EU|欧州委員会、規制物質リストに特定の薬物前駆体を含めることに関する改定規則を公布
危険性と合法的取引のバランスに基づく分類
2023年1月31日、欧州委員会は、規制物質リストに特定の薬物前駆体を含めることに関して、欧州議会及び理事会規則(EC)No273/2004と理事会規則(EC)No111/2005を改定し、欧州委員会委任規則(EU)2023/196として公布しました。
背景、経緯
規則(EC)No 273/2004は、EU 内での麻薬前駆体の取引を監視するための手段を規定し、規則 (EC) No 111/2005は、EU と第三国の間の麻薬前駆体の取引について規定しています。
規則(EC)No 273/2004の附属書Iと規則(EC)No 111/2005の附属書には、それぞれ規制物質のリストが含まれており、これらの物質にはこれらの規則が定める多くの調和のとれた管理、監視措置が適用されています。
2022年3月14日から18日までの第65回国連麻薬委員会における決定65/4、65/5及び65/6により、物質N-フェニルピペリジン-4-アミン(4-AP)。tert-ブチル4-アニリノピペリジン-1-カルボキシレート(1-boc-4-AP)及びN-フェニル-N-(ピペリジン-4-イル)プロパンアミド(ノルフェンタニル)は、1988年12月19日にウィーンで行われ理事会決定90/611/EEC(1988国連条約)で承認された麻薬及び向精神薬の不法取引に関する国連条約Iの表1に追加されています。
4-APは、4-アニリノ-N-フェネチルピペリジン(ANPP)を合成するためのN-フェネチル-4-ピペリドン(NPP)の代替薬品であり、それ自体がフェンタニル及びその類似体の一部を製造するための直接的な前駆体となっています。
1-boc-4-APは4-APの化学的に保護された誘導体であり、これは4-AP、ノルフェンタニルまたは多くのノルフェンタニル類似体に変換されるとされています。また、ノルフェンタニルは、フェンタニル及び多数のフェンタニル類縁体の直接の前駆体です。
NPPとANPPは、規則(EC)No 273/2004と(EC)No 111/2005で既に規制され、フェンタニル及びフェンタニル類似化合物は、非常に強力な麻薬であるため、通常、ヘロインの10倍から100倍の強度があります。この高い効力により、使用者の過剰摂取による死亡が後を絶ちません。
各国の所轄官庁は、ジエチル(フェニルアセチル)プロパンジオエート(DEPAPD)及びエチル3-(2H-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-メチルオキシラン-2-カルボキシレート(グリシド酸エチル)の押収を指摘しました。
DEPAPDは、ベンジルメチルケトン(BMK)としても知られる1-フェニル-2-プロパノン(P-2-P)の製造に使用されています。BMKはアンフェタミンとメタンフェタミンの前駆体であり、EUで不正に生産される最も一般的な薬物として人体に深刻な影響を及ぼすとされています。
PMKエチルグリシデートは、3,4-メチレンジオキシフェニルプロパン-2-オン(PMK)の前駆体で、この前駆体は、一般に「エクスタシー」として知られる3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)の製造に使用されています。
BMK、及びDEPAPDとよく似た他の前駆体(α-フェニル酢酸メチル(MAPA)やα-フェニル酢酸アセトアミド(APAA)など)、PMKは、規則(EC)No 273/2004及び(EC)No 111/2005ですでに規制対象物質とされています。アンフェタミン、メタンフェタミン、MDMAは、EUで不正に生産される最も一般的な薬物の一つです。
これらは人間の健康に深刻な影響を及ぼし、EUの一部の地域で深刻な社会問題や公衆衛生問題を引き起こしています。
改定規則の概要
新たに規制対象となった薬物、及び法的な取り扱いについて以下に示します。
4-AP、1-boc-4-AP、ノルフェンタニル、DEPAPD、PMKエチルグリシデートは、規則(EC)No 273/2004及び(EC)No 111/2005で規定されているスケジュール物質の厳格な管理を避けるために犯罪組織が考案したものです。
したがって、4-AP、1-boc-4-AP、ノルフェンタニル、DEPAPD及びPMKエチルグリシデートは、これらの物質の管理と監視を強化するために、EUレベルでスケジュール(薬物の危険性に基づき分類)されるべきとしています。
規則(EC)No 273/2004の附属書I及び規則(EC)No 111/2005の附属書に記載されている指定物質は、各特定物質がもたらす脅威のレベルと合法的取引に対する負担とのバランスをとるために、異なる措置を適用するカテゴリー(薬物スケジュール)に分けられています。最も厳しい管理・監視措置が適用されるのは、カテゴリー1の物質です。
4-AP、1-boc-4-AP及びノルフェンタニルは、フェンタニル及びその類似物質の製造を支援するために容易に変換することができ、連合における社会及び公衆衛生に重大な脅威を与えるため、カテゴリー1物質としてスケジュールされるべきとしています。
DEPAPD及びPMKエチルグリシデートは、メタンフェタミン、アンフェタミン及びMDMAの製造を支援するために容易に変換することができ、連合における社会的及び公衆衛生に対する重大な脅威となるため、カテゴリー1物質としてスケジュールされるべきとしています。
4-AP、1-boc-4-AP、ノルフェンタニル、DEPAPD、PMKエチルグリシデートは、研究目的以外での製造、取引、使用は知られていませんが、これらの物質を規則(EC)No 273/2004の附属書I及び規則(EC)No 111/2005の附属書のカテゴリー1に含めることは、麻薬の不正製造における使用を避けるための適切な対応であると同時に、EU内の事業者及び管轄当局に大きな追加行政負担を強いることはないとしています。
したがって、規則 (EC)No 273/2004 及び(EC)No 111/2005 を適宜修正する必要があるとしています。
2021年10月12日の欧州委員会施行規則(EU)2021/1832は、関税・統計名目及び共通関税率に関する理事会規則(EEC)No 2658/87の附属書Iを修正し(4)、ANPPとNPPを再分類したことに基づき、規則(EC)No 273/2004 及び(EC)No 111/2005 を適宜修正・改定する必要があるとしています。
規則(EC)No 273/2004 と(EC)No 111/2005 は、1988 年国連条約の薬物前駆体関連規定を共同で実施するものであり、同規則に含まれる権限付与の間の密接な実質的関連性を考慮すると、1つの委任行為によって改定を採択することが適切としています。
参考情報
- Commission Delegated Regulation(EU)2023/196 of 25 November 2022 amending Regulation(EC)No 273/2004 of the European Parliament and of the Council and Council Regulation(EC)No 111/2005 as regards the inclusion of certain drug precursors in the list of scheduled substances (Text with EEA relevance)
- Regulation(EC)No 273/2004 of the European Parliament and of the Council of 11 February 2004 on drug precursors (Text with EEA relevance)
- Council Regulation(EC)No 111/2005 of 22 December 2004 laying down rules for the monitoring of trade between the Community and third countries in drug precursors
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