EU|欧州議会、デジタル業界における労働条件改善のための措置に関する交渉開始を承認

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EU|欧州議会、デジタル業界における労働条件改善のための措置に関する交渉開始を承認

プラットフォームを監督、監視、評価するアルゴリズムやAIの活用

2022年2月2日、欧州議会は、デジタル労働プラットフォームで働く労働者の条件を改善するための新たな措置に関する交渉を開始する決定を承認しました。この決定により、加盟国が自らの立場を決定すれば、新規制に関する交渉が開始できるようになります。

新規制では、プラットフォーム労働者の雇用形態を正しく判断する方法や、デジタル労働プラットフォームにおける労働者を適切に監督、評価するためにアルゴリズムや人工知能をどのように利用すべきかが規定される予定です。

背景

EUは、欧州連合条約の3条に基づき、国民の福利改善、完全雇用及び社会的進歩を目指し、均衡ある経済成長と競争力の高い社会市場経済に基づいて欧州の持続可能な発展のために努力することを目的としています。

デジタル化は、仕事の世界を変え、生産性を向上させ、柔軟性を高め、社会の成長に貢献しています。多くの部門におけるリモートワークの傾向を含めた、仕事の世界における新しい形態のデジタル・インタラクションや新技術は、適切に規制され実施されれば、障害者を含めた、従来アクセスが無かった人々に対して、適正かつ質の高い仕事へのアクセスの機会を創出することができます。

しかし、デジタル化は、雇用と労働条件、労働者の健康と安全、プライバシーの権利などの基本的権利の保護、適用される国内の労働法と税法の効果的な実施にリスクをもたらし、それによって現在と将来の世代のための連帯に基づく社会保護制度も圧迫することになります。

自動化された監視と意思決定システムを含むアルゴリズムベースの技術は、デジタル労働プラットフォームの出現と成長を可能にしましたが、権力の不均衡と意思決定に関する不透明性を生み出しかねないとされています。

また、技術によって可能になった監視は、差別的慣行を悪化させ、プライバシー、労働者の健康と安全、人間の尊厳に対するリスクを伴い、労働条件と労働者の搾取に対する悪影響をもたらす可能性があるとしています。

プラットフォーム作業は、顧客にサービスを提供するデジタル労働プラットフォームのデジタルインフラを通じて、個人によって実行されます。

ウェブサイトやモバイルアプリなどの電子的手段を通じて、少なくとも部分的には遠隔地で提供され、サービスの受け手が利用するウェブサイトに統合されているため、顧客からは見えないこともあります。

これは幅広い分野で発生し、デジタル労働プラットフォームの種類、対象分野、実施される活動、及びプラットフォーム作業を行う個人のプロファイルにおける高いレベルの異質性によって特徴付けられています。

アルゴリズムと人工知能によって、デジタル労働プラットフォームは、欧州議会及び理事会規則(EU)2016/679や国内のデータ保護法に違反して、仕事の遂行、その報酬、顧客と仕事をする人の関係、仕事をする人自身、場合によっては労働時間外も、そのビジネスモデルによって監督、監視、評価する必要があるとされています。

デジタルプラットフォーム作業における課題

従来の規制された自由業は、原則として他の事業者からの監督、指示、管理から解放され、プラットフォーム作業は、ほとんどが電子ツールを通じてオンラインのみで行われるか、オンラインコミュニケーションプロセスと物理的手段による活動を組み合わせたハイブリッドな方法で行われています。

既存のデジタル労働プラットフォームの多くは複数の加盟国または国境を越えて、その活動とビジネスモデルを展開する国際的な事業者となっています。

プラットフォーム作業は、特に脆弱なグループにとって、雇用及び労働市場へのアクセスを容易にする機会を提供し、副次的活動を通じて追加収入を得たり、労働時間の編成においてある程度の柔軟性を享受したりすることができます。

