世界各国のコンプライアンス情報収集・調査対応 株式会社先読

創業者の一筆

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株式会社先読は、海外コンプライアンスに悩む様々な分野・業種の企業担当者の実際の声と、海外コンプライアンス支援に取り組む多様な支援事業者の存在の関係性からみる<業界の実態からの理由>と、創業者の政策や法令、さらには政治などに関係する<「射程」の問題への関心>を背景に創設された会社です。

業界の実態からの理由

1.環境分野におけるコンプライアンス・サポートの揺らぎ

■ 「どこまでが」環境規制か
■ 見る人や文脈に由来するこの「揺らぎ」は、誰にどのような影響を持つのか

→ 「無理に対応規制分野の枠を事前に設けないこと」と「様々な分野に共通して取り組むことができ、説得力のあるアウトプットを出す効果的なアプローチを採用すること」を軸にするアプローチへ
→ 各クライアントの相談事項にあわせた柔軟な仕様の提案・調整でステレオタイプな対応を回避

2.多種多様なコンプライアンス支援サービスの乱立

→「多種多様な支援サービスを提供する事業者と補完しあうことを前提に対応する」アプローチへ
→ 積極的な協力体制による「専門性」の相互補完でより高品質なアウトプットへ

「射程」の問題への関心

1.「射程」の問題

■ 特に政策、法令・法令案、そして政治における「射程」の問題
- 「誰が」、「何を」、「どこまで」、「なぜ」、考えているのか?
- その差異がある場合、それは何に起因するのかという問題

(例)

  • 同じ製品でも、2年後までの製品コンプライアンスを考えて情報収集や対応を検討する企業と、10年後までの製品コンプライアンスを考える企業では、大きな違いが生じる
  • コンプライアンス対応の初動となる情報収集やそれを担当する人員配置から異なってくる
  • 他方、将来的に厳しい要件が課されることを見越してより高水準の要件遵守を達成し、情報表示する商品は、そうでない製品に比べて価格は高くなるかも知れない
  • 但し、それもどこまで考慮に入れるかで評価の仕方は変わってくる
  • 10年間のコンプライアンス対応費用予測も含めた製品価値の評価をすると、逐次的に2年毎に対応検討する企業と比べ、中長期的な評価ではむしろ優位にみなされるかもしれない
  • それは効率的・効果的な情報収集・コンプライアンス対応体制と、その継続的運用による経験・ノウハウの蓄積に拠るところが大きいと見込まれる
  • 10年間の中長期戦略を立てたとしても、年毎あるいは数年毎の戦略検討はどの企業も行うため、新たな規制が登場した際にも過剰に振り回されることはないだろう
  • むしろ、効果的な体制とその運用実績があるほうが、基本的には優位に立ち回れる見込み
  • 但し、このあたりはどこまでのことを考慮に入れ、どのような目的で体制を整え、経験を蓄積していくかにも左右される

(「射程」の問題を様々な角度から捉える)
■ 時間的な射程:何年後まで考えるのか(一年後なのか、数年後か、十数年、数十年か、過去の要素はどれくらい考慮に入れるか、など)
■ 主体的な射程:ほかには、誰のことまで考えるのか(企業戦略を考える際、自社の特定の部署についてか、自社全体か、あるいは関係会社含めてか、さらにサプライチェーン上の会社も含めるのか、など)
■ 空間的な射程:どのくらいの地理的範囲を考えるのか(現地での事業の影響を考える際、拠点の敷地内までか、その周辺の自然環境までか、村落や市町村まで含めるか、州や省、ひいては国レベルまで考えるのか、など)
■ 対象の射程:さらには、何の要素まで考えるのか(考慮に入れるのは、資金だけでよいか、人的リソースや彼らが抱える可処分リソースも考慮すべきか、在庫状況はどうか、設備の状況はどうか、など)

 

2.「射程」の差異の問題

■ 「射程」の差異は何をもたらし、何に起因するのか
■ 「射程」の問題は正当化されうるのか、あるいは選択肢の提供は可能か、など

(例)

  • ある国では2030年までの目標を軸に政策を立て、法案を整備し、関係各所へAという規制内容の検討について情報共有し、検討をしている。
  • 他の国では2025年までの状況改善を軸に計画を立てて、政策や法令改正に取り組み、Bという規制内容の検討について検討を続けている。
  • この2つのケースでは、取り得るアプローチも規制内容も、関係各所への説明の仕方もそれらの根拠も、異なっていることが少なくない。
  • 同じ分野の規制であっても異なる規制内容、アプローチ、検討状況が発生します。
  • さて、それは何故発生し、何に影響を及ぼすのだろうか。
  • その原因にも多くの場合、「射程」の問題、つまり前提の置き方の問題がある。

Commentary

このように、「射程」の問題といっても、様々な側面がありますが、企業コンプライアンスに携わる担当者がこれを読むと、これらの射程の前提が少しでも変わると、検討する戦略が大きく変わりうることは無意識のうちに理解していることでしょう。

 

では、政策や法令・法令案について考えるとどうなるでしょうか?
冒頭で触れた<「誰が」、「何を」、「どこまで」、「なぜ」、考えているのか>という内容と、先述の様々な角度からみた「射程」の話を頭に入れて考えてみましょう。

 

まず、政策を新たな法令を検討したり、既存の法令の改正を検討する手段として捉えることとします。
(政策を制度として捉える文脈もありますが、通常、政策に基づいて新たな法令案の検討や改正案の検討、非法令文書としての戦略や計画の公表が行われるため、ここでは政策は手段的なものと捉えます。)
では、政策の射程は誰がどうやって決めるのでしょうか?その根拠はどこに由来するのでしょうか?

