EU|建物エネルギー性能改正指令を公布

建物のエネルギー消費と温室効果ガス(GHG)排出の削減が目的

2024年05月08日、欧州官報にて改正建物エネルギー性能指令(EU)2024/1275が公布されました。2024年05月28日に発効し、以降加盟国の国内法化されます。

強化された建物のエネルギー性能指令 (EPBD) は、EU全域の建築物のエネルギー使用量と排出量の削減を目的とし、2030年までにすべての新築建築物をゼロエミッションにする目標、及び2040年までに建築物の暖房システムにおける化石燃料の使用を段階的に廃止する目標などが盛り込まれています。

新規則はまた、REPowerEU計画に沿って太陽光発電の設置を義務付け、ヨーロッパのエネルギー自立性を高めます。

背景

建物は、世界的な温室効果ガス(GHG)排出の主要な原因で、またその長期的な性質から、代替が最も困難なもののひとつです。 

建物部門はEUで消費されるエネルギーの約40%を占め、エネルギー関連のGHG排出量の36%を占めています。約75%の建物はエネルギー効率が悪く、エネルギー改修率は年平均約1%にとどまっています。

欧州委員会は、2020年に欧州グリーンディールの一環として、建物のエネルギー性能指令の改訂を主要な取り組みとするリノベーション・ウェーブ戦略を発表しました。

リノベーション・ウェーブ戦略では、2030年までに既存建築物の改修率を少なくとも2倍にし、改修によって建物のエネルギー効率を向上し、再生可能エネルギーが増えるようにすることを目指しています。

改正EPBDは、2021年12月15日に、2030年のGHG排出削減目標(1990年比で少なくとも55%削減)を達成するための政策パッケージ「Fit for 55」の一環として提案されました。

また、改正EPBDは、2022年05月のREPowerEU計画の一環として、建物への太陽エネルギーの導入に関する要素がさらに追加されました。

概要

改正規則の概要は以下のとおりです。

1.エネルギー性能の向上義務

  • 非居住用建物については改修率で評価:2030年までにエネルギー性能の最も低い建物の16%以上、2033年までに26%以上を改修。
  • 居住用については、エネルギー消費率で評価:加盟国は、住宅の一次エネルギー使用量を平均して2030年までに16%、2035年までに20~22%のエネルギー消費削減するよう独自の国内計画を立てる。居住用は削減量の55%はエネルギー性能の最も低い建物の改修によって達成する必要があります。
  • 加盟国は、歴史的建造物や別荘など、特定のカテゴリーの住宅および非住宅の建物をこれらの義務から免除できる可能性があります。
  • 共通の基準を持つ共通のEUテンプレートに基づいた改善されたエネルギー性能証明書(EPC)は、市民に情報を提供し、EU全体で資金調達の決定を容易にします。

2. 建物の改修の波を支援するための措置

  • 各国に建物改修計画を策定の義務付け:建物ストックの脱炭素化に向けた国家戦略と、資金調達、訓練、熟練労働者の誘致など、残っている障壁への対処方法を定めます。
  • 各国に建物改修パスポート制度の策定の義務付け:建物所有者が段階的にゼロエミッションの建物に改修する際の指針を定めます。
  • ワンストップショップを設立義務:住宅所有者、中小企業、改修バリューチェーンのすべての関係者が、専用かつ独立したサポートとガイダンスを受けられるようにします。

3. 化石燃料を使用するボイラーを段階的に廃止

  • 化石燃料のみを使用したボイラーの設置に対する公的資金援助を2025年01月01日以降禁止。
  • 2040年までに化石燃料で動くボイラーを完全に廃止を目指し、冷暖房における化石燃料の段階的廃止に関する具体的な措置を策定する必要があります。

4. 新築建物のゼロ排出基準

化石燃料による敷地内排出をゼロにすることが義務付けられます。  

  • すべての新築の住宅および非住宅建築物について、2030年01月01日まで
  • 公有建物については 2028年01月01日まで

特定の免除の可能性があります。

5. 持続可能なモビリティの導入の促進

新築・改修中の建物は非居住用、居住用ともに、駐車スペースを有する場合、電気自動車用の充電インフラとして電気配線を準備することが加盟国に義務付けらます

6. 太陽エネルギー設備の設置の義務

太陽エネルギー設備の設置は、新しい建物の標準になります。

設置期限は、新築の建物の場合、有用な床面積が250平方メートル以上の公共施設、非居住用建物は2026年12月末年まで、居住用建物は2029年12月末まで、既存の建物は床面積などに応じて定められています。

目次

 第1条 主題
   第2条 定義
   第3条 国家建物改修計画
   第4条 建物のエネルギー性能を計算する方法論の採用
   第5条 最低限のエネルギー性能要件の設定
   第6条 最小エネルギー性能要件のコスト最適レベルの計算
   第7条 新築建物
   第8条 既存建物
   第9条 非住宅建築物の最低エネルギー性能基準と住宅建築ストックの段階的改修の軌道
   第10条 建物の太陽エネルギー
   第11条 排出ゼロの建物
   第12条 改修パスポート
   第13条 技術建築システム
   第14条 持続可能なモビリティのためのインフラ
   第15条 建物のスマート化準備
   第16条 データ交換
   第17条 財務インセンティブ、スキル、市場障壁
   第18条 建物のエネルギー性能に関するワンストップショップ
   第19条 エネルギー性能証明書
   第20条 エネルギー性能証明書の発行
   第21条 エネルギー性能証明書の表示
   第22条 建物のエネルギー性能に関するデータベース
   第23条 検査
   第24条 暖房システム、換気システム、空調システムの検査に関する報告書
   第25条 独立した専門家
   第26条 建物専門家の認定
   第27条 独立制御システム
   第28条 レヴュー
   第29条 情報
   第30条 コンサルテーション
   第31条 技術進歩への附属書 Iの適応
   第32条 委任行使
   第33条 委員会手続き
   第34条 罰則
   第35条 国内法化
   第36条 廃止
   第37条 発効と適用
   第38条 宛先

附属書 I  建物のエネルギー性能を計算するための共通の一般枠組み
附属書II  国家建物改修計画のテンプレート
附属書III 第7条(2)に基づく新築建物のライフサイクルGWPの計算
附属書IV 建物のスマート化準備を評価するための共通の一般フレームワーク
附属書V  エネルギー性能証明書のテンプレート
附属書VI エネルギー性能証明書の独立制御システム
附属書VII 建物および建物要素のエネルギー性能要件のコスト最適レベルを特定するための比較方法論フレームワーク
附属書VIII 改修パスポートの要件
附属書IX 廃止された指令とその後の改正の一覧 / 国内法への移行期限と適用日
附属書X 訂正表

参考情報

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