プラットフォーム作業を行う人のほとんどは、他の仕事または他の収入源を持っており、低賃金である傾向があります。プラットフォーム作業を行う場合、最高レベルの社会的保護を享受できるようにすることで、特に若者に注意を払う必要があるとしています。

同時に、プラットフォーム作業は、労働時間の予測不可能を生じさせ、雇用関係と自営業の活動、及び雇用者と労働者の責任の間の境界をあいまいにするという課題をもたらします。

雇用形態の誤まった分類は、既存の労働、社会権へのアクセスを制限するため、影響を受ける人に結果をもたらし、労働搾取、不公正な競争(特に中小企業に影響)、労働者を正しく分類している企業に関する不公平な競争条件に繋がる可能性があり、加盟国の労使関係制度、課税基盤、社会保護制度の適用範囲と持続可能性に影響を与えます。

このような課題は、プラットフォーム経済においては特に深刻となっているとしています。

ほとんどの加盟国の労働・社会保護法は、一般に、デジタル世界、特にデジタル化された労働市場の課題に対応できていません。

これは、デジタルベースの仕事に従事する人々と既存の連帯ベースの医療・社会保障モデルの両方に重大なリスクを引き起こしています。一方、技術の進歩は、21世紀の現実にEUの社会モデルを適合させるための解決策を提供する可能性もあります。

したがって、提案された解決策は、プラットフォーム作業を行う人々の状況を保護し、彼らの労働条件を改善するのに役立つとしています。

幾つかの加盟国における裁判例は、特にデジタル労働プラットフォームが報酬と仕事の遂行に対して一定の方向性または支配を及ぼす部門において、特定のタイプのプラットフォーム作業における雇用状態の誤まった分類が根強く残っていることを示しています。

デジタル労働プラットフォームは、頻繁に自営業または「独立した請負業者」として働く人を分類していますが、多くの裁判所は、プラットフォームがこれらの人に対して事実上の指示と制御を行使し、しばしば主要な事業活動にそれらを統合し、報酬のレベルを一方的に決定しているとしています。

そのため、これらの裁判所は、自営業者と称する者をプラットフォームに雇用される労働者として再分類していますが、国内の判例法は多様な結果をもたらし、デジタル労働プラットフォームは様々な方法でそのビジネスモデルを適応させているため、雇用形態に関する法的確実性の欠如を増大させ、EU域内市場内及びデジタル労働プラットフォームと従来の企業間の公平な競争条件を阻害しています。

アルゴリズムによる自動的な監視と意思決定システムは、仕事の割り当て、個人の割り当てと労働時間の価格設定、指示、仕事の評価、インセンティブの提供、制裁の適用など、管理者が通常企業で行う機能をますます置き換えています。

特にデジタル労働プラットフォームは、そのインフラを通じてプラットフォームの仕事を組織化し管理する標準的な方法として、このようなアルゴリズムシステムを使用しています。

このようなアルゴリズム管理の対象となるプラットフォーム作業を行う人は、アルゴリズムがどのように機能するか、どの個人データが使用されているか、自分の行動が自動化システムによる意思決定にどのように影響するかについての情報にアクセスできないことが多くなっています。

労働者の代表者、プラットフォーム作業を行う人の代表者、労働検査官及び管轄の監督当局もこの情報にアクセスすることができず、プラットフォーム作業を行う人は、自動化システムによって行われた決定またはサポートされた決定の理由を知らないことが多く、これらの決定の説明を得ること、これらの決定について担当者と話し合うこと、決定に異議を唱えること、及び修正と、必要に応じて救済を求める機会に欠けているとの指摘があります。

プラットフォーム作業を行う人とその代表者は、タイムリーな情報を受け取らず、それにも関わらず彼らの労働条件に直接影響を与えるアルゴリズムシステムについて議論し、交渉し、見直す機会も無いことがよくあるとされています。

プラットフォームが複数の加盟国または国境を越えて運営されている場合、プラットフォーム作業がどこで誰によって行われているか、特にオンラインベースのプラットフォーム作業が不明確になりがちであるとしています。

