EU|欧州議会、EUへの半導体供給の確保に向けた、技術革新の促進と緊急措置を行う計画を採択

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EU|欧州議会、EUへの半導体供給の確保に向けた、技術革新の促進と緊急措置を行う計画を採択

生産能力の大幅向上とファンドの拡充

2022年1月24日、欧州議会は、EUへの半導体の供給を確保するために、生産と技術革新を促進し、不足に対する緊急措置を設けるという計画を採択しました。

1件目の法案は、EUの半導体のエコシステムの技術力と技術革新を強化することを目的とした「欧州半導体法(Chips法)」に関するもので、2件目は、この種の欧州エコシステムを開発するための投資を拡大する「半導体共同事業」に関するものです。

欧州議会は、「欧州半導体法」の改定案において、次世代半導体と量子チップに重点を置き、技能不足に対処し、研究、設計、生産に関する新しい人材を集めるために、コンピテンスセンターのネットワークが構築されることになりました。同法案では、投資を誘致し、生産能力を増強することによって、EUの供給安定性を高めることを目的としたプロジェクトも支援することになります。

背景、経緯

半導体はデジタル経済の中心であり、スマートフォンや自動車から、健康、エネルギー、通信、自動化における重要なアプリケーションやインフラ、その他ほとんどの産業部門に至るまで、デジタル製品を機能させるものです。

また、人工知能(AI)や5G/6G通信など、未来のテクノロジーにとっても重要な役割を担っています。過去1年間、欧州では半導体の供給が途絶え、複数の経済セクターで供給不足が発生し、社会的に深刻な影響を及ぼす可能性があることが明らかになりました。

自動車、エネルギー、通信、健康、そして防衛、セキュリティ、宇宙といった戦略的分野を含むヨーロッパの多くの分野が、このような供給途絶の脅威に曝されています。同時に、偽チップが市場に出回り始め、電子機器やシステムの安全性が損なわれています。

今回の危機では、欧州のバリューチェーンの構造的脆弱性が明らかになり、世界的な半導体不足により限られた企業や地域からの供給にEUが依存していること、そして現在の地政学的状況において第三国の輸出規制やその他の混乱に対して脆弱であること、が露呈されました。

さらに、この依存関係は、この分野の参入障壁と資本集約度が極めて高いことにより悪化しました。例えば、最も計算能力の高い半導体は数ナノメートル(nm)の精度で製造し、設備の建設には少なくとも150億ユーロの先行投資が必要であり、十分な歩留まりで生産できるようになるまでに3 年を要するとされています。

このようなチップを設計するための費用は、5億ユーロから10億ユーロをはるかに超えます。こうした研究開発は、計算能力の高い次世代半導体の製造に必要な小型化を可能にする重要な要素になります。

EUには、世界をリードする研究、技術組織がありますが、研究開発の成果の多くは、EU外で産業的に展開されています。EUは、自動車産業や製造業で広く使用されているパワーエレクトロニクス、無線機器、アナログ機器、センサー、マイクロコントローラーの半導体部品の設計に強みを持っていますが、データ、AI、接続性の普及に伴い必須となるデジタルロジック(プロセッサ、メモリ)の設計にはあまり強くはありません。

また、自動車、産業オートメーション、ヘルスケア、エネルギー、通信など、強力で多様な産業ユーザー部門を有していますが、バリューチェーンに沿った連携は弱いとされています。今日、半導体は強力な地政学的利害の中心にあり、世界の技術競争の中核をなしています。

各国は、最先端の半導体の供給を確保することで、経済的、産業的、軍事的な行動力を高め、デジタル変革を推進することに意欲的です。

世界の主要地域はすべて、技術革新と生産能力強化のために多額の投資を行い、支援策を展開しています。EUは、将来の半導体市場において産業界のリーダーとなるための資産を有しています。

その目標は、現在の世界生産シェアを倍増し、2030年までに金額ベースで20%にすることです。また、依存度を減らすだけでなく、半導体の世界市場が 10 年末までに倍増すると予想される中、経済的機会を捉え、欧州市民のための革新的製品を通じて、半導体エコシステム、そして産業全般の競争力を高めることです。

新しい市場動向と機会が生まれている半導体企業は、ハードウェア、ソフトウェアの最適化を通じてシステム性能を向上させるために、エンドユーザー企業とのカスタマイズされた半導体の共同設計をますます進めています。

AI、エッジクラウド、産業分野のデジタル変革は、欧州の技術の将来の競争力と産業のリーダーシップに新たな機会を提供しています。

同時に、技術は常に進化を続けており、主流のプロセス技術では、さらなる小型化が進む一方、増大し続ける処理能力を持続させるために、よりエネルギー効率の高いソリューションが強く求められています。

ニューロモーフィックコンピューティングや量子テクノロジーなどの新しいコンピューティングパラダイムは、新たな応用分野として期待されている技術です。炭化ケイ素や窒化ガリウムなどの新材料は、特にあらゆる種類の電気自動車や再生可能エネルギー発電のためのバッテリー電力の最適利用など、電力管理に不可欠なものとなっています。

生産を含む最先端の欧州半導体エコシステムを共同で構築し、強化することを目指すという政治的コミットメントを実現するために、欧州半導体の戦略は5つの戦略目標を掲げています。

■ 研究、技術面でのリーダーシップを強化する。
■ 先進的な半導体の設計、製造、パッケージングにおいて技術革新を行い、それらを商品化する能力を構築し、強化する。
■ 2030 年までに生産能力を大幅に向上させるための適切な枠組みを導入する。
■ 深刻な技能不足に対処し、新たな人材を惹きつけ、熟練労働者の出現を支援する。
■ グローバルな半導体サプライチェーンに対する深い理解を深める。

