EU|欧州委員会、EU法義務違反に対する法的措置の決定を公表-2022.09の侵害パッケージ

EU法の国内法への速やかな移行

2022年9月29日、欧州委員会は、EU法に基づく義務を遵守していない加盟国に対して、定期的に実施される侵害状況に関する審議を行い、法的措置をとると公表しました。

これらの決定は、さまざまなEUの政策分野を対象としており、EU内の市民や企業の利益のためにEU法の国内法への移行を適切に行うことを目的としているものです。

政策課題別の法的措置

欧州委員会が下した主な決定事項の概要を以下に示します。

環境

欧州委員会は、ベルギー、クロアチア、デンマーク、エストニア、フランス、アイルランド、ラトビア、ポーランド、ポルトガル、スロベニア、フィンランドの11ヶ国に対し、使い捨てプラスチック指令を国内法に完全に移行するように要請しています。

本指令は、使い捨てプラスチック製品が環境、特に海洋環境や人間の健康に与える影響を防止・低減することを目的として、革新的で持続可能なビジネスモデル、製品、材料による循環型経済への移行を促進するものです。このため、同指令には、消費量の削減、特定の製品の市販制限、特定の製品要件に関するいくつかの措置が含まれています。

欧州委員会は、必要な期限までに同指令を完全に移項できなかったとして、デンマークとフランスには正式な通知書を、ベルギー、クロアチア、エストニア、アイルランド、ラトビア、ポーランド、ポルトガル、スロベニア、フィンランドには理由付き意見書を送付しています。

フランスは、「漁具」、「廃棄漁具」、「港湾荷受施設」に関する要求された措置をまだ国内法に移行しておらず、デンマークは、2023年と2024年にのみ発効する指令の条項を根拠に、後日移行するとしています。

これを受け、欧州委員会は、デンマークとフランスに回答を要請する正式な通知書を送付しました。また、デンマークとフランス以外の9カ国に対しては、今後2カ月以内に回答が無い場合には、欧州委員会は、本件を欧州連合司法裁判所に付託することを決定する可能性があるとしています。

域内市場、産業、起業家精神、中小企業

・ 医薬品の並行輸入等

欧州委員会は、医薬品の並行輸入に関して、商品の自由な移動に関するEUの規則を遵守していないとして、ポーランドに対する侵害訴訟を開始することを決定しました。特に、単一市場の適切な機能を確保し、基本的自由の効果的な施行は不可欠であるにも関わらず、並行輸入許可の付与と期限に関するポーランド医薬品法の幾つかの条項については、同国はTFEU第34条及び第36条に準拠していません。

EU域内の医薬品の並行輸入は、卸売業者が価格の安い加盟国で医薬品を購入し、価格の高い他の加盟国で販売することを可能にしています。ポーランドでは、先に認可された医薬品が非ジェネリック医薬品である場合、ジェネリック医薬品の並行輸入許可証の発行が禁止されていることについて、TFEUの条項違反であると判断されました。

また、欧州委員会は、ヒトの健康や生命に対するリスクがあるかどうかの検証を行わず、医薬品の製造販売承認の失効から1年後に並行輸入許可を自動的に失効させることも、TFEUの条項違反であると判断しました。ポーランドは今後2カ月以内に欧州委員会が提起した懸念に対処することが求められています。

・ 職業的資格の承認

欧州委員会は、職業資格の承認に関する指令(指令(EU)2005/36/EC)に国内規則が適合していないとして、ギリシャに対する侵害訴訟手続を開始することを決定しました。

これらのEU規則により、EU全域で専門職の資格と経験を承認するための近代的なシステム構築に貢献することで、専門家が加盟国でサービスを提供することを容易にし、消費者や市民の保護レベルの向上が保証されてきました。

ギリシャの法律では、他の加盟国で学校長や他の教育管理者の資格を得た専門家がギリシャで働くためには、その資格を専門的に認めるのではなく、学問的に認められなければならないとしており、これが同指令の規定に違反していると判断されました。

このため、学術的な承認手続きは同指令の専門的な承認手続きよりも負担が大きいため、EUの専門家にとってはギリシャの労働市場へのアクセスをより難しくする結果になっています。今後2カ月以内に、ギリシャは欧州委員会が提示した論点に回答することになりました。

