解説米国 – TSCAリスク管理規則-塩化メチレン

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法令の情報時期:2019年03月(2024年05月改正版) ページ作成時期:2025年03月

目的

目的

TSCAリスク管理規則-サブパートB:塩化メチレンでは、健康への不当な危害のリスクを防止するため、塩化メチレン(CASRN 75-09-2)の製造(輸入を含む)、加工、商業における流通、使用、および廃棄に関する一定の制限を定める。(§751.101)

概要

概要

この規則は、米国人の健康への不当な危害のリスクを防止するため、塩化メチレン(CASRN 75-09-2)を対象としている。

小売業者は、重量比で1%未満は例外とし、2025年02月03日~2029年05月08日の間に段階的に、消費者向け塗料およびコーティングの除去などの目的で使用される塩化メチレン含有製品の塩化メチレンを、いかなる用途であっても、商業における流通を行うことが禁止される。

塩化メチレンまたは塩化メチレン含有製品を商業的に加工または商業における流通を行う者は、2024年12月04日より、いかなる用途であれ、出荷に先立ってまたは同時に、出荷先に、塩化メチレンにおける制限内容を書面で通知しなければならない。

注目定義

■ 「商業における流通」(Distribution in commerce)

「商業における流通」とは、§751.111および§751.113における小売業者を含まないことを除き、有害物質規制法(15 U.S.C. 2602)セクション3と同じ意味を持つ。

■ 「既存化学物質ばく露限界値」(Existing Chemical Exposure Limit (ECEL))

「既存化学物質ばく露限界値(ECEL)」とは、既存化学物質ばく露限界値であり、8時間の時間加重平均(TWA)として計算された空気中濃度をいう。

■ 「EPA短期ばく露限界値」(EPA STEL)

「EPA短期ばく露限界値(EPA STEL)」とは、EPAの短期ばく露限界値(Short Term Exposure Limit)のことで、8時間未満のばく露に基づく、化学物質の空気中濃度への職場ばく露に関するEPAの規制値をいう。

■ 「塗料およびコーティングの除去」(Paint and coating removal)

「塗料およびコーティングの除去」とは、物体、車両、建築物、または構造物を含む下地から、塗料、ワニス、ラッカー、落書き、表面保護剤、またはその他のコーティングを除去、緩め、または劣化させるために、化学物質を塗布すること、または別の方法を使用することをいう。

<<対象者>>

■ 「小売業者」

「小売業者」とは、電子商取引によるインターネット販売または流通を含め、化学物質または混合物を商業的に流通させる者、または最終使用者が入手できるようにする者をいう。少なくとも一人の最終使用者を顧客に持つ流通業者は、小売業者とみなされる。商業用または工業用の最終使用者あるいは事業者のみに、化学物質または混合物を商業における流通を行う者、あるいは入手可能にする者は、小売業者とはみなされない。

適用除外(対象外・猶予・免除等)

禁止

デミニマス閾値(De minimis threshold):このセクションに別段の定めがない限り、このセクションの禁止および制限は、1重量%未満を閾値とし、それ以下で塩化メチレンを含む製品には適用されない。

ただし、この規定は「消費者向け塗料およびコーティング除去剤(§751.105)」には適用されない。(§751.101)

事業者が注意すべき内容

本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。
ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
流通・供給の禁止

小売業者を含むすべての者は、2019年11月22日以降、消費者向け塗料およびコーティングの除去を目的として、塩化メチレン含有製品を含む塩化メチレンを、商業的に流通することが禁止されている。(§751.105)

制限、限定

§751.107は、§751.105または§751.109(a)で言及されている塗料およびコーティングの除去用途以外の消費者向け(§751.105)、工業用または商業用(§751.109(a))としての塩化メチレンの製造(輸入を含む)、加工、および商業における流通に、適用される。

ただし、TSCA第12条(a)(1)(A)および(B)に記述された条件を満たす輸出専用としての塩化メチレンの製造、加工、または商業における流通には適用されない。(§751.107)

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2025年02月03日~2029年05月08日以降、§751.107に記載された例外を除き、いかなる用途であっても、塩化メチレン含有製品を含む塩化メチレンに関する以下の事が禁止される。(§751.107)

  • 塩化メチレンを小売業者に商業における流通(利用可能にしておくことも含む):2025年02月03日以降
  • 塩化メチレンを小売業者が商業における流通(利用可能にしておくことも含む):2025年05月05日以降
  • 塩化メチレンの製造(輸入を含む):2025年05月05日以降
  • 塩化メチレンの処理:2025年08月01日以降
  • 塩化メチレンの流通(入手可能にしておくことも含む):2026年01月28日以降
  • 塩化メチレンの工業または商業利用:2026年04月28日以降
  • 米国航空宇宙局またはその請負業者による緊急時の産業または商業利用のための塩化メチレンの製造(輸入を含む)、加工、商業における流通:2034年05月08日以降
  • 芸術的、文化的、または歴史的に重要な木製家具、装飾品、建築用備品の再塗装のための塗料およびコーティングの除去を目的とした、塩化メチレンの製造(輸入を含む)、加工、商業における流通、または使用:2029年05月08日以降
  • 航空機、宇宙船、タービン用途における構造上および安全上重要な非構造用途の接着剤およびシーリング剤としての産業用または商業用途としての塩化メチレンの製造(輸入を含む)、加工、商業における流通、使用:2029年05月08日以降
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§751.105および§751.107によって使用における禁止が指摘されている場合を除き、輸出のための製造および加工などの過程での塩化メチレンの使用条件には「§751.109:職場における化学物質保護プログラム」が適用される。(§751.109(a))