また、国家当局は、プラットフォーム作業を行う人の数、その雇用状況、労働条件など、デジタル労働プラットフォームに関するデータに容易にアクセスできず、労働法、税法、社会保護など、適用される国内及び欧州の規則の施行を複雑にするとしています。

指令案の根拠

本指令は労働者の基本的権利を尊重し、特に欧州連合基本権憲章及び「欧州社会権の柱」の各条項、原則を遵守しています。

指令案に関わる本憲章の主な条項では、以下を規定しています。

■ 8条では、すべての人が個人情報を保護され、自分に関して収集されたデータにアクセスし、それを修正される権利を有する。

■ 12条では、すべての人があらゆるレベルで集会と結社の自由を持つ権利を有する。

■ 15条では、すべての人が労働に従事し、自由に選択され、または受け入れられた職業を追求し、及びサービスを提供する権利を有する。

■ 16条では、事業を営む自由を認めている。

■ 21条では、無差別の権利を規定している。

■ 27条では、事業所内で情報及び協議を行う労働者の権利を保護する。

■ 31条では、すべての労働者がその健康、安全及び尊厳を尊重した公正な労働条件を得る権利を規定している。

また、2017年11月17日にヨーテボリで宣言された「欧州社会権の柱」において関連する原則では、以下を規定しています。

■ 原則5では、雇用関係の種類と期間に関わらず、労働者は労働条件、社会保護へのアクセス及び訓練に関して公正かつ平等な待遇を受ける権利を有し、法律及び労働協約に従って、使用者が経済状況の変化に迅速に適応するために必要な柔軟性が確保される。

■ 原則7では、労働者が雇用関係から生じる権利と義務について雇用開始時に書面で知らされる権利、解雇に先立ち、理由を知らされ合理的な予告期間を与えられる権利、有効かつ公平な紛争解決を利用する権利、不当解雇の場合は適切な補償などの救済を受ける権利を有する。

■ 原則 10では、労働者が職場における健康と安全を高い水準で保護される権利と、雇用の場合に個人情報を保護される権利を有する。

■ 原則 12では、雇用関係の種類と期間にかかわらず、労働者及び同等の条件の下にある自営 業者は、適切な社会的保護を受ける権利を有する。

指令案の基本的要件

以下に指令案の基本的な要件を示します。

EU は、持続可能な方法でプラットフォーム作業の発展を適切にフレームするために、プラットフォーム作業から生じる課題に対処し、プラットフォーム作業者の権利を保護するために、労働条件における新たな最低基準を設定することが必要としています。

プラットフォーム作業者及び該当する場合、プラットフォーム作業を行う人には、多くの最低権利、契約上の地位の正しい決定だけでなく、公正かつ正当な労働条件、透明性、公平性、説明責任、無差別の促進、アルゴリズム管理における健康と安全のリスクの防止、国境を越えた状況を含むプラットフォーム作業の透明性の向上、国内法及び実践に基づく団体交渉の権利の確保を提供する必要があるとしています。

これは、法的確実性を向上させ、デジタル労働プラットフォームとオフラインのサービス提供者の間に公平な競争条件を作り、EUにおけるデジタル労働プラットフォームの持続可能な成長を支援する観点から行われるものになります。

これを達成するためには、デジタル労働プラットフォームを通じて働く人は、適用される国内の労働法及び社会保護法にアクセスするために、契約上の地位との関連で正しく分類されなければならないとしています。

プラットフォーム作業における労働条件の改善については、ソーシャルパートナーとの合意は得られていませんが、現在の法的枠組みをプラットフォーム作業と自動監視・意思決定システムの使用に適応させることによって、EUレベルで行動を起こすことが重要としています。

本指令案は、司法裁判所の判例を考慮し、各加盟国で有効な法律、労働協約又は慣行によって定義された雇用契約又は雇用関係を有しているか、または事実の評価に基づき有しているとみなされる可能性がある、EU内でプラットフォーム作業を行う人に適用されるべきとしています。

