EU|炭素国境調整メカニズム証書販売収入の一部を国別拠出金としてEU予算へ

EU自己資金制度|System of own resource of EU

2021年12月23日、欧州委員会は決定(decision)「EU自己資金制度に関する決定(EU, Euratom)2020/2053を改正する理事会決定」の草案を公表し、2022年03月07日までの意見募集を開始しました。これはEUの資金調達や返済に係わる収支計画の一部を改正する内容で、EUとして自己資金をどう確保するのか、という観点で修正が入るものとなります。

背景

EUでは、新型コロナウイルス拡大による影響を筆頭に、様々な経済影響に対応するために、EU回復手段として位置づけられた「NextGenerationEU」という施策で、7500億ユーロの資金調達を行い、各種取り組みへ資金を投じています。

他方で、その返済コスト、利払いも含めた返済については、2058年まで、およそ30年間にわたって充分な収入が必要となることに触れています。この返済について、多年次財政枠組みの元での各主プログラム支出や投資手段を圧迫・削減するようなものであるべきではないとして、「返済に関連する予想される支出に相当する額をカバーすることを視野に入れ、十分な新たな自己資金の導入に向けて取り組む」ことに欧州委員会・理事会・議会の3機関で合意がなされています。それによると次のスケジュールが想定されています。

■ 2021年:新たな自己資金の提案(今回)
■ ~2023年01月01月:導入

改正内容

排出権取引から得られる収入の一部

■ 次の収入について、一律25%を適用

 - 指令2003/87/ECの第3d条、第10条及び第30d条に従って加盟国が行う排出枠のオークションから発生する収入
 - 関連する加盟国が以下のいずれかを適用する排出枠の年間量を乗じて算出した金額。
  ・指令2003/87/ECの第10c条で言及される暫定的な無償割当のオプション
  ・規則(EU) 2018/842の第6条(1)で言及される限定的なキャンセルの可能性
  ・指令2003/87/ECの第10d(4)条に言及されている排出枠を、当該指令の第10d(3)条に言及されている近代化基金のためのオークションへ使用

※これらの排出権がオークションにかけられたであろう年に共通のオークション・プラットフォームでオークションされた排出権の平均加重価格に適用

>指令2003/87/EC:EU内温室効果ガス排出取引スキーム創設指令
>規則(EU) 2018/842:パリ協定の下での約束を果たすための気候変動対策に貢献する加盟国による2021年から2030年までの拘束力のある年間温室効果ガス排出削減量に関する規則

炭素国境調整メカニズムから得られる収入の一部

■ 炭素国境調整メカニズムの証書の販売から得られる収入の75%に等しい一律のコールレートの適用

※「炭素国境調整メカニズム」は別途規則で創設予定となっていますが、2022年01月27日時点でまだ創設規則は公布されていません。

その他

■ [課税権の再配分に関する世界協定の実施に関する指令]に従って加盟国に再配分された多国籍企業の残余利益のシェアに15%の一律コールレートを適用

※2021年10月に、経済協力開発機構(OECD)とG20の「基盤浸食と利益移転に関する包括的枠組み」において、大規模多国籍企業の残余利益のうち、収益性の基準値である10%を超える25%を参加市場の管轄区域に配分することで合意がなされています(OECD/G20 IF Pillar 1 Agreement)。

炭素国境調整メカニズム

背景・目的

「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」は、欧州グリーンディールの2030年までに二酸化炭素の排出量を1990年比で55%削減し、2050年までにカーボン・ニュートラルを達成するという野心的な目標を達成するための手段の一つとして検討されています。焦点となっているのは、「カーボン・リーケージ(carbon leakage)」と表されるリスク、

「EUに拠点を置く企業が、緩い基準を利用して炭素集約的な生産を海外に移転したり、EU製品がより炭素集約的な輸入品に取って代わられたりすること」

が挙げられています。これは、EU以外の国でそれほど厳しくない環境・気候政策が採用されている状況を想定し、炭素排出を欧州域外にシフトさせる可能性がある動きに対応しようというものです。

仕組み

EUの輸入者:
-商品がEUの炭素価格規則に基づいて生産された場合に支払われるはずだった炭素価格に対応する炭素証書を購入。
-証書の価格は、CO2排出量1トン当たりのEU ETS排出枠の週平均オークション価格に基づいて算出。
-輸入者は域外生産者から入手した商品組み込み炭素排出量、または各商品のCO2排出量のデフォルト値を用いて購入する必要のある証明書の数を決定。
-輸入者は証明書が購入可能な国家機関に登録が必要。

-CBAMの対象となる商品をEUに輸入するためには、毎年5月31日までに、前年にEUに輸入された商品の数量と、その商品に含まれる組み込み炭素排出量を申告しなければならない。
-同時に、機関から事前に購入したCBAM証明書を引き渡さなければならない。

EU域外の生産者:
-第三国で輸入品の生産に使用された炭素の価格をすでに支払ったことを証明できれば、EUの輸入者はその費用を全額控除可能。

⇒ EU域外の生産者に生産プロセスのグリーン化を促すことで、カーボン・リーケージのリスクを低減するねらい。輸入者がEU ETS(EU排出権取引制度)の下で国内生産者と同じ炭素価格を支払うことを保証することで、EUで製造された製品と他国からの輸入品との平等な扱いを確保し、カーボン・リーケージを回避することが見込まれています。

対象外:
-EU-ETSに参加しているか、EUに連動した排出権取引システムを持っている欧州経済地域(EEA)からの輸入品

★制度の適用は段階的★

■ 最初|2023年から報告制度の適用開始 ⇒ 2026年に輸入者が財政調整額の支払開始

 カーボン・リーケージのリスクが高い商品・産業|鉄鋼、セメント、肥料、アルミニウム、電力

※2025年末までは財政調整額の支払なしに商品に組み込まれた炭素排出量を報告しなければならない。
⇒2026年からはEUの輸入業者は毎年、前年にEUに輸入した商品の数量と、その商品に含まれる組み込み炭素排出量を申告し、それに対応する量のCBAM証明書を引き渡す。

■ 以降|段階的に適用範囲拡大?

 以上、2022年01月時点での概略であり、まだ同内容でCABMを創設する規則は公布されておりません。

2022年01月27日時点 ステータス|規則案の第一読会審議中

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