米国|FTC、食品医薬品局の「治療学的同等性評価を伴う承認医薬品リスト」への大手製薬メーカーの不適切な特許掲載に関して政策声明を発出

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米国|FTC、食品医薬品局の「治療学的同等性評価を伴う承認医薬品リスト」への大手製薬メーカーの不適切な特許掲載に関して政策声明を発出

FTC、不適切な特許掲載はFTC法違反の可能性があるとして調査する可能性

2023年9月14日、連邦取引委員会(FTC)は、米国食品医薬品局(FDA)の支持を受け、先発医薬品を製造・販売する製薬会社に対し、FDAの「治療学的同等性評価を伴う承認医薬品」のカタログである、通称「オレンジブック」に特許を不当に作成した場合、法的措置が取られる可能性があることを警告する政策声明を発表しました。医薬品の製造、販売や特許に係わる事業体に影響があります。

背景

米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration、FDA)の「オレンジブック(Orange Book)」とは、「治療学的同等性評価を伴う承認医薬品(Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence Evaluations)」のカタログで、FDAが安全かつ有効であると承認した医薬品のリストです。製薬会社は、先発医薬品に関する特許をオレンジブックに記載することが法定要件となっています。米国では、一旦先発医薬品がオレンジブックに掲載されると、後発の医薬品の発売の際に、先発医薬品メーカーがオレンジブックに掲載された特許に基づいて、特許侵害訴訟を提起することができます。この時、特許が無効であるか侵害されていないかの裁判の判断の前に、後発の医薬品の販売承認申請が自動的に30ヶ月間停止されます。

2002年の連邦取引委員会(Federal Trade Commission、FTC)の調査では、この自動的に停止される30ヶ月の特許権留保措置が、その後の医薬品販売競争を阻害するために利用されている事例が数多く確認されています。先発医薬品メーカーが、「不適切な内容」、例えば「法的な判断では科学的な根拠が乏しいとして却下されるような内容」などをわざとオレンジブックに記載することで、後発医薬品メーカーが競合する医薬品を販売したい場合に、特許留保措置のために申請後すぐに発売できないようにする事例です。このような事例に対し、FTCはすでに、不適切なオレンジブックへの特許掲載が反競争的な影響を及ぼしているとして、いくつかの訴訟においてアミカスブリーフ(裁判対して提出する、当事者及び参加人以外の第三者がどちらか一方に有用な内容を記載した意見や資料)を提出しています。FTCのリナ・M・カーン委員長は、「オレンジブックへの不適切な特許掲載は、後発ジェネリック医薬品メーカーの市場参入を違法に遅らせ、市場から締め出す可能性があり、最終的に米国人から低価格の医薬品や製剤品を奪う可能性がある」と指摘し、「FTCは、不適切なオレンジブックへの掲載が、(独占禁止法の1つである)連邦取引委員会法(FTC法)に違反する不公正な競争方法である可能性を明らかにしています。FTCは、医薬品を含む医療の価格をつり上げる違法行為に対抗するため、あらゆる手段を用いることを躊躇しません。」とコメントしました。FDA長官のロバート・M・カリフ医学博士も、医薬品競争の調査を行うFTCの取り組みを高く評価し、「FDAは、米国人の消費者を保護するために、ジェネリック医薬品や類似効果を持つ医薬品の競争を阻害または遅延させる特許掲載を特定し、FTCを支援する用意がある。」とコメントしました。

注目すべき内容

FTCは、オレンジブックへの不適切な特許掲載は、何十年もの間医薬品の競争条件に悪影響を及ぼし、先発医薬品と後発の安価なジェネリック医薬品との競争を阻害して、価格を高く維持していた可能性があると判断しました。

そのため、2023年9月14日、「オレンジブックへの不適切な特許掲載を、FTC法第5条に違反する不公正な競争方法の可能性があるとしてFTCは精査を行う。」と発表しました。

この政策声明には、大手医薬品メーカーの特許掲載に異議を唱えるためのFDAの規制プロセスの利用や、FTC法第5条を含む独占禁止法に基づいて、後発医薬品メーカーへの救済の可能性も含まれています。

参考情報

FTC、食品医薬品局の「オレンジブック」へのブランド製薬メーカーの不適切な特許掲載に関する政策声明

連邦取引委員(FTC)とは

連邦取引委員(Federal Trade Commission、FTC)は、米国における公正な取引を監督・監視する連邦政府の機関です。同国の競争法にあたる法律などに基づき、商業活動に関わる不公正な競争手段、不公正または欺瞞的な行為または慣行を、人・団体・または法人が行わないようにするために設立されています。1914年に商務省(Commerce Department)の企業局(Bureau of Corporations)から独立する形で設置されました。元々は当時の反競争的状況を防ぐ取り組みの一環として、不公正な方法による取引を防ぐことが主な任務とされていました。その後、FTCに反競争的行為を監督する広い権限を与える法律が制定され、1938年には「不公正または欺瞞的な行為または慣行」を防ぐ任務が追加されました。それ以降、FTCは商品取引における消費者保護全般を所掌するようになり、1975年には産業全体の取引規制に関するルール策定の権限が付与されています。その他、消費者プライバシー、児童プライバシーといった個別分野も扱っています。

独占禁止法とは

米国の独占禁止法は、単一の法律ではなく、すべての州に適用される3つの連邦法から構成されています。1890年制定のシャーマン法、1914年制定のクレイトン法、1914年制定の連邦取引委員会(Federal Trade Commission、FTC)法です。シャーマン法は、反トラスト法とも呼ばれ、カルテルなどの取引制限を禁止する法律です。クレイトン法は、シャーマン法の予防的な規制を目的とし、競争を阻害する価格差別の禁止や不当な排他的条件付取引などを禁止しています。FTC法は、不公正な取引方法などを禁止するとともに、執行機関である連邦取引委員会の権限や手続きを規定しています。シャーマン法は司法省(Department of Justice)の反トラスト局(Antitrust Division)が、クレイトン法は反トラスト局とFTCが共同で、FTC法はFTCが担当しています。

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