欧州半導体法は、EUの半導体エコシステムの回復力を高め、その世界市場シェアを拡大するという戦略的目標を達成し、産業界が新しい半導体を早期に採用し、その競争力を高めることを目的としています。

そのためには、革新的な生産設備への投資を呼び込み、熟練した労働力を確保するだけでなく、明日の市場を定義する最先端の半導体を設計、生産できる立場にあり、能力を開発し、産業垂直部門と密接に連携したパイロットラインを通じて、革新的設計を試験、試作する可能性を有する必要があるとしています。

これらは必要なステップではありますが、EUがバリューチェーンの政策立案者の知識を高める分析能力を持ち、危機の際に単一市場の共通利益に貢献する能力向上の恩恵を受けることができない限り、十分ではありません。

目標は、自給自足ではなく、相互依存関係が強く残るサプライチェーンにおいて、自らの強みを強化し、新たな強みを開発し、第三国と協力していくことになります。

緊急措置計画の概要

欧州委員会は、危機対応機構を設置し、EUの半導体供給に対するリスクとEU全域に警報を発する可能性のある加盟国の早期警告指標を評価するようにします。

これにより、欧州委員会は、特に影響を受ける製品の供給を優先させたり、加盟国に対して共通購買を実施するなどの緊急措置をとることができるようになります。

米国、日本、韓国、台湾などのパートナーとの国際協力の重要性を考慮すると共に、将来サプライチェーンに混乱が生じた場合に対処するために半導体外交イニシアティブを確立すべきとしています。

欧州議会は「欧州のための半導体」構想の下で予見される措置を実施する半導体共同事業の提案を採択しました。本計画は、EU全域でオープンに利用できる研究、開発、イノベーションのインフラへの投資を通じて、大規模な能力構築を支援することを目的としています。

また、最先端の次世代半導体技術の開発を可能にするものになります。欧州議会議員らは、イノベーションを促進するためには、「ホライズンヨーロッパ」からの資金の再配分だけでなく、新たな資金が必要であることを強調しています。

欧州半導体法は、欧州を世界の半導体分野における重要なプレーヤーとして確立することを望まれており、課題に見合った予算と新鮮な資金による資金調達が必要なだけでなく、EUが研究と革新をリードし、ビジネスに適した環境、迅速な許認可プロセス、半導体分野の熟練労働力への投資を確保したいとされています。

EUの目標は、欧州の成長を確保し、将来の課題に備え、将来の危機に対して適切なメカニズムを持つことが重要としています。また、マイクロチップは、EUのデジタル及びグリーンな移行、そして地政学的な課題にとって不可欠であり、欧州の半導体分野の戦略的重要性を反映した新たな資金提供を求めています。

EUのパートナーや競争相手も、半導体設備、技術、イノベーションに多額の投資を行っている。米国のような莫大な資金力はないものの、欧州委員会とEU理事会が提示する予算は、この課題の深刻さを認識した上で反映するものでなければならないとしています。

半導体の供給安定性を高めるプロジェクト

「欧州半導体イニシアティブ」を立ち上げ、スタートアップやスケールアップの重視を含め、EUの高度な設計、システム統合、半導体チップ生産能力及びスキルを強化する最先端及び次世代の半導体、量子技術の開発、展開を可能にするため、EU全体で大規模な技術能力の構築と革新を支援します。

特に、本イニシアティブでは、欧州の設計能力を強化するために、革新的なバーチャル設計プラットフォームを構築し、オープンで非差別的、かつ透明性の高い条件でアクセスできるようにします。

このプラットフォームは、デザインハウス、新興企業、中小企業、知的財産及びツールサプライヤー、設計者、ユーザーコミュニティの幅広い協力を刺激し、既存及び新規の設計施設を拡張ライブラリやEDAツール(電子設計自動化ツール)と統合するものです。

本イニシアティブは、オープン、透明、かつ非差別的な条件で、第三者が製品設計をテスト、検証、さらに開発するための手段を提供するパイロットラインを支援します。新しい高度なパイロットラインの開発は、次世代の生産能力とその検証の準備となります。

本イニシアティブは、量子チップの設計ライブラリ、パイロットライン、試験、実験施設などの形で、量子チップの革新的な開発を加速するための高度な技術、エンジニアリング能力の構築に貢献するものになります。

本イニシアティブは、エンドユーザーである中小企業や新興企業、垂直セクターを含むステークホルダーに専門知識を提供し、彼らのスキルを向上させるEU全域のコンピテンスセンターのネットワークを支援します。

コンピテンスセンターは、設計インフラとパイロットラインへのオープンで透明、かつ非差別的なアクセスと有効利用を促進します。

さらに、本イニシアティブに加え、半導体バリューチェーンにおけるデットファイナンス(有利子負債による資金調達)と株主資本へのアクセスを促進する活動は、

「半導体ファンド」と総称され、スタートアップ、スケールアップ、中小企業の成長を支援するための資金や、バリューチェーン全体の投資、さらには本イニシアティブが提供するブレンディングが可能な半導体バリューチェーンの企業に対して、より利用しやすい機会を与えることによってダイナミックかつ強靭な半導体エコシステムの発展を支援する必要があるとしています。

コンピテンスセンター:中小企業のデジタル技術活用の支援を目的とした教育や情報共有を行う拠点を指す。

次のステップ

半導体法に関しては、2023年2月13日から16日にかけてストラスブールで開催される本会議の冒頭で交渉の委任状が発表される予定です。交渉開始の決定を本会議での投票にかけるよう要求が無ければ、議会は理事会との協議を開始することができます。議会は、同会期中に半導体共同事業案に関する投票を行う予定としています。

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