EU|欧州理事会、関税統計名目及び共通関税率に関する改定規則を公布
農産物価格の上昇に対する肥料コスト削減策とロシア、ベラルーシへの制裁措置
2022年12月16日、EU理事会は、関税統計名目及び共通関税率に関する規則(EEC)No 2658/87の附属書Ⅰを改定し、理事会規則(EU)2022/2465として公布しました。本改定では、ロシアのウクライナに対する不当な侵略戦争、及びベラルーシの関与を考慮して、ロシアとベラルーシを原産地とする窒素肥料の原料の輸入は、EUの暫定的な施策として決定された関税一時停止の対象から除外され、予め課されていた輸入税が引き続き課されるとしています。
背景
特定の窒素肥料投入のためのEU市場は、第三国からの輸入にかなり依存しています。2021年、EUは窒素肥料を生産するために290万トンのアンモニアと470万トンの尿素を輸入しましたが、それらの製品の価格は2021年に大幅に上昇し、2022年度中も上昇を続けました。
窒素肥料用の原材料の大部分は、EU市場への貿易の得恵を受ける第三国からEUに輸入されていますが、EU は理事会規則 (EEC) No 2658/87 (1) に規定された共通関税率の対象国を原産地とする窒素肥料を大量に輸入しており、関税率は現在5.5%~6.5%に及んでいます。
2022年3月23日付けの食料安全保障の保護と食料システムの回復力の強化に関する欧州委員会のコミュニケーションにおいて、欧州委員会は、ロシアのウクライナ侵攻前に既に商品市場が著しい価格高騰を経験し、それがエネルギーと肥料のコスト上昇を通じて農業市場に反映され、結果として農産物価格を上昇させたこと、また、ウクライナへの侵攻と世界的な商品価格ブームが、農業市場の価格をさらに押し上げ、部分的に肥料の輸入に頼っているEUの食糧システムの脆弱性を露呈していることに留意しています。
このことは、生産者のコストを引き上げ、食料価格に悪影響を及ぼし、消費者の購買力及びEU内の農家の収入に関する懸念を引き起こしています。
欧州委員会は、短期的には、持続可能な種類の肥料や施肥方法の使用への移行を待つ間、鉱物性肥料のコストと入手可能性を優先させる必要があるとしています。また、欧州委員会は、EUの収穫の見通しが危うくならないよう、農家に対する肥料の価格と供給を監視することを強調するとしています。
このような観点から、窒素肥料の生産に必要な投入物を輸入する際に、EUの肥料生産者が直面するコストを削減するための措置をとることが適切としています。
改定の経緯、根拠
国際市場における窒素肥料の不足時に、アンモニアや尿素などの中間投入物の連合への輸入に対する関税は、輸入関税がない他の世界市場と比較して、EU市場への供給に対する阻害要因となり、関税の差は、EUの輸入の多様化の努力の妨げにもなっています。
したがって、特定の窒素肥料の原料について、欧州議会と理事会の規則(EU)952/2013号(2)の56条(2)項(c)に記載する共通関税率の関税を一時的に停止し、本規則の発効日から6ヶ月間適用されるべきとしています。この措置の効果を評価できるようにするため、欧州委員会は報告書を実施し、理事会に提出すべきとしています。
同時に、欧州連合条約21条3項に基づき、EUは対外行動の異なる分野間及び対外行動と他のEU政策との間の整合性を確保することとしています。
EUとロシア連邦の関係は過去数年にわたり非常に否定的な方向に進んでおり、特にロシア連邦の国際法の無視、特にウクライナに対する不当な侵略戦争の点で、ここ数ヶ月の間に悪化しています。
ロシア連邦は世界貿易機関の加盟国であるが、EUは、世界貿易機関設立協定、特に1994年GATT 21条に基づく例外適用により、ロシア連邦からの輸入品に他国からの輸入品と同等の利益を与える義務(最恵国待遇)から免除しています。したがって、ロシア連邦からの輸入品が本規則の対象となる製品に関して免税及び最恵国待遇の享受を認めることは適切ではないとしています。
EUとベラルーシの間の状況も、同政権が国際法、基本的権利及び人権を軽視しているため、過去数年にわたり悪化しています。2020年10月以降、EUはベラルーシに対して制限的な措置を漸進的に課しており、2021年12月2日、EU理事会は、継続的な人権侵害等を考慮し、制裁措置の5パッケージを採択しました。
2022年には、ロシア連邦のウクライナに対する不当な侵略戦争へのベラルーシの関与を考慮して、さらなる制裁措置のパッケージが採択されました。さらに、ベラルーシは世界貿易機関(WTO)に加盟していないため、世界貿易機関設立協定により、EUはベラルーシ産の製品に最恵国待遇を与える義務を負っていません。
このことから、規則(EEC)No 2658/87の附属書Iの関税に関する一般規則、特にその1部、1節、B、1項を適用して、ロシア連邦とベラルーシを本規則に定める自律的関税停止の範囲から除外することが適切であるとしています。
したがって、ロシア連邦とベラルーシを原産地とする窒素肥料の原料の輸入は、関税停止の対象とすべきではく、ロシア連邦及びベラルーシからの本規則の関係製品の輸入は、それらが予め課されていた輸入税が引き続き課されるべきとしています。
ロシア連邦のウクライナに対する侵略戦争が肥料市場に引き起こした緊急事態によって悪化した窒素肥料の生産のための投入物の大幅かつ急激な価格上昇に鑑み、この規則は欧州連合の官報に掲載された日の翌日から施行されるべきとしています。
附属書の改定箇所
上記の経緯、根拠を踏まえ、規則(EEC)No 2658/87の附属書Iが修正されています。
以下に、改定条文の当該部分を示します。
■ 1条
規則(EEC) No 2658/87の附属書Ⅰを次のように改定する。(1) 2部6節28章において、3欄のCNコード2814 10 00のテキスト(従来の関税率(%))を以下に置き換える。
規則(EU)2022/2465 附属書Ⅰより当該部分を引用・仮訳
‘5.5 (*1)
(*1) 理事会規則(EU) 2022/2465に基づき、5.5%の税率が適用されるロシア及びベラルーシを除き、2022年12月16日から6ヶ月間、関税が自主的に停止される。
(2) 2編6節31章において、3欄のCNコード3102 10 10及び3102 10 90のテキスト(従来の関税率(%))を以下に置き換える。
‘6.5 (*2)
(*2) 理事会規則(EU) 2022/2465に基づき、6.5%の税率が適用されるロシア及びベラルーシを除き、2022年12月16日から6ヶ月間、関税が自主的に停止される。
■ 2条
2023年5月17日までに、欧州委員会は、本規則に規定される関税の停止の結果を評価する報告書を作成し、理事会に提出する。当該報告書に基づき、欧州委員会は、適切であれば、当該関税の一時停止を延長するための立法案を提出するものとする。
■ 3条
本規則は、欧州連合官報に掲載された日の翌日から施行される。同規則は、2023年6月17日に適用を終了する。本規則は、その全体を拘束し、すべての加盟国において直接適用されるものとする。
参考情報
- COUNCIL REGULATION (EU) 2022/2465 of 12 December 2022 amending Annex I to Regulation (EEC) No 2658/87 on the tariff and statistical nomenclature and on the Common Customs Tariff
- Council Regulation (EEC) No 2658/87 of 23 July 1987 on the tariff and statistical nomenclature and on the Common Customs Tariff
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