2023.04.03
EU|肥料製品の自主的なデジタル表示に関する提案を採択
ユーザーへの情報提供とコスト削減のため、EUの肥料製品にデジタル表示を提案
2023年02月27日、欧州委員会は、EUの肥料製品の自主的なデジタル表示に関する提案書を採択しました。EUでは、化学物質を含む一部の製品、例えば電池ではすでにデジタル表示が行われており、その他の製品、例えば化学薬品、洗剤、化粧品などについてはデジタル表示のルールが検討されています。
EU全体の健康、安全、環境基準を満たした肥料製品(CEマーク付き)の供給者は、デジタルラベルで情報を提供することが認められます。これにより、ユーザーへの情報提供が向上し、肥料製品の効率的な使用につながる。また、サプライヤーの表示義務も簡素化され、大企業で年間57,000ユーロ、中小企業で4,500ユーロのコスト削減が期待できます。
デジタル表示は任意であり、サプライヤーと小売業者は、表示情報の伝達方法(物理的な形式、デジタル形式、またはその組み合わせ)を選択することができる。農家やその他の肥料の消費者にパッケージで販売される製品は、デジタルラベルに加えて、人の健康や環境に対する安全性など、最も重要な情報を物理的なラベルに記載することは継続されます。
この提案は、欧州議会と欧州理事会に送付されました。採択されると、その間に技術的なルールが決定されるため、新規則は採択から2年半の2025年第4四半期に適用される予定です。
肥料に関わる 入手可能性・価格・長期的な自立性の確保
2023年2月16日、欧州議会、EUに輸入肥料への依存度低下と価格引き下げを求める肥料を生産するためのロシア産ガスへの依存を解消するには、より多くの資源が必要になります。欧州議会は、EUレベルで肥料の共同購入メカニズムを検討して、欧州委員会に対し、肥料の供給を確保し、価格を引き下げるための措置を講じ、肥料におけるEUの戦略的自律性を高めるよう要請しています。
欧州議会は、16日に承認された決議案の中で、2023年6月までにEUの長期肥料戦略とEUの長期土壌栄養戦略を策定するよう求めています。また、肥料の生産に使用されるロシアのガスがウクライナ戦争の資金調達に貢献していることに留意して「このガスへの依存を解消するために、できるだけ早く十分な資源を配分すること」を求めています。
欧州議会はまた、鉱物性肥料を自給することは中期的には現実的ではなく、肥料を生産するための原材料が独裁的な政権からもたらされることが多いことを認めています。EUは、依存関係を別のものに置き換える必要があり、肥料における戦略的自律性を高めるとしています。
農家が利用できる肥料の量を増やし、価格を安定させるための短期的な対策として、欧州議会は、2023年の農業予算の一部を使って農家への緊急支援を行い、ロシアとベラルーシのものを除くすべての鉱物性肥料に輸入関税の一時停止を適用することを提案しました。
また、欧州委員会に対し、EUレベルでの肥料の共同購入メカニズムや、肥料市場のボトルネックの解消方法について検討するよう求めています。長期的には、脱炭素化プロセスを加速させ、化石燃料を使用せずにリサイクルされた栄養素を使用して肥料を生産することを推奨しています。
上記の背景は、2022年2月24日のウクライナ侵攻後、肥料やエネルギーの価格が急上昇もよるもので、食料費の上昇にも影響を及ぼしました。窒素肥料の価格は2022年9月に149%上昇し、最大の肥料メーカーは過去最高の利益を記録しています。
エネルギーラベルとエコデザイン改正規則の適用開始
EUの肥料製品の自主的なデジタル表示に関する提案書を採択する以前の2021年3月1日に、EUでエネルギーラベルに関する改正規則の適用が開始されました。エネルギーラベルは、消費者向けのエネルギー消費効率などを示す情報で、EU規則により特定の製品への表示が義務付けられています。
消費者が競合製品のエネルギーラベルを比較することで、エネルギー消費効率のより良い製品を選ぶことを可能にするとともに、製造業者に対して、エネルギー消費効率がより良い製品の開発を促すねらいがあります。
エネルギー消費効率の基準を厳格化
2021年3月の改正は、エネルギーラベルのデザインを刷新し、エネルギー消費効率の表示を「A」から「G」までの7段階に改めるもので、表示の基準も厳格化し、従来の製品のほとんどが「B」「C」「D」となり、最上位の「A」を取得できる製品はごく一部に限られます。
また、エネルギーラベルにはQRコードも追加され、製品のサイズ、特徴、製造元による最低限の保証、製品テストの結果などの追加的な製品情報を、より容易に入手できるようになります。なお、EU市場に出される全ての製品は、「エネルギーラベルに関する欧州製品登録簿(EPREL)」と呼ばれるデータベースへの登録が義務付けられ、エネルギーラベルのQRコードはこのデータベースとリンクされることになっています。
この改正規則が2021年3月1日から適用されるのは、冷蔵庫・冷凍庫、家庭用食洗器、家庭用洗濯機・洗濯乾燥機、外部モニターを含むテレビ機器で、9月1日からは電球や一部の照明器具に拡大されます。
こうした製品以外にも、ドラム式乾燥機、エアコン、調理家電、業務用冷蔵庫などを含む機器への適用の拡大が検討されていますが、適用時期は未定です。
