できるようにすることは、公正で強靭な経済と社会を構築するために不可欠です。欧州委員会は、積極的なソーシャルインクルージョンを確保するために、適切な最低所得に関する理事会勧告を提案しました。
その目的は、加盟国が自国の最低所得制度を近代化することで、誰も排除されずに社会に参画する機会を持ち、より効果的に貧困を削減していくことにあります。
本勧告は、以下の分野をカバーしています。
■ 最低所得の妥当性を改善する。
■ 最低所得の適用範囲および取得の改善する。
■ 働ける人の労働市場へのアクセスを改善する。
■ 必要不可欠なサービスへのアクセスを改善する。
■ 個別支援の促進
■ EU、国、地域、地方レベルでの社会的セーフティネットのガバナンスの有効性、および監視と報告のメカニズムを向上させる。
最低所得保障はすべての加盟国に存在しますが、その妥当性、適用範囲、利用率に関して課題があります。例えば、貧困のリスクにさらされている失業者の約5人に1人は所得支援を受ける資格がなく、資格を持つ人口の約30%から50%が、本来受けるべき最低所得保障を求めていないと推測されています。
これらの課題に取り組むため、欧州委員会は加盟国に対し、以下のことを勧告しました。
■ 働ける人が労働市場に(再)参入できるようにする。例えば、スキルアップのための支援、職探しのための支援、就職後の支援などを通じて、労働市場に参入できるようにする。
■ 幼児教育やケア、ヘルスケア、長期ケア、住宅などの支援サービスや、水、衛生、エネルギー、交通、金融サービス、デジタル通信などの必須サービスへのアクセス改善により、所得支援を伴うこと。
■ 支援は、受益者それぞれが直面する具体的な障害を考慮し、より個別的に提供されるべきである。最低所得支援を提供する異なる団体間の調整を改善し、制度の効果を定期的に監視・評価すべきである。
参考情報
注目情報一覧
新着商品情報一覧
調査相談はこちら
概要調査、詳細調査、比較調査、個別の和訳、定期報告調査、年間コンサルなど
様々な調査に柔軟に対応可能でございます。
- ●●の詳細調査/定期報告調査
- ●●の他国(複数)における規制状況調査
- 細かな質問への適宜対応が可能な年間相談サービス
- 世界複数ヵ国における●●の比較調査 など