解説米国ー大気浄化法ー国家有害大気汚染物質排出基準(NESHAP...

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法令の情報時期:2024年11月 U.S.C.確認 ページ作成時期:2024年11月

目的

目的

この解説の対象が属するチャプター85「大気汚染の防止と管理が構成する大気浄化法(Clean Air Act、CAA)」の目的は、国民の健康と国の大気資源の質を保護するために、大気汚染の防止と制御を達成するための国家的研究開発プログラムを立案し実施して、州政府および地方政府に技術的、加えて財政的支援を提供することである。

国家環境大気質基準(NAAQS)が一般的な大気汚染物質である、粒子状物質(PM)、地上オゾン、一酸化炭素、二酸化硫黄、二酸化窒素、鉛の6物質への規制を担っているのに対し、国家有害大気汚染物質排出基準(National Emission Standards for Hazardous Air Pollutants、NESHAP)は、NAAQSでカバーされていない有害大気汚染物質(Hazardous Air Pollutants、以下HAP)のためのものである。

概要

概要

米国法典42編チャプター85サブチャプターIパートAの§7412「国家有害大気汚染物質排出基準(NESHAP)」は、環境保護庁(Environmental Protection Agency、EPA)が、公衆衛生と環境を保護するためのHAPの規制に焦点を当てている。

NESHAPにおける主な規制内容は以下の6点となっている。

  1. HAP、排出源の定義付け:EPAは、人体または環境に有害であると考えられる特定の汚染物質のリスト、そしてそれらの排出源が公表し、このリストを定期的に見直し、更新している。
  2. 排出基準:EPAは、HAPの主要排出源に対して、最大達成可能制御技術(Maximum Achievable Control Technology、MACT)基準の採用を義務付けている。つまり、排出源区分ごとに基準として達成可能であると判断する排出削減のおおよそ最大が要求される。EPAはMACT基準を実施した後、EPAは残存する健康および環境リスクを評価し、追加の規制が課す場合もある。
  3. 許可とコンプライアンス:HAPの主要排出源は、操業許可を取得し、報告および記録保管要件を遵守しなければならない。
  4. 偶発的放出の防止:HAPの偶発的放出を最小限に抑えるための特定の対策が概説され、主要排出源には予防と緊急時の備えが義務付けられている。
  5. 公衆衛生および環境正義:EPAは、子供など影響を受けやすい人々や、汚染により不均衡な影響を受ける地域社会に対するHAPの影響を考慮する責務を負っている。
6. 執行および罰則:NESHAPは、以上の要件などへの遵守を強制する仕組みを規定し、違反に対する罰則を概説している。

注目定義

■ 「主要排出源」(Major source)

「主要排出源」(Major source)」とは、連続した地域内に位置し、共通の管理下にある固定排出源または固定排出源グループであって、総計で年間10トン以上の有害大気汚染物質または年間25トン以上の有害大気汚染物質の組み合わせを排出する、または排出する可能性があるものをいう。行政官は、大気汚染物質の効力、難分解性、生物蓄積の可能性、大気汚染物質のその他の特性、またはその他の関連要因に基づいて、前文で指定された量よりも少ない量、または放射性核種の場合は異なる基準を、主要排出源に対して設定することができる。(§7412(a)(1))

■ 「地域排出源」(Area source)

「地域排出源」(Area source)とは、主要排出源でない有害大気汚染物質の固定排出源をいう。本セクションにおいて、「地域排出源」という用語には、サブチャプターIIに基づく規制の対象となる自動車やノンロード車は含まれない。(§7412(a)(2))

■ 「固定排出源」(Stationary source)

「固定排出源」(Stationary source)とは、§7411条(a)に基づく用語と同じ意味をいう。(§7412(a)(3))

■ 「新規排出源」(New source)

「新規排出源」(New source)とは、本セクションに基づき、行政官が当該排出源に適用される排出基準を設定する規制を最初に提案した後に、建設または改築が開始される固定排出源をいう。(§7411(a)(4))

■ 「変更」(Modification)

「変更」(Modification)とは、主要排出源の物理的な変更、または運転方法の変更であって、当該排出源から排出される有害大気汚染物質の実際の排出量を極小量を超えて増加させるもの、または、以前は排出されていなかった有害大気汚染物質の排出量を極小量を超えて増加させるものをいう。(§7412(a)(5))

■ 「電気事業用蒸気発生装置」(Electric utility steam generating unit)

「電気事業用蒸気排出装置」(Electric utility steam generating unit)とは、販売用電力を生産する発電機に供給する25メガワット以上の化石燃料焚き燃焼装置をいう。蒸気と電気を併産し、潜在的な電気出力容量の3分の1を超え、25メガワットを超える電気出力を、販売目的で電力会社の配電系統に供給するユニットは、電気事業用蒸気排出装置とみなされる。(§7412(a)(8))

■ 「所有者または事業者」(Owner or operator)

「所有者または事業者」とは、固定排出源を所有、リース、運転、管理、監督する者をいう。(§7412(a)(9))

■ 「既存排出源」(Existing source)

「既存排出源」(Existing source)とは、新規排出源以外の固定排出源をいう。(§7412(a)(10))

■ 「有害大気汚染物質」(Hazardous air pollutant, HAPs)

「有害大気汚染物質」(Hazardous air pollutant)とは、本セクション(b)に従ってリストアップされた大気汚染物質をいう。(§7412(a)(6))

事業者が注意すべき内容

本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。
ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
有害物質、危険物

HAPとしてアセトアルデヒドなど189の化学物質がそのCAS番号と共にリストとして記載されている。このリストは適宜更新される。(§7412(b))