化学品ラベリングの簡素化とデジタル化についての規則の改正
化学品のラベリングは、それらに関する基本的な情報を効率よく伝達することによって、人の健康や環境に対する有害な影響を低減することを目的としています。その改善に向けて、現在欧州委員会ではラベリング要件の簡素化やデジタル化に向けての新たな取組み(Chemicals-simplification and digitalization of labelling requirements)を推進しており、2021年7月にロードマップが公表されました。
背景および目的
本取組みは、2019年12月に公表された「欧州グリーンディール」 やそれを受けて策定され、2020年10月に公表された「持続可能な化学物質戦略」といった最近の大きな政策枠組みを背景とした具体的な動きの一つであると捉えることができます。
まず前者は地球規模での環境問題が深刻化する状況の中でのEUの新たな成長戦略ですが、2050年までにEU域内温室効果ガス排出ゼロ(気候中立:climate neutral)を目指すとしており、経済や生産・消費活動を地球の環境保全と調和させ、人々のために機能させることにより、温室効果ガス排出量の削減に努める一方、雇用創出とイノベーションの促進を図ります。
この中で示された政策の1つに「無毒な環境に向けた汚染ゼロ」があり、後者はそれを具体的に示した戦略です。
これは2020年11月24日付本コラム「無毒な環境に向けた持続可能性のための化学物質戦略の公表を受けて」4) にも解説されていますが、人の健康や環境保護を強化するため、化学物質に対する法的枠組みの簡素化及び強化を図り、エビデンスに基づく政策の策定を支援するための包括的なデータベースの構築や世界的に堅実な化学物質管理の模範を設定するための行動を通じてビジョンの実現を図るとしています。
こうした状況下で本取組みは、いくつかのカテゴリーの化学品や化学製品のラベリングの要件を簡素化・合理化することやデジタルラベリングの使用に向けて検討していくものです。対象とするのは、現在化学品や化学製品のラベリングを規定している下記3法令について、その内容の見直しを図ろうとするものです。
物質および混合物の分類、表示および包装に関する規則(EC)1272/2008(CLP規則、Regulation (EC)1272/2008 on Classification, Labelling and Packaging of substances and mixtures)
EUにおける化学品の危険有害性の分類、ラベリング、および包装に関する規則で、全7編62条8附属書よりなり、ラベリングに関しては、その第3編:ラベリングによる有害性情報伝達、第17~34条および附属書Ⅰ~Ⅵに規定されています。
2022年05月03日、欧州官報にて「物質及び混合物の分類、ラベル表示及び包装に関する欧州議会及び理事会規則(EC) No 1272/2008を、技術的及び科学的進歩への適合を目的として、改正する2022年02月16日付欧州委員会委任規則 (EU) 2022/692」が公布されました。
CLP規則として知られる規則(EC) No 1272/2008は、物質や混合物の評価についての新たな情報を規制に反映させるため、「技術的及び科学的進歩への適合(ATP)」という仕組みを設け、定期的に規則を改正・更新しています。
その一貫として、調和分類・表示(CLH)制度の対象物質が列挙されているCLP規則附属書VI第3部の表も、定期的に更新されています。改正規則の内容は、2023年12月01日から適用される予定です。
肥料製品規則(Regulation (EU) 2019/1009 laying down rules on the making available on the market of EU fertilising products)
EU域内で使用・流通される肥料製品の要件を定めたもので、従来の規則(EC)2003/2003 8) を廃し、これを置き替える形で2022年7月16日より施行されています。旧規則は化学肥料のみを対象としていましたが、この新規則では、家畜糞尿、食品廃棄物、下水汚泥等を利用した肥料製品も対象としています。
これらより回収された有効成分(特にリン)を肥料に活用することによって、これまでのリン鉱石等に拠っていた肥料原料の輸入依存度を下げ、利用可能な廃棄物等のリサイクルを促進し、環境負荷を低減しようとするもので、循環型経済構築のための施策の一つです。
全8章53条5附属書より成り、第4条でラベリングが義務付けられ、附属書Ⅲでその具体的要件が規定されています。本規則で対象とする肥料製品は全7カテゴリーに分類され、更に幾つかのカテゴリーではその下位にサブカテゴリーが設けられていますが、ラベリングはそのカテゴリー、サブカテゴリー毎に表示する項目が決められていることが特徴です。
参考情報
■ 欧州委員会、ユーザーへの情報提供とコスト削減のため、EUの肥料製品にデジタルラベルを提案
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