交通システムの持続可能性、快適性及び効率性等の向上
2023年2月2日、マルチモーダル※旅客モビリティフォーラム(MPMF)の会議の成果を纏めた報告書が公開されました。MPMFは、持続可能な旅客のマルチモーダルモビリティの分野における政策イニシアティブを準備する目的で、欧州委員会を支援するために設立されました。
MPMFは、EU加盟国及び関連する官民の利害関係者間の対話、技術的知識の交換、協力、調整のためのプラットフォームとして機能し、各サブグループによる個別の会合に加え、合計5回の専門家グループ会合が開催されました。
5回のMPMF専門家会合は、すべてリモートで開催され、専門家グループによって当初合意された作業計画に対応した報告書に纏められました。
マルチモーダル※:モードがマルチということであり、この場合は多様な交通手段が選択的であることを示す。
MPMF の目的
持続可能でスマートなモビリティ戦略(SSMS)は、完全に統合されたシームレスなマルチモーダルモビリティシステムにおいて、持続可能な代替交通手段を乗客が広く利用できるようにすべきであると概説しています。
デジタル化はこの目標の達成に寄与しますが、特に、マルチモーダルデジタルモビリティサービス(MDMS)は、利用者がさまざまな移動手段、選択肢、価格を比較するのに役立ち、異なる事業者のモビリティ商品の販売、再販を促進することができます。
モビリティサービスの情報へのアクセス、予約、支払いを容易にすることで、これらのサービスは、交通システムの持続可能性、回復力、効率性、快適性を向上させることができます。MDMSは現在、EU全域で断片的に展開されていますが、より有効的に発展させるための適切な法的、市場的枠組みが欠如しています。
多くの都市で「サービスとしてのモビリティ(MaaSアプリケーション)」が開発されていますが、その開発に関する法的枠組みは加盟国ごとに異なっています。長距離の場合、乗客にすべてのマルチモーダル、マルチオペレーターのサービスを提供するMDMSはほとんど存在していません。
例えば、モバイル通信事業者とMDMSの間の協力関係の難しさ、ライセンスや販売契約を得るための複雑で長い交渉、共通の基準やインタフェース、乗客の責任に関する透明性、及び運賃収入の分配に関する解決法の欠如など、多くの課題が残っています。
2018年から2022年のITS指令の作業計画では、相互運用可能な支払いと発券に関するイニシアティブに言及しています。2020年10月に発表された欧州委員会の作業計画2021では、ITS指令の改定と並行して、マルチモーダルチケットの構想を発表しています。
作業計画に沿って、持続可能でスマートなモビリティ戦略では、フラグシップ「接続され自動化されたマルチモーダルモビリティの実現」において、MDMSの開発をさらに支援するための幾つかのアクションを発表しています。
MPMFの具体的な任務は、専門家グループの設置決定に以下の通り設定されています。
■ 欧州委員会が持続可能な旅客のマルチモーダルモビリティの分野で政策構想を準備するのを支援すること。
■ 持続可能な複合モビリティ政策及び旅客にとってより持続可能で活動的な交通手段へのシフトの分野におけるEUの法律、プログラム、政策の実施に関する問題について、欧州委員会と加盟国または利害関係者との協力と調整を確立すること。
■ 国境を越えた地域を含む、乗客のための持続可能なマルチモーダルモビリティの分野において、経験とグッドプラクティスの交換をもたらすこと。
■ 乗客のためのマルチモーダルモビリティと、より持続可能な交通手段へのより多くの活動のシフトの分野において、未来志向でイノベーションに優しい法律、政策、プロジェクト、プログラムの開発と実施について、例えば意見、報告、分析の形で委員会に助言と技術的専門知識を提供し、持続可能で賢明なモビリティサービスの統合的でシームレスのマルチモーダルシステムに向けて貢献すること。
■ 国境を越えた持続可能なマルチモーダルモビリティソリューションの研究、革新、開発、展開及び規模拡大、最も持続可能な交通手段へのモーダルシフトの分野におけるEU、加盟国、地域の資金調達及び融資機会の間の相乗効果の開発に関する助言の提供。
■ 旅客向けの持続可能なマルチモーダルモビリティに取り組むイニシアティブ、プロジェクト、パートナーシップに関する情報交換の促進。
■ 気候ニュートラル及びスマートシティに関するEUミッションの実施のため、ミッションプラットフォームと協力し、未来志向で革新的な法律、政策、プロジェクト及びプログラムの開発及び実施、並びに、乗客のためのマルチモーダルモビリティ及び都市モビリティを含むモーダルシフトの分野におけるEU、加盟国及び地域の資金調達及び融資機会の間のシナジーを開発すること。
第1サブグループからの報告
テーマ別領域
テーマ別領域では、MDMS を公共政策の目標と整合させるというトピックに関する洞察を提供することを意図しており、この領域が明らかに公共機関と持続可能性に焦点を当てています。
この領域はさらに、MDMS プラットフォームから公共機関へのデータの共有、すなわち B2G(公共機関)とMDMSの目標との整合性をそれぞれ扱う2つのサブエリアに分割され、それぞれについて具体的な質問が定義されています。
■ サブエリア1(公共機関のモビリティ管理ニーズのためのモビリティデータ)
(1) どのタイプのデータが、どの交通モードに対して必要なのか?
