市場競争を減らし、消費者や労働者に損害を与える企業合併や買収を阻止するガイドラインの更新
2023年07月19日、連邦取引委員会(FTC)と司法省は、企業合併および買収について連邦独占禁止法の遵守を政府機関が判断するためのレビューを説明する合併ガイドラインの草案内容を発表しました。FTCと司法省はこの更新により、政府機関が現代経済における競争に対して合併の影響をどのように判断し、法律の下で提案された合併をどのように評価するかをよりよく反映したい考えです。意見募集の締め切りは2023年09月18日です。
概要・背景
連邦取引委員(Federal Trade Commission、FTC)は、米国における公正な取引を監督・監視する連邦政府の機関です。同国の競争法にあたる法律などに基づき、商業活動に関わる不公正な競争手段、不公正または欺瞞的な行為または慣行を、人・団体・または法人が行わないようにするために設立されています。
FTCの現議長は、米国市場について「開放的で競争的で回復力ある」と表現し、「市場は、わが国の歴史を通じて、経済的成功とダイナミズムの基盤です。合併ガイドラインに沿った形で行う独占禁止法の誠実かつ積極的な執行は、米国市場を維持するための鍵です」と述べています。そのため、今回の更新される予定の新合併ガイドラインは、「企業が現代経済でどのようにビジネスを行うのかについて行政機関や米国民の意見が反映されている」と述べました。
米国司法省(United States Department of Justice、DOJ)は、米国の司法関係事務を所管し、日本でいう法務省に相当する行政機関で、FTCと同様に合併審査などの独占禁止法の執行を行っています。司法省の現長官も「政府機関により、きちんと確認されていない企業の統合(合併や買収)は米国経済の基礎となっている自由で公正な市場を脅かしている」とし、「反競争的企業合併が引き起こす米国民への損害を減らす必要がある」と述べています。
両省では、1968年に最初の企業合併ガイドラインが発表されて以来、1982年、1984年、1992年、1997年、2010年、2020年などに、ガイドラインを修正しています。
最近では、2010年に水平合併ガイドライン(Horizontal Merger Guidelines)が「同種の事業を営み競争関係にある企業同士の合併」について詳しく修正を行い、2022年に垂直合併ガイドライン(Vertical Merger Guidelines)が「同じサプライチェーン内の異なる取引段階にあって、取引関係にある企業の間(例えば、スーパーとは商品の配送業者の間)の合併」について詳しく修正を行いました。
両省は今回、現代のビジネスの競争はより複雑で、50年前、あるいは15年前とは異なっているという見解を示し、またガイドラインを最終決定する前に、一般の米国民により草案が確認され、必要ならば訂正される必要があると考えました。そこで、2022年1月、2010年に発行された水平合併ガイドラインと2020年に更新された垂直合併ガイドラインを評価するためのイニシアチブを発表しました。
その後、消費者、労働者、州司法長官、学者、企業、業界団体、実務家、起業家など、五千人以上の一般市民より意見が提出されました。両省はまた、競争市場を弱体化させる企業の合併と買収(Mergers and Acquisitions、M&A)について4つの調査会も実施し、意見を募集していました。
今回の合併ガイドラインを改訂する際に、両省は3つの目標を立て、主要な行動を行いました。第一に、ガイドラインは議会によって作成され、最高裁判所によって解釈された法律を反映する必要があるとしたことです。これにより、合併ガイドラインは、合併についての分析方法を説明し法律との関係を明確にするために、関連する判例を中心に構成されています。
ただし、合併ガイドラインでは、ガイドラインが法律に代わるものではなく、新しい権利や義務を生み出すものではないことも明確にされています。第二に、ガイドラインはすべての人々への透明性を重視する必要があるとしています。第三に、ガイドラインは、現代経済の現実と、現代の経済学で得た最良の分析方法を反映する必要があるとしたことです。
注目すべき内容
ガイドライン草案は、更新前の項目に基づいて構築、拡張、および明確化されています。ガイドラインでは、最初に合併が反競争的で違法であるかどうかを判断する際に政府機関が考える13の原則の概要を示しています。さらに、それぞれのガイドラインは、お互いに排他的でなく、1つの合併に複数のガイドラインが適応される場合があることも明記されています。
それぞれのガイドラインでは、合併を分析するときに使用する分析方法について詳しく説明されています。ここでは、ガイドライン内の分析方法の元となる「13の原則の概要」について記載します。
- 合併は、一部の企業に集中した市場への集中をさらに高めるべきではない。
- 合併によって、企業間の実質的な競争がなくなるべきではない。
- 合併は、なんらかの調整が必要になるかもしれない可能性を高めるべきではない。
- 合併は、一部の企業に集中した市場への参入者を排除するべきではない。
- 合併は、ライバル企業が競争に使用する可能性のある製品やサービスを制御する会社を設立することにより、競争を大幅に軽減するべきではない。
- 垂直的な合併(Vertical mergers)は、競争を先取りする市場構造を作り出すべきではない。
- 合併は、支配的地位を定着させたり拡大したりすべきではない。
- 合併は、特定の企業への集中傾向を助長すべきではない。
- 合併が一連の複数の買収の一部である場合、行政機関はシリーズ全体を調べる。
- 合併に多面的な複数の段階(プラットフォーム、platform)がある場合、行政機関はそれぞれの段階の内容や関係性を確認し、それぞれの段階を置き換えた場合における、市場競争の内容についても検討する。
- 合併に競合する買い手が関与する場合、行政機関はその買収が労働者または他の売り手の競争を大幅に軽減するかどうかを調べる。
- 買収に部分的な所有権または少数株主持分が含まれる場合、政府機関はその競争への影響を調査する。
- 合併は、競争を大幅に減らし、独占を生み出す傾向があってもならない。
意見募集の締め切りは2023年09月18日です。
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