文書登録、文書管理、文書作成

EPAは、CAAのこのパートの下で、主要もしくは地域排出源のリストやその要件を発表し、一般からの意見や新しい情報に従って8年ごとに改定する。(§7412(c))

人の安全

EPAは、エリアごとに排出基準を設ける(§7412(c))。新規もしくは既存排出源(§7412(d)(3))の排出基準、または地域排出源(§7412(d)(5))の代替基準、コークス炉の排出基準(§7412(d)(8))、原子力規制委員会が認可した施設に対する基準(§7412(d)(9))の作成方法が記されている。(§7412(d))

機械安全、設備安全

§7412(d)「排出基準」では、排出源が排出削減を達成するためのコスト、および大気質以外の健康や環境への影響、エネルギー要件を考慮した上で、排出への可能最大限の対策、プロセス、方法、システム、技術、またはこれらの組み合わせを使用することで、達成可能であると判断した場合、当該有害大気汚染物質の排出削減の程度、つまり排出基準を設定している(§7412(d)(2))。

特定のカテゴリーもしくはサブカテゴリーに属する新規および既存の排出源に対しては、長官が達成可能とみなされる排出削減の最大限度(最大達成可能管理技術排出制限、maximum achievable control technology emission limitation、MACT)を決定するとしている。
この最大限度とは、(A) 既存の排出源のうち、最も優れた12パーセントが達成している平均排出制限値、または、(B) 30以上の排出源を有するカテゴリーまたはサブカテゴリーにおける、カテゴリーまたはサブカテゴリーにおいて、最も良好なパフォーマンスを示す5つの排出源が達成した平均排出制限値、が採用される(§7412(d)(3))。
文書登録、文書管理、文書作成

新規もしくは既存排出源を公表する期限や司法審査の期限などが記載されている。EPAは排出源のカテゴリーもしくはサブカテゴリーの基準を、一般からの意見や新しい情報に従って8年ごとに改定しなければならない。ただし、基準は発効日から90日の猶予期間があるとし、また管理官の判断によっては猶予期間が設けられている。(§7412(e))

人の安全

行政長官(または州)が排出源に対して最大達成可能管理技術排出制限を満たすと判断し決定しない限り、主要排出源の建設、改築および変更を行うことはできない。(§7412(g)(2))

文書登録、文書管理、文書作成

州などの管理者の判断で、設計、設備、作業慣行、または運用基準、またはそれらの組み合わせを公布することができる。(§7412(h))

資格、認定

新規もしくは既存排出源の遵守スケジュールやその決定方法が記載されている。既存に関しては発効日より3年間(1年間の延長可能)、新規の場合は8年間の間で、基準や要件の遵守期日が決定される。(§7412(j))

機械安全、設備安全

地域排出源に関しては、各州が本セクションの対象となるHAPの排出基準およびその他の要件、または(r)項に従う偶発的放出の防止および緩和要件の実施および施行(以前に付与された施行委任の見直しを含む)のためのプログラムを策定し、EPAの承認を得る。(§7412(k))

文書登録、文書管理、文書作成

EPAは、本セクション基づき、州に有用なガイダンスを公表する。

このガイダンスでは、(r)「偶発的放出の防止」項に従って、閾値量を超えてリストされた物質を製造、加工、取扱、または貯蔵するすべての施設の登録についても規定している。また、HAP排出の高リスクを有する排出源の審査のためのオプションプログラムも規定している。(§7412(l))
機械安全、設備安全

§7412(r)「偶発的放出の防止」項において、「偶発的放出(accidental release)とは規制対象物質またはその他の極めて有害な物質が、固定排出源から周囲の大気中に予期せず放出されること」をいう。各州もしくはEPAは、この項に基づき、要件を公布して、放出の監視、検出、検査、および制御のための機器の使用、操作、修理、交換、および保守を、この項で規定されている化学物質安全・有害性調査委員会(Chemical Safety and Hazard Investigation Board)と共に、研究および規制する。また、排出源の「最悪の放出シナリオ」などリスク管理計画に対する「施設外影響評価情報」を一般市民に公開する。(§7412(r))

文書登録、文書管理、文書作成

排出源の所有者または運営者は、排出源のHAPのリスト、考慮すべき要素や緊急時の備えなどを盛り込んだ「リスク管理計画」を作成し、危険度の評価、従業員訓練、定期報告書の提出など、偶発的放出を最小限に抑えるための特定の対策を実施しなければならない。排出源への罰則(罰金刑)も規定されている。(§7412(r))

目次

チャプター85 大気汚染の防止と管理
サブチャプターI プログラムと活動
パートA―大気質と排出規制

§7412. 有害大気汚染物質
(a) 定義
(b) 汚染物質のリスト
(c) 排出源カテゴリーのリスト
(d) 排出基準
(e) 基準と見直しのスケジュール
(f) 健康と環境を守るための基準
(g) 修正
(h) 作業実施基準およびその他の要件
(i) 遵守スケジュール
(j) 許可による同等の排出制限
(k) 地域排出源プログラム
(l) 州のプログラム
(m) 五大湖と沿岸水域への大気沈着
(n) その他の引当金
(o) 米国科学アカデミーの研究
(p) ミッキー・リーランド(Mickey Leland)国立都市大気有害物質研究センター
(q) 貯蓄引当金
(r) 偶発的放出の防止
(s) 定期報告書

基礎情報

法令(現地語)

Clean Air Act 42 U.S.C.§7412

法令(日本語)

大気浄化法(CAA)(国家有害大気汚染物質排出基準(NESHAP))1963年12月17日 (本稿執筆時点の最終改正:2011年1月4日)

公布日

1963年12月17日 (本稿執筆時点の最終改正:2011年1月4日)

所管当局

米国環境保護庁(Environmental Protection Agency、EPA)

作成者

株式会社先読

株式会社先読

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