EU|EU理事会、再生可能エネルギープロジェクトの許可を迅速に行うための理事会規則を正式採択
エネルギー安全保障の強化と許認可手続きの加速
2022年12月22日、EU理事会は、再生可能エネルギープロジェクトの展開を加速させるための一時的な枠組みを定めた理事会規則を正式に採択しました。同規則は、再生可能エネルギーの迅速な普及の可能性が最も高く、環境への影響が最も少ないプロジェクトについて、より迅速な許可プロセスを導入するものです。
理事会規則の内容の大部分は、2022年11月24日のエネルギー会議で既に合意されています。閣僚は2022年12月19日に同規則について最終的な政治的合意に達し、送電網の展開を迅速かつ簡素化するための規定を追加しました。同規則は書面による手続きで採択され、EU官報に掲載されて発効する予定です。同規則は18カ月間適用されることになっています。
背景、経緯
ロシア連邦のウクライナに対する侵略戦争と、ロシア連邦から加盟国への天然ガス供給の前例のない削減は、EUとその加盟国の供給の安全保障を脅かしています。
同時に、ガス供給の武器化とロシア連邦による意図的な途絶を通じた市場操作により、エネルギー価格の高騰を招き、EU内の経済を危険にさらすだけでなく、ガス供給の安全性を著しく脅かすことになりました。
再生可能エネルギーの迅速な導入は、ロシアの行動に対する防衛策となり、現在のエネルギー危機の影響を緩和するのに役立ちます。再生可能エネルギーは、EUの供給安定性を強化し、域内市場の変動を抑え、エネルギー価格を下げることによって、ロシアによるエネルギーの武器化に対抗するために大きく貢献することができます。
エネルギー市場の悪化は、ユーロ圏の全般的なインフレに大きく影響し、ユーロ圏全体の経済成長を鈍化させました。現在の政治状況を踏まえると、ロシアからのパイプラインガスがEUに届く可能性は低いか、あるいは全く届かない可能性が高いため、EUのエネルギー企業は来年、ガス貯蔵施設への充填において深刻な困難に直面する可能性があります。
さらに、欧州議会及び理事会規則(EU)2022/1032で定められた2023年の目標は、今冬の80%に対し、EUのガス貯蔵能力の90%を充填することです。また、パイプラインの妨害行為など予測不可能な事象や、供給の安定性を阻害するリスクは、ガス市場にさらなる負担をもたらす可能性があります。
これらの観点から、また、経済的、社会的困難を引き起こしている高く不安定な価格に欧州の消費者と企業がさらされることに対処し、天然ガス供給を再生可能エネルギーに置き換えることによって必要なエネルギー需要の削減を容易にし、供給の安定性を高めることが急務となっています。
規則の概要
EUは、特に短期的にEUにおける自然エネルギーの導入ペースを加速することができる目標を定めた措置により、自然エネルギーの導入を加速するためのさらなる緊急かつ一時的措置をとる必要があるとしています。
これらの措置は、その性質と短期的なエネルギー緊急事態の解決に貢献する可能性から選択されたものです。
より詳細には、本規則に含まれる幾つかの措置は、再生可能エネルギープロジェクトに適用される許可プロセスを合理化するために、加盟国が迅速に実施することができ、加盟国の国内手続きや法制度に負担のかかる変更を必要とせず、短期的に再生可能エネルギーの導入を積極的に加速させることを保証するものとなります。
これらの措置の中には、再生可能エネルギープロジェクトが関連する環境法の目的上、優先的な公益であるという反証可能な推定や、特定の環境指令の範囲に関する明確化の導入、また元のプロジェクトと比較して変更または拡張に起因する影響に焦点を当てることによる、再生可能エネルギー発電所の許可付与枠組みの簡素化、等があります。
また、既存の建造物に設置する太陽光発電設備の許可取得を大幅に短縮、迅速化するなど、特定の技術をターゲットにした対策もあります。
これらの緊急対策は、できるだけ早く実施し、現在の課題に的確に対応できるよう、必要に応じて適応していくことが適切とされています。
エネルギー需要全体を抑制することなく、価格変動の抑制と天然ガス需要の削減という目標に対して、迅速な展開と即効性が最も期待できる特定の技術や種類のプロジェクトに対応した、緊急かつ的を絞った追加措置を導入することが必要としています。
人工構造物上の太陽エネルギー設備に関しては、許可プロセスの加速に加えて、自然エネルギー自己消費者及び地域エネルギー共同体のような集団的な自己消費者を含む小規模な太陽エネルギー設備の展開を促進し加速することが適切になります。