(2) どの利害関係者が当局とデータを共有することを要求されるべきか?
(3) 公共機関とデータを共有する場合、どのような条件を適用すべきか?
■ サブエリア2(MDMSと公共交通機関の目的との整合性)
(1) どのようにしてMDMSとSUMPSとの整合性を確保することができるか?
(2) どのような点を考慮する必要があるのか?、どのようにそれを実施するか?
都市に関する焦点
当初から、このテーマ領域の地理的範囲は、それぞれの機能的都市圏(FUA)における市民の日常的な移動に限定すべきであり、異なるFUA間の長距離移動は除外すべきであるということが決定されました。
大都市と大都市間のエコシステムは多くの点で異なっており、少なくとも市場規模(移動手段数、移動手段業者数)だけでなく、マルチモーダル統合のレベル、実施される移動の性質(FUA内の移動の大半は都市内移動で、かなりの割合が実際には繰り返し移動)などが挙げられます。
また、市場の成熟度についても、長距離移動のエコシステムの方が、第三者のチケット販売業者による旅行の再販という点で、より進んでいることが考慮されています。
鉄道関係者からは、長距離鉄道サービスの多くが短距離通勤に利用されていることや、一部の国営団体がPTA(公共交通機関)として運営されていることなどが指摘されています。恣意的な分離は矛盾を招き、鉄道システムの分断を永続させる可能性があります。
共有された明確な定義が必要であり、加盟国間で大きく異なる移動サービスの特性ではなく、旅行の特性(日常的な移動の一環としてのFUA内の旅行と、日常的ではない機会でのFUAへの旅行)に基づいて範囲を設定するのが最善であるとしています。
公共機関(B2G)データ共有に関する焦点
テーマ分野では、商用MDMSプラットフォームからB2Gへのデータ共有が検討されましたが、その逆はありません。なぜなら、議論は必ずG2Bデータ共有、特にMDMSプラットフォームによる公共交通機関のデータとチケットへのアクセスに移行するからです。
このため、しばしば目的を超えた議論が行われてきました。今後は、「MDMS利用データの共有」、「MDMSデータの報告」など、データそのものをより明確にすることで、B2Gデータ共有を区別することとしています。
公的機関主導の MDMS プラットフォームによるデータ共有についてのコメントに対し、主に商用 MDMS プラットフォームに焦点を当てていることを強調しておくことが重要です。
MDMS では、2 種類の公的機関 (PA) が主要な利害関係者として特定され、PTAと地方公共団体(LA)が、それぞれ異なる役割、責任、管轄権を持っています。さらに、PTAも地方公共団体も一様な存在ではなく、欧州全域で大きく異なり、その役割と権限は常に進化しています。
簡単に言えば、PTAは公共交通サービスの契約(通常は料金やチケットの流通経路の定義も含む)に責任を持ち、一方、地方自治体はそのサービスのためのインフラ(PT専用レーンや交通信号におけるPT優先権などの措置も含む)を提供するということです。
PTAは、駐車場管理、自転車シェアリングサービスの運営、相乗りのサポート、SUMP開発への貢献など、徐々に交通に関する責任を負うようになっており、従来のPTAから複合交通当局、最終的には統合交通当局への移行を示唆しています。
PTAは通常、所定のPTAエリア(通常は都市機能エリアまたはシティリージョン)の地方自治体または地域団体によって統治されており、多くの場合、地方自治体とPTAの間には直接的な繋がりがあります。
地方自治体は、戦略的交通計画(SUMP)に示された政策目標や施策に従って、公共空間の管理やインフラ整備に責任を有し、境界内におけるある種の商業交通サービス、特に共有マイクロモビリティ計画やタクシーなどを規制する権限を持つことが多くなっています。
本報告書は、2022年6月から9月の間にサブグループ1のメンバーから寄せられた意見に基づいており、行われた議論の総まとめを提供することを意図しています。
本報告書は、テーマレベルの高い方法で多くの側面(データ共有とSUMPの整合)に触れていますが、特定の側面、特にデータ保護のような敏感な問題を深く掘り下げて検討しており、他のイニシアティブが進行中であることを認識しています。
