EPAがPFASの一つであるPFBAの評価を決定
2022年12月22日、米国環境保護庁(EPA)は、統合リスク情報システム(IRIS)プログラムからの2つの重要な文書を発表しました。1つはIRIS評価を開発するための研究開発局(ORD)のスタッフハンドブック(IRISハンドブック)、そしてもう1つはペルフルオロブタン酸(PFBA)および関連塩に関する最終的なIRIS毒物学的レビューです。
前者は化学物質を最先端の技術で厳密に評価するためのハンドブックとなり、後者はEPAがPFBAを含むPFASに対処するための重要な評価の基準になります。ここでは「IRISプログラムとは」「PFBAとは」「今回の2つの重要な文書の内容」が記事になっています。
IRISプログラムとは:
環境保護庁(Environmental Protection Agency、EPA)は、統合リスク情報システム(Integrated Risk Information System、IRIS)プログラムによって環境中に含まれる化学物質の健康被害を特定して科学的に特徴付け、裏付けることを行っています。
IRIS評価は科学文書としての完全性と科学的なピアレビューが必要であるとする国際原子力機関(International Atomic Energy Agency、IAEA)の方針に従って開発されました。
現在IRIS評価は、化学物質、関連する化学物質のグループ、または複雑な混合物をカバーし、EPA、州および地方の保健機関、その他の連邦機関、および国際保健機関で使用される毒性情報の重要な情報源となっています。
つまり、EPAはIRIS評価により規則の内容や基準を決定し、透明性があり科学的に証明された基準を用いて規則を作成することにつなげています。
今回のPFBAのIRIS評価においても、IRISハンドブックに概説されている最適な測定方法などのプロトコルによって評価されています。
PFBAとは:
以前まで、衣類・繊維製品の防水剤もしくは防汚剤として、フッ素系界面活性剤であるペルフルオロオクタンスルホン酸 (PFOS) が使用されていました。しかし、PFOSが環境中に長期間残留して内分泌攪乱や毒性を示すことが判明し、2003年より同じフッ素系界面活性剤であるPFBSが代替品として、同様に汚れに強い布地、紙食品包装、カーペットなどに使われてきました。
また、写真フィルムの製造にも使用されています。PFBS の生体内における半減期は1か月強でPFOS の5.4年に比べるとはるかに短いですが、しかし環境中での安定性はPFOS同様非常に高く、永続的に残留することがわかっています。加えて、ヒトに対する安全性についても十分な研究が行われていない現状があります。
今回の2つの重要な文書:
- IRISハンドブック
IRISハンドブックは、体系的なレビューによりIRIS評価を開発もしくは施行するスタッフの手順をまとめてあります。体系的なレビューでは、事前に指定された科学的方法を使用して、類似しているが別々の研究の結果を特定、選択、評価、および統合します。
さらに、IRIS評価では、環境中に見られる化学物質への曝露に関連するヒトの健康被害を特定し、曝露に起因する健康への影響を毒性値として公表します。IRIS評価プロセスは多段階に渡り、体系的なレビューの方法(プロトコル)に関するパブリックコメント、評価草案に関するパブリックコメント、および最終決定前の外部ピアレビューが含まれています。
今回公表されたIRISハンドブックに記載されているプロトコルは、今後新しく開始するIRIS評価にも使用されます。ただし、ハンドブックに記載されている多くの事柄は、すでに行われた評価および現在進行中の評価にすでに組み込まれています。
よって、IRISハンドブックは既存のEPAガイドラインに取って代わったり、他のEPAプログラムの方向性を変更したりすることはありません。今回のIRISハンドブックは2020年にパブリックコメント、さらに2021年に全米科学工学医学アカデミー(National Academy of Medicine、NASEM)から好意的なピアレビューを受けています。
このハンドブックが将来のIRIS評価が適切に使用されるために、今後必要に応じて更新が行われます。
- PFBAとその関連塩の最終的なIRIS毒物学的レビュー
現在、EPAの研究者は、PFAS に関連する5つの化合物のIRIS評価に取り組んでいます。PFBAのIRIS評価は、この5つの化合物について初めての最終的なIRIS評価です。PFASである他の4つ、PFHxA(ペルフルオロヘキサン酸)、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)、PFNA(ペルフルオロノナン酸)、およびPFDA(パーフルオロデカン酸)のIRIS評価は未だ進行中です。
これらの評価公表のタイミングについては、IRISプログラムの見通しを参照してください。
この最終的なIRIS評価では、PFBAへの曝露が起因する潜在的な非がんおよびがんのヒトの健康への影響に関する結果が評価されています。
そして、PFBAへの必要十分な経口曝露が甲状腺、肝臓、および発達への影響を引き起こす可能性が高いことが示されました。ただし、PFBAの最終評価では「発がん性を評価するためには情報が不十分」であることも指摘しています。
さらに最終評価には、有害な影響がないと思われる、毎日摂取できるPFBAの量の非癌推定値も含まれています。この推定値は、EPAの規制内容を決定する際に使用されることが予想されます。
PFBAの最終的なIRIS評価は、EPAのプログラムオフィスと地域、および州機関全体による規制の作成の際に使用されます。
ただし、IRIS評価は、リスク評価の一部にすぎず、その科学的結論は、通常、PFBAの人間の曝露に関する情報を含む他の科学的情報と組み合わせて使用される予定です。よって、実際の規則の作成と制定は個別のレビュープロセスも行われます。
EPAは以前にIRIS評価が決定されたいくつかのPFAS種に加え今回PFBAの評価を終えており、今後もPFAS戦略ロードマップに従って、別のPFAS種のIRIS評価を続けていく予定です。
参考:
IRISハンドブックおよびPFBAおよび関連塩のIRIS最終評価書を発行
注目情報一覧
新着商品情報一覧
調査相談はこちら
概要調査、詳細調査、比較調査、個別の和訳、定期報告調査、年間コンサルなど
様々な調査に柔軟に対応可能でございます。
- ●●の詳細調査/定期報告調査
- ●●の他国(複数)における規制状況調査
- 細かな質問への適宜対応が可能な年間相談サービス
- 世界複数ヵ国における●●の比較調査 など