同一価値労働ー同一賃金原則を含む機会均等と均等待遇の実効性向上
2022年12月15日、欧州委員会は、欧州議会とEU理事会が給与の透明性確保策に関する指令について政治的合意に達したことを歓迎する旨を発表しました。
この構想は、フォンデアライエン委員長の政治指針の重要な要素であり、欧州委員会は2021年3月4日にその提案を提出しました。この新規則は、男女間の同一賃金原則の透明性を高め、効果的な執行を実現すると共に、賃金差別の被害者の司法へのアクセスを改善するとされています。
背景
同一価値労働ー同一賃金は、1957年のローマ条約以来、EUの基本原則とされています。同一賃金確保の要件は、TFEU157条及び雇用と職業に関する男女の機会均等と均等待遇の原則に関する指令に定められています。
欧州委員会は、2014年3月に透明性を考慮した男女同一賃金原則の強化に関する勧告を採択しましたが、この原則を実際に効果的に実施、執行することは、EUにおいて依然として大きな課題となっています。欧州議会とEU理事会は、この分野での行動を繰り返し呼び掛けています。
2019年6月、EU理事会は欧州委員会に対し、給与の透明性を高めるための具体的な措置を策定するよう求めています。
2020年3月、欧州委員会は、男女の賃金格差を是正するための行動を定めた「男女平等戦略2020-2025」を発表しました。
2020年11月、欧州委員会は「対外行動における男女平等と女性のエンパワーメントに関する2021-2025年行動計画」を採択しました。
2021年3月4日に採択された欧州委員会の給与の透明性に関する提案は、EUの男女が同一労働同一賃金を受け取ることを確実にするための措置を導入するものとなっています。
指令の概要
指令2006/54/ECは、男女の機会均等と平等な待遇に関する 4 指令を、欧州司法裁判所(CJEU)の判例を考慮に入れて統合し、より読みやすく、利用しやすい1つの法令に統合したもので、雇用、職業及び男女平等に関する EU 法規を統合、更新、現代化したものです。
評価対象となる同指令の規定は、性による賃金差別の防止と対策を通じて、同一賃金原則の実施をより効果的にするために作られたものです。 この目的のために、本指令は具体的な目的を追求しています。
同一価値労働ー同一賃金原則を含む機会均等と均等待遇の原則を適用する既存の規定について、特に「賃金」、「同一価値労働」の概念を明確にすることにより法的明確性を確立し、規定された義務を執行するために適切な司法及び行政手続きを導入し、同一賃金に関する EU の権利の尊重を促しています。
職業上の社会保障制度の領域まで立証責任に関する規則を拡張し、差別の事例と見られる場合に立証責任が被告側に移ることを保証することにより、申立者の法的保護を強化しています。
2013年の指令の実施に関する報告書を受け、同一価値労働ー同一賃金の原則の不完全な適用と関連する実施上の課題を考慮し、指令の補完として、2014年に賃金の透明性向上の必要性を網羅する勧告がなされました。
加盟国には、勧告に示された4つの中核的措置のうち少なくとも1つを採用することが奨励され、雇用主は従業員の給与情報請求に応じ、給与報告や監査を実施することで遵守することが期待されました。
この勧告は、企業が自社の賃金構造を分析し、見直すことを奨励し、団体交渉の一環として賃金設定における意識的、無意識的な性差別の防止にソーシャルパートナーが関与することで改善を目指すとしています。
勧告で推進されている主要な措置は以下の4項目です。
■ 賃金水準に関する情報を得る権利
この権利は、従業員が、同じ仕事または同等の価値の仕事をする従業員のカテゴリーについて、性別に区分した賃金水準(ボーナスなど固定基本給以外の要素を含む)に関する情報を要求することを可能にする。
■ 賃金報告
少なくとも50人の従業員を抱える雇用主は、従業員、労働者の代表、ソーシャルパートナーに対し、従業員や職種のカテゴリーごとの平均報酬を男女別に定期的に報告する必要がある。この措置は、中小企業を対象としており、通常、企業の人事制度によってすでに収集されている情報を簡単に報告することを求めている。
■ 賃金監査
この透明性対策には、従業員や役職のカテゴリーごとの男女比率の分析、使用されている職務評価と分類システムの分析、性別を理由とした給与と給与差の詳細情報が含まれる。勧告では、監査に追加費用が掛かる可能性があるため、従業員250人以上の企業のみにこれらの措置を適用することを提案している。監査の結果は、要請に応じて労働者の代表及びソーシャルパートナーに提供されるべきである。
■ 同一賃金に関する団体交渉
賃金監査を含む同一賃金は、団体交渉の適切なレベルで議論されるべきである。
給与の透明性に関する指令の要素として、特に賃金の透明性のために要求される措置については以下のものがあります。
■ 求職者に対する賃金の透明性
雇用主は、求人情報または面接の前に、就業時の賃金水準またはその範囲に関する情報を提供しなければならない。雇用主は、求職者に給与の履歴を尋ねることはできなくなる。
■ 従業員の情報提供権
従業員は、各自の給与水準と同じ仕事、または同等の価値のある仕事をしている労働者の性別ごとの平均給与水準について、雇用主に情報を要求する権利を持つようになる。この権利は、会社の規模に関係なく、すべての従業員に存在する。
■ 男女間の賃金格差の報告
従業員100人以上の雇用主は、女性労働者と男性労働者の賃金格差に関する情報を公表しなければならない。第一段階では、従業員数250人以上の雇用主は毎年、150人から249人の雇用主は3年ごとに報告する。本指令の施行から5年後には、従業員数100人から149人の雇用主も3年ごとに報告することが義務づけられる。
■ 合同賃金査定
賃金報告によって少なくとも5%の男女賃金格差が明らかになり、雇用主が客観的な性別に中立な要素に基づいてその格差を正当化できない場合、雇用主は労働者の代表と協力して賃金査定を実施しなければならない。賃金差別の被害者がより良い司法にアクセスできるようにする。
■ 労働者への補償
性別による賃金差別を受けた労働者は、バックペイ(不当解雇時の補償)、関連するボーナスまたは現物支給の全額回復を含む補償を受けることができる。
■ 雇用主への立証責任
雇用主が透明性の義務を果たさなかった場合、賃金に関する差別がなかったことを証明するのは、労働者ではなく雇用主になる。
■ 制裁金には罰金を含むこと
加盟国は、同一賃金規則の違反に対して、罰金を含む具体的な罰則を定め、人権機関及び労働者の代表者は、労働者のために法的または行政手続きに参加することができる。
次のステップ
欧州議会と理事会が達成した政治的合意は、今後、共同立法者による正式な承認に委ねられ、合意されると、この指令は官報公示後20日で発効し、加盟国は3年以内に指令の新要素を国内法に反映させる必要があります。
参考情報
- Commission welcomes the political agreement on new EU rules for pay transparency
- COMMISSION STAFF WORKING DOCUMENT EVALUATION of the relevant provisions in the Directive 2006/54/EC implementing the Treaty principle on ‘equal pay for equal work or work of equal value’(PDF)
上記PDFファイルはEU公式Webサイトよりアクセスが可能です。
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