それらは、新しい自然エネルギー設備の迅速な展開のためには最もコストが低い、アクセスし易い、環境または他の種類の影響が最も少ない、という選択肢に加え、高いエネルギー価格に直面している家庭や企業を直接支援し、価格変動から消費者を守ることができます。
再生可能エネルギー発電所のリパワリングは、系統インフラや環境への影響を最小限に抑えながら再生可能エネルギー生産を急速に増加させるための選択肢であり、風力発電のように許可プロセスが通常より長い再生可能エネルギー生産技術のケースも含まれます。
最後に、ヒートポンプは、天然ガスボイラーの代替となる再生可能エネルギーであり、暖房シーズンの天然ガス需要を大幅に削減する可能性があります。
緊急かつ例外的なエネルギー状況のため、加盟国は、再生可能エネルギープロジェクト、再生可能エネルギーを電力システムに統合するために必要なエネルギー貯蔵プロジェクト及び電力網プロジェクトについて、EUの環境法令に定められた一定の評価義務の免除を導入できるものとします。
但し、再生可能エネルギーまたは送電網の専用地域に位置するプロジェクトであること、その地域が戦略的環境アセスメントの対象であること、という2つの条件が満たすことが要求されます。さらに、生物種の保全を確保するために、相応の緩和措置、またはそれが不可能な場合は補償措置が採用されます。
本規則は、開始日の申請許可プロセスに適用され、目的、緊急事態及びその採択における例外的な状況、特に連合における自然エネルギー導入ペースの短期的な加速が、保留中の許可に本規則またはその規定の一部を適用して許可プロセスを保留することを正当化するという事実を考慮すべきとしています。
但し、これらの規則の適用は、第三者の既存の権利とその正当な期待を適切に尊重することが条件です。したがって、加盟国は、この許可プロセスの適用が適切であり、すべての利害関係者の権利と正当な期待を適切に保護することを保証する必要があるとしています。
暫定措置の一つは、再生可能エネルギー事業が、緩和や補償が不可能な重大な悪影響を環境に与えるという明確な証拠がある場合を除き、関連するEU環境法の目的上、最優先の公益であり公衆衛生と安全に役立つという反証可能な推定を導入するものです。
ヒートポンプや風力エネルギーを含む再生可能エネルギープラントは、気候変動や汚染に対応し、エネルギー価格を下げ、化石燃料への依存度を下げ、連邦の供給安定性を確保するために極めて重要です。
ヒートポンプを含む再生可能エネルギープラントは、公共の利益を最優先し、公衆衛生と安全に役立つと仮定すれば、そのようなプロジェクトは、必要に応じて、即効で関連する連合の環境法で予見される特定の控除に関する簡易な評価の恩恵を受けられるようになります。
自国の特殊性を考慮し、加盟国はこの推定の適用を自国の領土の特定の地域、特定の技術やプロジェクトに限定することができるようにすべきとしています。
太陽エネルギーは、気候変動に左右されない経済への移行を実現しながら、ロシアの化石燃料に依存しない重要なエネルギー源です。
低コストで利用可能な電力源の一つである太陽光発電や、単位熱量あたりのコストが低く再生可能な暖房を提供する太陽熱技術は、迅速に展開することができ、市民や企業に直接的な利益をもたらすことができます。
現在の状況、特にエネルギー価格の非常に高い変動は、系統の安定性、系統の信頼性、系統が維持されていれば一般に地上設置よりも複雑でなく、現在のエネルギー危機の影響を軽減するのに迅速に貢献できる人工構造物上の設備のペースを大幅に加速するために、太陽光発電の設置許可プロセスを大幅に加速するための即時行動を求めています。
太陽光発電とは異なる目的で建設された既存または将来の人工構造物への太陽光発電の設置、蓄電、システム接続に関する最大期限を3ヶ月としています(許可申請)。
欧州議会及び理事会指令 2011/92/EU に基づく影響評価については、競合する空間利用や環境影響に関する懸念が生じないことを考慮し、これらの設備について環境影響評価を実施する義務の免除も導入すべきとしています。
最も効率的な消費者の再生可能エネルギー源となる小規模分散型太陽光発電設備に投資することは、エネルギー消費者がエネルギー料金を削減し、価格変動にさらされる機会を減らすための 1つの方法です。
加盟国は、この期限短縮と正当な理由による例外措置の範囲から、特定の地域や構造物を除外とすることを認めるべきとしています。
