EUの水素活性化に向けた共同声明とは?
2023年03月01日、欧州委員会と主要な利害関係者は、再生可能な水素の研究と革新における持続的な努力の重要な役割を強調する共同声明に署名しました。この声明により、欧州委員会は、欧州の水素産業、科学界、欧州地域とともに、研究、開発、実証、展開の共同作業を強化、加速させることを約束しました。
EUの水素戦略に沿って、REPowerEU計画およびグリーンディール産業計画の目標に貢献する水素製造、輸送、クリーンモビリティから産業用原料に至るさまざまな最先端アプリケーションを結びつけ、完全に機能し持続可能な需要と供給のクラスターを作り、再生可能水素導入を進め、結果としてクリーンエネルギーの移行を推進するものです。
また、共同宣言では、持続的な投資、資金源間の相乗効果の強化、知識の共有、教育や技能訓練の開発の促進、地域の水素ネットワークや水素バレー間の相互接続の構築などを求めています。
EUの水素経済活性化に向けた戦略促進の背景
2022年2月24日、ロシアがウクライナ侵攻し、この事態を受けて欧州委員会は、3月8日に「リパワーEU」と名付けた政策文書を発表、ロシア産の化石燃料の利用を2030年までに取り止めると発表しました。同時に欧州委員会はこの政策文書のなかで、急遽発生した新たなエネルギー危機に備えて水素の生産能力を年1,000万トン以上に引き上げるという目標を発表しました。
要するに、欧州委員会は、エネルギーの「脱ロシア」化戦略を実現するための1つの戦術として、水素に白羽の矢をあて、実際に欧州委員会は、2022年3月22日、水素関連事業を「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」に定めたうえで、研究開発過程を中心に加盟国による補助金の給付を容認する意向を表明しています。
またEUの開発銀行である欧州投資銀行(EIB)も、EU域内における水素関連事業への投融資を促進するスタンスを強化しています。
EU水素戦略の概要
2020年に採択された水素に関するEU戦略(COM/2020/301)では、投資支援、生産・需要支援、水素市場とインフラの構築、研究・協力、国際協力の5つの分野で政策アクションポイントを提案しています。
2022年第1四半期までに20の主要アクションの全リストが実施されました。水素は、エネルギーシステム統合のためのEU戦略でも重要な位置を占めています。
Fit-for-55パッケージ(2021年7月)では、欧州水素戦略を具体的な欧州水素政策の枠組みに変換する多くの立法案が提示されてました。これには、2030年までに産業および運輸における再生可能水素の導入目標を設定する提案も含まれています。
また、水素と脱炭素ガス市場パッケージ(COM/2021/803 final and COM/2021/804 final)や水素に最適な専用インフラの構築、効率的な水素市場の構築を支援する提案を打ち出しています。
水素に関する研究・技術革新への長年にわたる支援により、EUは、電解槽、水素補給ステーション、メガワット規模の燃料電池など、主要な水素技術において世界をリードする存在となっています。Horizon Europeは、Clean Hydrogen Joint Undertaking(CHJU)を10億ユーロで支援し、産業界や研究パートナーからも同額を提供しています。
REPowerEUの一環として、欧州委員会は、水素バレー(Hydrogen Valleys)の展開を加速させるために、CHJUに2億ユーロを追加で割り当てている。また、欧州委員会は最近、エラスムス+(Erasmus+)のもと、水素経済のための高度なスキルを開発するための産業界と教育界の長期的パートナーシップのために約400万ユーロを供与しました。
以上のように、EUの水素戦略とREPowerEU計画は、再生可能で低炭素な水素の導入を支援し、費用対効果の高い方法でEUを脱炭素化し、輸入化石燃料への依存度を下げるための包括的な枠組みを提示しています。
EUの主要国で進む水素の利活用の戦略策定
新たなエネルギー源として、水素の活用に注目が集まっており、水素は、エネルギーとして使用する際に二酸化炭素(CO2)を排出しないという特徴があります。産業界では既に水素が利用されてきましたが、その多くは天然ガスなどの化石燃料を用いて生産した水素であり、水素生産時のCO2発生が避けられません。
そこで、再生可能エネルギーを用いた水の電気分解で生産された、生産から使用までCO2を排出しない水素の導入に向けた動きが進展しています。
このような水素は、「低炭素水素」や「クリーン水素」、「グリーン水素」などと呼ばれており、CO2の排出量が多い製鉄業や、航空・海運業などにおいて、製品の低炭素化または脱炭素化を可能にするエネルギーとして期待が寄せられています。
水素は、燃焼(酸素と結合)時にCO2が発生しないという特徴があるが、燃焼時にCO2が発生しなくとも、生産方法によっては一部CO2が発生する場合があるため、水素は、生産時にCO2排出を伴うか否かによって、主に3種類に大別されています(下表参照)。
再生可能エネルギーを用いた水の電気分解によって、CO2を排出せずに作られるものをグリーン水素、化石燃料由来だがCO2 回収・(有効)利用・貯留(CCUS)を行うものをブルー水素、化石燃料由来でCCUSを行わないものをグレー水素と呼んでいます。
CCUSは水素生産時に発生するCO2を回収・貯留することで、これにより水素の生産から消費までに生じるCO2がネットゼロになる仕組みです。
| 項目 | グリーン水素 | ブルー水素 | グレー水素 |
| 生産時に使用するエネルギー | 再生可能エネルギー | 化石燃料 | 化石燃料 |
| 生産時の二酸化炭素排出 | なし。 | あり。ただし、回収・貯留・再利用を実施。 | あり。 |
最も環境にやさしいのはグリーン水素だが、グリーン水素の価格はグレー水素に比べて高いことが難点です。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、グリーン水素の生産拡大における課題は経済性であり、グリーン水素の生産価格がグレー水素や化石燃料と同水準まで達する必要がある、と指摘しています。
グリーン水素の価格は、電解槽への投資コストや稼働時間、再生可能エネルギーによって発電された電力のコストなどに左右されます。
IRENAによれば、2020年時点では太陽光または風力由来の電気で作られたグリーン水素の価格はブルー水素の価格を上回っているが、今後10年で、グリーン水素の生産コストを1キログラムあたり2〜3ドルまで低下させることが可能になると見込んでいます。
参考情報
■ 欧州委員会、EUの水素経済活性化に向けた欧州の関係者との共同声明に署名
■ EU水素戦略
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