MDMSデータ共有に関する焦点
MDMSデータ共有の議論は、主に公共交通機関の情報とチケットにアクセスするためのMDMSプラットフォームのニーズに焦点を当ててきましたが、公共機関が広範な交通管理と計画業務をサポートするためにMDMSプロバイダーからのデータを必要とすることが受け入れられつつあります。
第三者の販売チャンネルの増加により、PTAが通常チケット販売チャンネルから収集する旅行データが失われるようなシナリオの場合、PAがMDMSデータを受け取ることはさらに説得力を増します。
これは、ある省庁が確認したもので、スマートカードによって生成された膨大な旅行データが、国のモバイル決済への段階的なシフトの過程で、通信事業者がプライバシーを拒否したために失われていると報告しています。
旅行データの共有が公的機関と共有するデータに関する既存または計画中のアプローチは、協議中に常に話題にのぼり、MDMSデータ共有への教訓を引き出す機会になっています。現在、ほとんどのB2Gデータ共有は、個々のモーダルオペレーターと公共機関の間で行われています。
共有モビリティサービス(主にエスクーター、バイクシェアリング)から自治体へというように、公共交通機関のデータ共有は、他の交通手段よりもはるかに広く行われているようです。
交通事業者のデータ収集に関する自治体の成熟度は各々異なっており、その多くは、ビジョン、能力、リソース、管轄の不足から、まだ体系的なデータ収集を行っていません。一部のPTAは、旅行代金の補助、報酬、広告など、データ収集のための創造的な方法を見出しています。
長距離鉄道の分野では、チケット再販のプラットフォームが確立されており、鉄道事業者とのデータ共有は既に一般的になっており、これには個人データの共有も含まれています。
MDMSデータについては、MDMS市場の規模が非常に小さいことと、ほとんどの公的機関がMDMSデータ共有要件を定義している段階であることから、現在、公的機関とのデータ共有は限定的です。
少数の大規模なPTAは、商業的なMDMSプラットフォームとの契約において、標準的なデータ共有要件を定義しています。イタリアでは、データ共有のための国家的なプラットフォームを構築しており、そこにMDMSの使用データが置かれることが期待されています。
PTAは営利団体ではなく、民主的なプロセスを通じてそれぞれの管轄区域で公共交通サービスを生産、統合する権限を与えられているため、PTAとの間に認識されている競争の問題は何かを理解する必要があるとしています。
それにも関わらず、幾つかのMDMSプロバイダーや交通事業者は、PTAが商業的利益を有していると考えており、PTAはそれを否定しています。
この問題を回避する一つの方法は、(例えば旅行のニーズや需要に関連する)MDMSデータの共有は、商業目的、特に競合製品(PA主導のMDMSプラットフォーム)の利益のために使用してはならない、と規定することです。
第2サブグループからの報告
第2サブグループでは、テーマ「事業者とMDMS間の協力の促進」を取り上げ、4つのポイントに焦点を当てました。
・ 論点1:データの品質とデータ生成コストの問題に対処する。
・ 論点2:各アクセスノード(停車場)に固有の欧州IDを開発する。
・ 論点3:データへのアクセス条件(すべての交通モード)/モビリティサービスの販売及び再販売に関するライセンス契約 。
・ 論点4:MDMS技術インターフェース(API)の調和規格を開発する。
上記の質問についてサブグループメンバーから意見を集めるため、6月3日、7月4日、7日に3回のオンラインミーティングが開催され、すべてのサブグループメンバーは、書面及び/または報告者との二者間通話を通じて、さらなる意見を提供するよう招待されました。
本報告書は、このコンサルテーションプロセスに参加した様々なステークホルダーの意見を反映させることを目的として、その結果が纏められています。
データの質とデータ生成のコストに関する問題への対応は以下の通りです。
