金属スクラップの税関監視システムについて
2025年07月23日、欧州委員会は鉄系(鉄鋼を含む)、アルミニウム、銅などの金属スクラップを対象に、EU域内への輸入と域外への輸出を詳細に監視するための税関システムを正式に稼働させたことを公表しました。この取り組みは、リサイクル資源としての金属スクラップの安定的な確保を図り、供給不足を防止するとともに、EUの金属産業全体の競争力や持続可能性を高めることを目的としたものです。
背景
■ 欧州委員会は2025年03月19日に「鉄鋼・金属行動計画(Steel and Metal Action Plan, SMAP)」を採択し、域内の金属産業が直面する多様な課題への対処に乗り出しました。
■ その中核をなす政策分野のひとつが、金属の循環利用の促進です。これは、原材料の再利用を進めることで金属産業の脱炭素化を後押しし、同時に欧州委員会が提案している「1990年比で2040年までに温室効果ガスの正味排出量を90%削減する」という野心的な気候目標とも整合します。
■ しかし現実には、EU域内でリサイクル向けに利用可能なスクラップの量は減少傾向にあり、その原因のひとつが第三国への「スクラップ流出」です。加えて、米国が鉄鋼およびアルミニウム製品(スクラップを除外)に対して50%の高関税を導入したことが、一次原材料の国際価格を押し上げる結果となり、EUから海外へのスクラップ輸出を促すインセンティブを高めています。
■ こうした要因の積み重ねにより、今後EU金属産業が必要とするスクラップを安定的に確保できなくなるリスクが強まっており、対策が急務となっていました。
概要
■ 今回稼働した税関監視システムは、EU域内に流入する金属スクラップと、域外に流出するスクラップの両方について、これまで以上に体系的で詳細な情報を収集することを可能にします。
■ この監視データを活用することで、欧州委員会は特定の地域や品目に的を絞った貿易措置を迅速に講じることができ、スクラップ供給不足を事前に防ぐ態勢を整えられます。
■ この監視は短期的な供給安定の確保にとどまらず、長期的には金属産業のレジリエンス(外的ショックへの強さ)と持続可能性の向上にも資するものです。欧州委員会は同時に、業界関係者との協力体制を強化し、金属スクラップを主要な種類ごとに分類する制度を一層精緻化すべきかどうか、また実現する場合の技術的・制度的手法についても評価を進めています。
■ さらに輸出入統計は毎月更新され、EUのウェブサイトで公開されるため、金属スクラップの貿易動向を迅速かつ透明に把握できる仕組みが整えられます。これにより、政策立案者、業界、そして市民が同じ情報基盤に立って状況を共有し、必要に応じた対応を取ることが可能となります。欧州委員会は、収集した輸出入データを基に、2025年第3四半期末までに追加的な措置が必要かどうかを判断するとしており、今後の動向が注目されます。
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