 

政策の段階では、まだ明確に射程が明記されていない場合もあります。
例えば、法令案が公表されてはじめて、事業者がいつまでに何が求められることになりそうかが判明する場合などです。このケースは決して少なくありませんが、では、その法令案の射程は誰がどうやって決めるのでしょうか?その根拠はどこに由来するのでしょうか?

 

ポリシーメーカーでしょうか?法形成過程で関与する法律専門家でしょうか?同じく関与する産業界関係者でしょうか?
その他の所管行政官庁でしょうか?政治家や議会でしょうか?国民でしょうか?

 

私たちはもう意識的か無意識的かに係わらず、射程の置き方が選択に大きな影響を及ぼすことを知っています。そしてそれは、政策や法令ならなおのことです。

企業コンプライアンスを考える際、「誰がいつまでに何をしなければならないか」という関心が中心となります。であるならば、その情報の根幹の一つとなる「射程の根拠」は、気になる論点の一つではないでしょうか。

勿論、多くの関係者が関与して準備する政策や法令案は、誰かが決めたからそれが反映されるという単純なものではなく、様々な主体の協議・意見調整が入った産物でしょう。しかしながら、この「射程」の問題について、誰が主体的に影響を及ぼしているのか、影響が大きいのは誰で、それはなぜか、どういう仕組みや流れなのかという点は、充分に解明されていない点に思えます(基本は事例調査のアプローチが必要)。学術的な先行研究の精査は未実施であるため、もしかすると適切な研究成果があるのかもしれませんが、少なくとも企業コンプライアンス実務の担当者から、調べてすぐに見える範囲にそのような情報はないように思えます。先行研究の検討も後述のメルマガで少しずつ触れていければと夢想しているところです。

 

企業コンプライアンスの文脈では、影響力の大きい主体や仕組み・流れが少しでも明確になれば、産業界が自身の意見を反映してもらうために誰にどのように働きかけたらよいか、効果的な情報収集はどうあるべきかという戦略も変わってきます。前者は一般にアドボカシーと呼ばれる活動で、政策や法令案はこのように調整してほしいという形で業界の意見の取り入れ・反映を求める活動です。その政策や法令案に賛成/反対したり、盛り込んで欲しい内容や削除して欲しい内容を伝えるものですが、「射程の根拠」に係わる政策実務上の仕組みや流れについて、少しでも明らかになれば、その活動の一助となるのではないでしょうか。

 

しかし他方で、この「射程」の問題には難しい論点がいくつも潜んでいます。例えば次のようなものです。
■ 「射程」と「経路依存性」:過去の選択や関係者などが現在の「射程」の問題に与える影響とそれが積み重なることによる影響。(フィードバック・メカニズム)
■ 「射程」と「選挙」:民主主義のもとでの選挙制度は、国民/市民から「射程」の情報を収集するのか(しているのか、すべきなのか など)。
■ 「射程」と「正当性」:いわば前提ともいえる射程の置き方はどのように正当性を得ているのか。あるいは正当性はおくことができるのか。
■ 「射程」と「問題の存在意義」:そもそも「射程はこうあるべき」と言及できるものなのか。政治的な意見調整の帰結で主に現れるものであるならば「射程」と「選挙」の問題は重要であるかもしれないし、逆に、それ以外に主に由来するならば「正当性」の話になるかもしれない。
■ 「射程」と「世代間衡平」:世代間衡平の問題を考えるとき「射程」の問題はどのように影響を及ぼすのか、など。

ここまで来ると、「射程」の問題は非常に難解な問題に思えてきます。

 

ですが、政策や法令案の前提の問題だと考えれば、それだけの論点が含まれていてもおかしくないと考える側面もあります。
見る人が見れば、これはエリート主義と反エリート主義やポピュリズム(大衆主義)の話では?と読むかも知れませんし、別の人がみれば政策決定や形成過程の正当性の話では?と読むかも知れません。

それはそれで非常に興味深いですが、まずは企業コンプライアンスの文脈に戻りましょう。

 

これは、企業のコンプライアンス担当者から政策や法令案を眺めるときの前提に関する話です。

そこに私の関心があり、株式会社先読の創業にも関与している、ということになります。
この「射程」の問題を意識して、世界各国の国・地域の差異を考察すると、企業コンプライアンスという文脈で政策や法令案を眺めるときの景色が少し違って見えます。
政策や法令案とは、ある国、地域について、この先は「こうあってほしい」、「こうあるべきだ」、「こうしたい」という要求であり、要望であり、そして時にそれは願いでもあります。

「射程」の問題は、その前提の置き方の話です。
世界の各国・地域における各主体が、どういう前提をもって、その要求・要望・願いを出すのか、その差異は何なのか、何に由来するのか、考察するには実に多くの要素を慎重に検討する必要がありますが、きっとそれは有意義な試みとなると考えております。

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執筆候補のテーマ:
■ 情報の価値の一般論と様々な前提のもとでの情報価値
■ 情報の価値の変遷
■ 企業コンプライアンスの文脈における情報価値
■ 企業コンプライアンスを前提に「政策学」を眺める
■ 企業コンプライアンス支援と専門性の誤解
■ 経路依存性という既知の秘匿要素
■ 一筆思索:「射程」と「経路依存性」
■ 一筆思索:「射程」と「選挙」
■ 一筆思索:「射程」と「正当性」
■ 一筆思索:「射程」と「問題の存在意義」
■ 知人曰く:「技術」と「技能」
■ 知人曰く:新しい、極小の世界のフロンティア

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