どのデータが、どのような目的で、どのような関係者に必要なのかについて、適切なデータ品質とデータ生成コストは利用、共有が必要なデータの種類に依存することから、MDMSイニシアティブは、データ共有の範囲、データ共有に必要または期待される主体、及びコンテキストと許容されるユースケース(データが何のために使われるのか)を明確にすべきであるということで同グループの同意が得られています。
データ共有の範囲(どのデータが必要なのか?)については、参加者は、既存の規則、特にMMTISと改正鉄道旅客権規則に言及し、両規則ともすでにその附属書に共有すべき(静的及び動的)データの広範なリストを含み、これらの既存のリストに含まれている要素に加え、まだ含まれていない以下のデータも考慮する必要があるとの意見も出されています。
乗車率に関するデータ(リアルタイム)、自転車やマイクロモビリティに関するデータ、旅行後の情報、予約・支払い情報/API ・運賃(付帯サービス、追加料金、手数料を含む)、チケットの変更・キャンセル条件などの詳細からは、現在多くの用語が交通領域ごと(鉄道、道路、水上、航空、地域公共交通)に異なる意味で使われているので、共通の用語集は役に立つとのコメントがありました。
モビリティエコシステムは非常に多様であり、大規模な事業者やサービスプロバイダーから小規模な中小企業まで、様々なモードやコンテキストをカバーしているため、MDMSイニシアティブは、これらの特殊性に応じて、官民のすべての積極的なステークホルダーの役割と責任を定義すべきとのコメントがありました。
データへのアクセスポイントはどこか、データは誰に対して提供されるべきか、MDMSイニシアティブの対象となるデータ共有のタイプは何か、については事業者、インフラ管理者、チケット販売者に加え(改正RPR規則で予見されている)、PTAの役割も考慮されるべきである(特にアーバンモビリティの場合)としています。
また、GDS(レンタカー等も含む総合的な予約発券システム)の役割を明確にし、CRS(航空用予約発券システム)の見直しが新しいMDMS構想にどう反映されるかを明確にすることも提案されました。
最後に、データ(静的データ、動的データ、履歴データ)の生成と共有の義務は、不必要な負担とコストを避けるために、具体的なユースケースに基づくべきであることが、複数のサブグループメンバーから指摘されました。
第3サブグループからの報告
マルチモーダル旅客モビリティフォーラムは、2021年12月3日の欧州委員会の決定により設立されました。
その目的は、持続可能な旅客のマルチモーダルモビリティの分野における政策構想の準備において欧州委員会を支援することであり、特に、同分野における未来志向かつイノベーションに配慮した法律、政策、プロジェクト、プログラムの策定と実施に関する助言や技術的専門知識を、意見、報告、分析といった形で提供し、持続可能かつスマートなモビリティサービスの統合的かつシームレスなマルチモーダルシステムに向けて貢献することになります。
最初の全体会合(2022年2月23日、4月6日)において、専門家グループは作業計画を議論し、3つのテーマに分けて、それぞれ非公式なサブグループで取り組むことを採択しました。
・テーマ1:MDMSと公共政策の目標との整合(持続可能性とアクセシビリティに関する問題を含む)
・テーマ2:事業者とMDMSとの協力の促進
・テーマ3:協力の強化
第3サブグループでは、議論を短距離旅客輸送(都市輸送を含む)と長距離旅客輸送(都市輸送を除く)に分けることが決定されました。
実際、この2つのサービスカテゴリーは、商業的、技術的、法的観点から、異なる環境下で運営されているため、同じ政策的解決策を両カテゴリーに区別なく適用できず、このカテゴリー間の差別化基準は、このサブグループでは扱わないこととしています。
モビリティユーザーにとっては、MPMFの成果を、ユーザーのニーズを満たすために必要なすべてのサービスを、状況に応じて、長距離または短距離のすべてのモビリティサービスと連携させる「A trip」に向けて広げることが重要としています。
MPMFの議長として、欧州委員会は、非公式サブグループの報告者に与えられたタスクを明確にし、それぞれのサブグループは、作業計画で説明された質問に対する考えられる回答を報告しています。
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