適用としては、以下、13項目を行っている職場が対象となる。

    1. 製造(国内製造)
    2. 製造(輸入)
    3. 加工:反応物として
    4. 加工:配合、混合、または反応生成物への組み込み
    5. 加工:再包装
    6. 加工:リサイク、
    7. 実験用化学品としての産業および商業用途
    8. 航空機および宇宙船の安全上重要な、腐食に敏感な部品の塗料およびコーティング除去のための産業または商業用途
    9. 溶剤溶接用の接合剤としての産業または商業用途
    10. 加工助剤としての産業および商業用途
    11. プラスチックおよびゴム製品製造のための産業および商業用途
    12. 製造工程内で使用され、溶剤(塩化メチレン)が再生される配合または混合物の一部となる溶剤としての産業および商業用途
    13. 廃棄
ばく露

「§751.109:職場における化学物質保護プログラム」におけるばく露限度は以下の通りである。

2025年05月05日以降に塩化メチレンの使用が開始される場合は、このセクション(d)から(f)に準拠し、塩化メチレンが職場に持ち込まれてから4か月後より開始する。(§751.109(c))

  1. ECEL:連邦関係者以外の所有者または運営者は、2027年08月01日以降、8時間TWAとして空気あたり2 ppmを超える空気中の塩化メチレン濃度に曝される者がいないことを確保しなければならない。
  2. EPA STEL:連邦関係者以外の所有者または運営者は、2027年08月01日以降、15分間のサンプリング期間で測定した空気あたり16ppmを超える空気中の塩化メチレン濃度に曝される者がいないことを確保しなければならない。
人の安全

「§751.109:職場における化学物質保護プログラム」には、所有者もしくは運営者に対して、その他に
(b) 他の規制との関係を説明し、
(d)ばく露モニタリング、
(e) ECEL管理手順および計画の確立や実施、職場での塩化メチレンからのばく露の防止のための
(f) 呼吸用保護具、
(g) 皮膚の保護の管理、を求めている。(§751.109)

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塩化メチレンまたは塩化メチレン含有製品を商業的に加工または商業における流通を行う者は、2024年12月04日より、いかなる用途であれ、出荷に先立ってまたは同時に、塩化メチレンを出荷する企業に対して、このセクションに記載される制限を書面で通知しなければならない。

§751.111(d)に、書面に挿入する文書が記載されている。(§751.111)

文書登録、文書管理、文書作成

2019年08月26日以降にいかなる塩化メチレンも、製造(輸入を含む)、加工、または商業における流通を行う者は、2024年07月08日以降、以下の書類を、会社の本社または記録が作成された施設の一か所に保管しなければならない。

書類には、
(a) 一般記録、
(b) ばく露管理記録、
(c) 客観的データ、
(d) ばく露モニタリング記録、
(e) ばく露管理計画の入手可能性、
(f) 免除に関する記録、
(g) 木製家具、装飾品、建築用備品の再仕上げに関する記録、
(h) 最低記録保持期間、が含まれる。(§751.113)

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このセクションに記載されている期限付きの免除は、15 U.S.C. 2605(g)(1)に従って制定されている。ただし、「米国航空宇宙局による緊急使用に対する免除」が認められている。(§751.115)

美術的、文化的、または歴史的価値のある木製家具、装飾品、建築用備品の再塗装のための塗料およびコーティングの除去に関する暫定的な要件もある(§751.117)

目次

§751.101 全般

§751.103 定義

§751.105 消費者向け塗料およびコーティング除去剤に関する商業に向けた製造(輸入を含む)、加工、流通の禁止

§751.107 その他の製造(輸入を含む)、加工、流通、使用の禁止

§751.109 職場の化学物質保護プログラム

§751.111 下流への通知

§751.113 記録保持

§751.115 適用除外

§751.117 芸術的、文化的、または歴史的価値のある木製家具、装飾品、建築備品の再仕上げのための塗装および塗膜除去に関する暫定要件

基礎情報

法令(現地語)

Title 40/ Chapter I/ Subchapter R/ Part 751/ Subpart B—Methylene Chloride

法令(日本語)

TSCAリスク管理規則-塩化メチレン

公布日

2024年05月08日(2024年05月改正版)

所管当局

環境保護庁(Environmental Protection Agency、EPA)

作成者

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株式会社先読

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