移民、内務、安全保障連合

欧州委員会は、特定の犯罪との闘いのための金融情報等の利用を促進する指令(指令(EU)2019/1153)を欧州委員会に伝達するための国内措置を怠ったとして、クロアチア、フィンランド及びアイルランドに理由付き意見書を送付しました。

同指令は、資産回収局を含む指定法執行機関による銀行口座情報へのアクセスを容易にし、法執行機関と金融情報機関のより良い協力を促進することにより、マネーロンダリング、テロ資金供与、その他の重大犯罪と戦うことを目的としています。

全加盟国は、2021年8月1日までにこの指令の内容を移行することに同意しましたが、クロアチア、フィンランド、アイルランドは当初の移行期限を過ぎたため、欧州委員会は2021年9月に3カ国すべてに正式通知の書簡を送付しました。

現在までに、クロアチア、フィンランド、アイルランドは、欧州委員会にいかなる移行措置も通知していないため、今後2カ月以内に、移行義務を遵守し、欧州委員会に通知することを要請されています。

エネルギー、気候

欧州委員会は、エネルギー同盟のガバナンスと気候行動に関する規則(EU)2018/1999に基づく各国の長期戦略を通知していないとして、ブルガリア、アイルランド、ポーランド及びルーマニアに公式通知のレターを送付することを決定しました。

安定した長期戦略は、必要とされる経済変革やより広範な持続可能な開発目標の達成を支援し、パリ協定で定められた長期的な気候目標に向けて前進するために極めて重要とされています。EUレベルでは、2050年までに欧州を初の気候ニュートラルな大陸にするという目標を掲げ、2030年までに温室効果ガスの純排出量を1990年比で少なくとも55%削減するという明確な中間目標を掲げています。

ガバナンス規制は、加盟国が2020年1月1日までに、少なくとも30年の展望を持つ最初の長期戦略を作成し、その後10年ごとに新たな戦略を作成するプロセスを定めていますが、当該加盟国は、現在までに欧州委員会に自国の長期戦略を提出していません。当該国は、今後2カ月以内に自国の戦略を欧州委員会に報告することを要求されています。

税制、関税

欧州委員会は、ドイツで雇用され近隣諸国に居住する労働者が不利になると思われる就業手当、傷病手当、失業手当の算定方法に関して、ドイツに正式な通知書を送付することを決定しました。

ドイツの法律では、短時間労働手当、失業手当、傷病手当などいくつかの手当は、純所得に基づいて計算されていますが、これらはドイツでは非課税であるのにかかわらず、所得税という名目でその額が減額されています。

しかし、ドイツと近隣諸国との間の二重課税防止に関する二国間条約の中には、このような手当に対する課税権を、労働者が居住する近隣の加盟国に独占的に帰属させるものがあり、純賃金計算方法では、ドイツで働きながら他の加盟国に居住する辺境労働者の待遇がドイツの居住労働者に比べて不利になる結果となっています。

このようなアプローチは、国境を越えた労働者に対する差別的な性格を持つため、手当の計算規則に関する欧州連合司法裁判所の既成の判例法(C172/11、Erny)に抵触するものと判断されました。この結果、ドイツは今後2カ月以内に、欧州委員会が提起した懸念に回答することになりました。

モビリティと輸送

欧州委員会は、フィンランド、ドイツおよびイタリアに対し、欧州電子料金徴収サービス(EETS)指令(指令(EU)2019/520)のすべての必要条項を国内法に完全に移行するよう要請しました。

同指令は、EUの道路利用者が単一の加入契約、単一のサービスプロバイダー、単一の車載器で支払うことができる料金システムであり、すべての加盟国をカバーすることが可能となっています。

この指令には、道路通行料金システム間の相互運用性を確保することと、道路料金未払い時の国境を越えた情報交換を促進することの2つの目的があります。この指令の移行期限は2021年10月19日でしたが、欧州委員会は、当該3加盟国において同規則が完全に移行できていないと判断し、正式な通知書を送付することを決定しました。

当該3加盟国は、今後2カ月以内にこの通知書に回答し、欧州委員会が指摘した欠点に対処する必要がありますが、回答が不満足な場合は、欧州委員会は理由付き意見書を出すことを決定する可能性があるとしています。

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