製造、輸入、加工、商業上の流通および使用の禁止も
2024年08月08日、連邦官報にて、有害物質規制法(TSCA)に基づき、1-ブロモプロパン(1-Bromopropane (1-BP))を対象とするリスク管理規則の草案が公表されました。09月23日まで意見募集期間が設けられています。
概要・背景
■ 1-BPについては、TSCAのもとでリスク評価が行われ、2020年08月の評価で示された人の健康を損なう不合理なリスクに対処する必要性が認識されていた。
■ 1-BPは、接着剤およびシーリング剤、断熱材など、様々な職業および消費者用途で広く使用される溶剤として知られている。
■ 環境保護庁(EPA)では、神経毒性、急性および慢性の吸入ばく露や経皮ばく露による発達毒性、慢性の吸入ばく露による発がん性など、1-BPへのばく露に関連する重大な健康への悪影響により、1-BPが健康を害する不合理なリスクをもたらすと判断していた。
■ 今回の規則案は、そのリスク評価を受けて、リスクを適切に管理するための各種措置を含む内容となっている。
注目すべき内容
製造、加工、商業上の流通および使用の禁止
注目すべき内容としては、各種禁止事項が挙げられます。§751.805に規定される禁止事項は、次のものに適用されます。
§751.805(a)の要点整理
■ 消費者用途の製造、加工および商業上の流通(建物または建設資材(断熱材)用途は除く)
■ 工業用途または商業用途の製造(輸入を含む)、加工、商業上の流通(§751.807(a)および§751.809(a)で扱われる使用条件を除く)
■ 工業用途または商業用途の使用(§751.807(a)および§751.809(a)で扱われる使用条件を除く)
禁止事項の要点整理
いつから | 誰が | 1-BPについて何を禁止 | 例外 |
官報公布6ヶ月後 | 全ての者 | (a)の用途での製造、輸入 | |
官報公布9ヶ月後 | 全ての者 | (a)の用途での加工(1-BP含有製品を含む) | |
官報公布12ヶ月後 | 全ての者 | 小売業者へ商業上の流通、利用可能にすること | 断熱材用途 |
官報公布15ヶ月後 | 小売業者 | 商業上の流通、利用可能にすること | 断熱材用途 |
官報公布15ヶ月後 | 全ての者 | (a)の用途のための商業上の流通、利用可能にすること | |
官報公布18ヶ月後 | 全ての者 |
次の用途のために、工業用途で、または商業用途で使用すること(1-BP含有製品を含む) ● 工業用途または商業用途の使用(§751.807(a)および§751.809(a)で扱われる使用条件を除く) |
職場化学品保護プログラム(WCPP)
■ 職場化学品保護プログラム(WCPP)を規定する内容には、ばく露限界値の設定、モニタリング要件、モニタリング結果の通知要件、規制区域や呼吸器、個人用保護具に関する指定、ばく露管理のための方法や計画について、関連する情報提供やトレーニングについて、など各種要件が規定されています。
その他、手袋に関連する要件を定める「規範的管理」要件や、WCPPへの準拠を自ら証明する「自己認証要件」、関連記録の保持を求める要件などが規則案に盛り込まれています。
改正対象箇所
40 CFR Part 751
§751.5 定義
Subpart I—1-Bromopropane
§751.801 一般
§751.803 定義
§751.805 製造、加工、商業上の流通および使用の禁止
§751.807 職場化学品保護プログラム(WCPP)
§751.809 規範的管理
§751.811 自己認証要件
§751.813 川下通知
§751.815 記録保持要件
参考情報
有害物質規制法(TSCA)とは?
米国の「有害物質規制法」、通称「TSCA」は、化学物質の管理・規制に関する米国の国レベルの基本的な法令の一つです。日本の化審法、EUのREACH規則と並べて、あるいは比較して言及されたりもします。 合衆国法典では第15編、第53章に収載されており、全部で6つの大項目から構成されています。このうち、日本の事業者が関心が高く、よく相談が持ち込まれる大項目は、「有害物質の管理」、「複合木材製品のホルムアルデヒド基準」です。
目次
SUBCHAPTER I 有害物質の管理 SUBCHAPTER II アスベスト有害性緊急対応 SUBCHAPTER III 屋内ラドン削減 SUBCHAPTER IV 鉛ばく露低減 SUBCHAPTER V 健康的な高いパフォーマンスの学校 SUBCHAPTER VI 複合木材製品のホルムアルデヒド基準
注目される制度
TSCAのもとでは様々な規制が敷かれていますが、事業者からの相談・問い合わせが多く、注目度が高い制度には次のものが例として挙げられます。
新規化学物質の製造前届出制度
■ 第5条(§2604)(a)(1)に基づき、新規化学物質の製造・輸入・加工については、90日前までにEPAへの届出が必要
化学物質の試験制度
■ 第4条(§2603)に基づき、EPAが人の健康や環境へ不当なリスクをもたらすと判断した場合には、化学物質や混合物の製造、商業流通、加工、使用、廃棄、またはそのような活動の組み合わせに関連して、関連事業者に試験の実施を要求することができる。関連規則に基づき、規則や同意命令などの形で発出される。
重要新規利用規則(SNUR)
■ 第5条(§2604)(a)(2)に基づき、化学物質の使用が、通知が必要とされる重要新規利用(Significant New Use)であるかどうかをEPAが判断し、必要に応じて規則を設ける。特定されたものについて、製造者・輸入者や加工業者は、当該新規利用を開始する90日前までに関連規則に基づいた通知(SNUN)が必要とされる。
化学物質のリスク評価制度に基づく個別の規制
■ 第6条(§2605)に基づき、EPAが化学物質または混合物の製造、加工、商業流通、使用、廃棄、またはそのような活動の組み合わせが、人の健康や環境へ不当なリスクをもたらすと判断した場合には、規制を定める規則の検討を行う。
既存化学物質の管理制度
■ 第8条(§2607)に基づく記録保持・報告要件は、インベントリー制度としても知られている。EPAが化学物質についての情報をインベントリーとして管理するために、事業者には情報の提出や更新が求められている。
輸出入規制
■ 輸出(§2611)や輸入(§2612)についても規制が敷かれているが、特に注目されるのは、輸入時における「TSCA証明」である。詳細は規則で規定されているが、輸入化学物質が TSCA に準拠していることを証明する方法(positive certification)と、TSCAの適用外であることを証明する方法(negative certification)が存在する。
複合木材製品規制
■ 米国内で販売、供給、販売促進、製造、輸入される複合木材製品は、TSCA Title VI適合と表示されなければならない。これらの製品には、広葉樹合板、中密度繊維板、パーティクルボード、およびこれらの製品を含む家庭用品やその他の完成品(finished goods)が含まれる。自主的合意基準、第三者認証制度など要件遵守保証のための制度が導入されている。
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