地域エネルギー共同体のような集団的自己消費者のための設備を含む自己消費設備は、天然ガス需要全体の削減、システムの回復力向上、連合の再生可能エネルギー目標の達成にも貢献しています。
自然エネルギー自己消費者の設置を含む、50kW未満の太陽光発電設備の設置は、環境や系統に大きな悪影響を与える可能性はなく、安全上の懸念も無いとしています。また、一般に小規模な設備では、システム接続の容量拡張は必要無いとされています。
このような設備が消費者にもたらす直接的なプラス効果と、それらがもたらすかもしれない限定的な環境影響に鑑み、これらの設備の展開を促進、加速し、短期的にその恩恵を享受できるようにするため、配電網への既存の接続容量を超えていない場合にのみ適用する許可プロセスをさらに合理化することが適当としています。
加盟国は、自国の制約により50kWより低い閾値を適用することを許されるべきですが、閾値は10.8kWより高いままであることが条件とされています。いかなる場合でも、1ヶ月間の許可プロセスにおいて、関係当局または事業体は、正当な動機に基づく対応により、系統の安全性、安定性、信頼性に関連する理由で、当該設備の申請を拒否することができることになっています。
既存の再生可能エネルギー発電所のリパワリングは、再生可能エネルギー発電量を急速に増加させ、ガス消費量を削減することができる可能性が大きく、再生可能エネルギーの潜在能力が高い場所を継続的に利用することができ、再生可能エネルギープロジェクトのために新しい場所を指定する必要性を減らすことができるとしています。
より効率的なタービンで発電所をリパワリングすることで、既存の発電量を維持または増加させながら、より少なく、より大きく、より効率的なタービンを使用することができます。リパワリングはまた、既存の送電網との接続、より高い一般受容性、環境への影響に関する知識といった点でもメリットがあるとしています。
再生可能エネルギープロジェクトの許可事例
2022年11月24日、EUのエネルギー担当閣僚は、再生可能エネルギープロジェクトの許可手続きと展開を加速させるための一時的な枠組みを定めた理事会規則の内容に合意しました。以下に許可の事例を示します。
・ 再生可能エネルギー発電所のリパワリング
理事会は、すべての関連する環境アセスメントを含むリパワリングプロジェクトの許可プロセスの期限を最長6ヶ月とすることに合意し、リパワリングにより発電所の容量が15%まで増加する場合、3ヶ月以内に系統接続が許可されました。
・ ヒートポンプ
加盟国は、50MW以下のヒートポンプの設置期限を1カ月、地熱利用ヒートポンプの場合は3カ月とすることに合意し、特定のカテゴリーのヒートポンプについては、通知後に送電網または配電網への系統接続が許可されるものとします。加盟国は、文化遺産の保護、国防上の利益、安全に関する理由から、特定の地域や構造物を除外することができるとしています。
・ 優先的な公共の利益
理事会は、再生可能エネルギー生産のためのプラントや施設の計画、建設、運用は、最優先の公益であると推定されることに合意しました。これにより、そのような プロジェクトは、特定のEU指令に含まれる多くの環境義務について、簡略化された評価の恩恵を受けることができるようになります。
加盟国は、これらの規定の適用を、自国の領土の特定の地域、技術の種類、プロジェクトに限定する可能性を追加しました。理事会は、発電所、その系統接続、関連する必要な系統インフラの建設または再出力を行っている期間は、これらの期限に算入すべきではないことに合意しました。また、加盟国が許可交付の期限をさらに短縮することができることも明確にしました。
参考情報
- Council formally adopts regulation to speed up permits for renewable energy projects
- EU to speed up permitting process for renewable energy projects
- Proposal for a COUNCIL REGULATION laying down a framework to accelerate the deployment of renewable energy(PDF)
上記のPDFファイルはEUプレスリリースよりアクセスが可能です。
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