これには、プラットフォーム作業を行う者の雇用状態が明確でない場合、その状態を正しく判断できるようにすることが含まれるものとしています。個人データの処理に関連するアルゴリズム管理に関する規定は、真に自営業の人及び雇用関係を持たないEU内のプラットフォーム作業を行うその他の人にも適用されるとしています。

クラウドワークは、オンラインプラットフォームを通じて、多くの顧客や雇用者に提供される可能性のある作業のアウトソーシングまたは割り当ての組織化と定義することができるとしています。

クラウドワークは、派遣労働、パートタイム労働、臨時代理店労働など、他の非標準的な雇用形態と多くの類似点を有し、プラットフォームと呼ばれる技術的な仲介者を介してインターネット上で実行されます。

マイクロタスクやクラウドワークのプラットフォームは、オンラインでの小規模なタスクを調整します。

それらのマイクロタスクプラットフォームは、オンラインデジタル労働プラットフォームの一種で、コンピュータとインターネット接続を使用してリモートで完了できる小さなタスクの完了のために、企業やその他のクライアントに大規模で柔軟な労働力(クラウド)へのアクセスを提供します。

タスクは多数の個人、いわゆるクラウドに分配され、彼らはパーソナルコンピュータを介して非同期かつ遠隔で個々の活動を行うことができます。クラウドワークを組織するデジタル労働プラットフォームは、本指令の範囲に含まれるとしています。

デジタル労働プラットフォームは、サービスの受信者の要求によって、またはウェブサイトやモバイルアプリなどの電子的手段を通じて、単発または反復の公募による仕事の割り当てによって、個人によって行われる仕事を組織するという点で他のオンラインプラットフォームと異なります。

個人によって行われる仕事を組織することは、その個人とサービスを提供する自然人または法人との間の関係の契約上の指定に関わらず、デジタル労働プラットフォームとの契約関係を有し、特定の仕事を実行するために利用可能な個人による労働力の需要と供給を一致させる役割を履行しなければならず、支払処理などの他の活動を含めることもできます。

個人によって行われる仕事を組織するのではなく、単にサービスの申し出や依頼を広告し、特定の地域で利用可能なサービス提供者を集約して表示するための手段を提供するだけで、それ以上の関与がないオンラインプラットフォームは、デジタル労働プラットフォームとみなされるべきではないとしています。

デジタル労働プラットフォームの定義には、宿泊施設の短期レンタルや商品の再販など、資産の利用や共有を目的としたサービスの提供者は含むべきではないとしています。

プラットフォーム作業を行う人は、プラットフォーム作業者または自営業者のどちらであってもよいとしています。

プラットフォーム作業における偽りの自営業を撲滅し、雇用形態の正しい決定を促進するために、加盟国は、同作業を行う人の雇用形態の誤分類を防止し、対処するための効果的な手順を持つべきとしています。

これらの手続きの目的は、国内法および適用される国際法、労働協約または司法裁判所の判例を考慮した慣行によって定義される雇用関係の存在を確認し、雇用状態の正しい決定を確実にすることであり、そのような雇用関係が存在する場合、国内の労働法、労働協約及び社会保護規則と同様に労働者に適用される連合法の完全遵守を確保することであるべきとしています。

国レベルで定義された自営業が正しい雇用形態である場合、その形態に従った権利と義務が適用されるとしています。

判例法において、欧州司法裁判所は労働者の地位を決定するための基準を定めています。これらの基準に関する司法裁判所の解釈は、本指令の施行において考慮される必要があるとしています。

国内法において定義される自営業者の地位の乱用は、国内レベルであれ国境を越えた状況であれ、未申告の労働と頻繁に関連する虚偽の申告の労働の一形態です。

虚偽の自営業は、ある人が特定の法的または財政的義務を回避するために、雇用関係に特徴的な条件を満たしながら自営業者であると定義され、法律を守る企業に関して不当な競争の状況を作り出す場合に発生します。このような人物は、本指令の規制対象に含まれるとしています。

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