クリーン産業ディールについて
2025年02月26日、欧州委員会は産業競争力と脱炭素化を同時に推進する「クリーン産業ディール」を公表しました。本ディールは産業競争力と脱炭素化を同時に推進することで、ヨーロッパのイノベーションおよび産業強化を目的としたものです。本ディールはフォン・デル・ライエン委員長の政治指針(2024-2029)における優先事項として取り扱われます。
背景
■ 欧州産業は高いエネルギーコストや不公平な国際競争に直面しており、迅速な支援が必要と考えています。また、脱炭素化を成長の原動力と位置づけ、企業や投資家に対して2050年の脱炭素経済実現への確実性と予測可能性を提供する必要性に直面しています。
■ 欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は「ヨーロッパはイノベーションだけでなく生産の大陸でもある」と主張しており、エネルギー価格の高さや過剰な規制が企業の成長を阻害している現状を指摘しています。そういった障壁を取り除き、ヨーロッパの産業を強化すべきと述べています。
■ そのため、産業界、社会的パートナー、市民社会との対話を通じて策定された「アントワープ宣言」や「クリーン・トランジション対話」の成果を反映した、産業競争力強化や脱炭素化のための成長戦略の策定が重要視されてきました。
概要
■ 「クリーン産業ディール」は産業競争力と脱炭素化を同時に推進するものです。
■ 本ディールは「エネルギー集約型産業」と「クリーンテック産業」の二分野に重点を置き、以下の主要施策実施を予定しています。
- エネルギーコストの削減
エネルギー価格の低減を競争力強化の基盤とし、「手頃なエネルギー行動計画」を採択。再生可能エネルギーの導入加速、電化推進、エネルギー市場の統合、化石燃料依存の削減を進めます。
- クリーン製品の需要喚起
「産業脱炭素化促進法」によりEU製クリーン製品の需要を拡大し、公共調達において「持続可能性」「レジリエンス」「欧州製」の基準を導入します。2025年から鉄鋼、続いてセメント製品に炭素強度ラベルを導入し、消費者の選択を促します。
- クリーン移行への資金調達
総額1,000億ユーロ超を動員し、クリーン産業の支援を強化します。また、再生可能エネルギーや産業脱炭素化の迅速な支援、1000億ユーロ規模の「産業脱炭素化銀行」設立提案、最大500億ユーロの追加投資誘発、欧州投資銀行(EIB)の支援等も行います。
- 循環型経済と資源確保
重要原材料の確保に向け「EU重要原材料センター」を設立します。また、2026年に循環経済法を制定し、2030年までに24%の資源循環率を達成します。
- グローバル市場への対応
貿易協定を活用し、サプライチェーンの多様化を進めます。また、産業保護のため、貿易防衛策や炭素国境調整メカニズム(CBAM)を強化します。
- 技術者・労働力の確保
「スキル・ユニオン」を設立し、労働者の能力向上を支援します。
■ 各種アクションの実施予定表
| 時期 | アクション | 対象分野 |
| 2025年Q1 | 「手頃なエネルギーに関するアクションプラン」策定 | エネルギーコスト削減 |
| ガス貯蔵規制の延長に関する法案提出 | エネルギーコスト削減 | |
| 低炭素水素に関する規則(Delegated act)導入 | クリーン供給・需要 | |
| InvestEUのリスク耐性向上 | 公共・民間投資 | |
| クリーン貿易・投資パートナーシップ(CTIP)交渉開始 | 国際市場・貿易 | |
| CBAM(炭素国境調整メカニズム)の簡素化 | 国際市場・貿易 | |
| 「スキル・ユニオン」設立 | 労働力・スキル | |
| 2025年Q2 | 欧州投資銀行(EIB)によるPPA保証試験運用開始 | エネルギーコスト削減 |
| クリーン・インダストリアル・ディール国家補助枠組み採択 | 公共・民間投資 | |
| ネットワーク料金に関する勧告 | エネルギーコスト削減 | |
| 水素メカニズム(Hydrogen Mechanism)開始 | クリーン供給・需要 | |
| エコデザイン作業計画(Ecodesign Work Plan)採択 | 循環経済 | |
| 各国に対し、クリーン産業ディール支援のための税制優遇措置を勧告 | 公共・民間投資 | |
| 2025年Q3 | CBAMの拡張可能性評価 | 国際市場・貿易 |
| 2025年Q4 | 産業脱炭素化促進法(低炭素製品ラベル、持続可能性基準導入) | クリーン供給・需要 |
| 産業脱炭素化促進法(エネルギーアクセス許認可手続きの迅速化) | エネルギーコスト削減 | |
| エネルギー課税に関する勧告 | エネルギーコスト削減 | |
| CfD(差額契約)設計に関する指針 | エネルギーコスト削減 | |
| 小売契約における柔軟性の報酬促進に関する指針 | エネルギーコスト削減 | |
| 品質雇用ロードマップ策定 | 労働力・スキル | |
| イノベーション基金による試験的オークション | 公共・民間投資 | |
| トランス・メディテラニアン・エネルギー・クリーンテクノロジー協力開始 | 国際市場・貿易 | |
| 2026年Q1 | 欧州グリッドパッケージ発表 | エネルギーコスト削減 |
| CBAMの拡張に関する法案提出 | 国際市場・貿易 | |
| 外国補助金規制に関する指針発表 | 国際市場・貿易 | |
| 欧州公正移行監視所(Fair Transition Observatory)設立 | 労働力・スキル | |
| 2026年Q2 | 産業脱炭素化銀行(Industrial Decarbonisation Bank)設立 | 公共・民間投資 |
| クリーンテクノロジー保証ファシリティ(CleanTech Guarantee Facility)開始 | 公共・民間投資 | |
| 2026年Q4 | 公共調達指令の改正(非価格基準導入) | クリーン供給・需要 |
| EUクリティカル・ローマテリアル・センター設立 | 循環経済 | |
| 循環経済法(Circular Economy Act)採択 | 循環経済 | |
| グリーンVAT制度(Green VAT Initiative)導入 | 循環経済 | |
| トランス・リージョナル・サーキュラリティ・ハブ(Trans-Regional Circularity Hubs)設立 | 循環経済 | |
| 2027年Q4 | 一般補助規則(GBER)の見直し(社会的企業・労働者支援) | 労働力・スキル |
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