2024年版 TSCAリスク評価規則
2024年05月03日、米国連邦官報で、有害物質規制法(TSCA)に基づく化学物質のリスク評価の実施過程を強化する規則が公布されました。新たな内容は2024年07月02日より施行されます。
注目すべき内容
■ リスク評価に際して、「すべての使用条件(all conditions of use)」を考慮すること
- 例えば、702.37(b)(4)における「EPAは使用条件をリスク評価の範囲から除外しない」などの明確化が図られている。リスク評価は、化学物質が製造、加工、流通、使用、および廃棄されることが既知であり、意図され、 合理的に予測される状況について実施される。
- TSCA第3条(4)の意味における「使用条件」を構成する活動)に対して実施されなければならない。
- EPA は、各リスク評価について、「使用条件」の法定定義における「長官(管理者、この場合はEPA)の判断により(as determined by the Administrator)」という文言に沿って、合理的に入手可能な情報を分析し、事実、当局の専門知識、および専門的判断を適用して、当該化学物質の使用条件を決定する。
-EPAは、化学物質が不純物としてあるいは成形品内に少量しか存在しないような、いわゆる「デミニマス」用途をリスク評価の対象から除外すべきであるとする意見も受け取ったが、個々には低いばく露量であっても、総体として不合理なリスクの一因となる可能性があるとして、この意見は採用されなかった。
-TSCAは、使用条件を「決定」する権限を EPA に与えているが、化学物質に関連する既知の状況(例:副産物としての化学物質の生産、不純物や成形品内のような微量または極微量の化学物質の存在など)をリスク評価の対象から除外する裁量をEPAに与えていない。
■ リスク評価に際して、「すべてのばく露経路(all exposure pathways)」を考慮すること
- EPAが使用条件下において化学物質に関連するすべてのばく露経路と経路を評価することを確実にするための規制変更が含まれる。
■ リスク評価開始後6ヵ月以内に最終的な評価範囲を公表するという法定要件は継続
■ 「不合理なリスク(Unreasonable risk)」は引き続き定義を設けない
- 各リスク評価には本質的に固有の性質があり、EPA はこの判断をケースバイケースで行う必要があるためとされた。
■ 職業ばく露の考慮の明確化
- TSCAリスク評価の一環とし て労働者へのばく露とリスクを十分に考慮することを確実にする変更が加えられている。
- ただし、関連データは古くなっているため、関係者にデータや情報の提供を求めていくという。
- OSHA規制との重複も関係者より指摘されたが、EPAは、OSHAとは定期的に連携しており、重複のためにTSCAで規定を設けないという姿勢は本規則でも採用していない。
など
背景
■ EPAは2017年にリスク評価の枠組み規則を確定させていましたが、その規則は法廷で争われていました。
■ 第9巡回区連邦控訴裁判所は、規則のいくつかの条項を再考のためEPAに差し戻しました。
■ 今回のEPAの最終規則には、裁判所の判決に対応するための修正に加え、TSCAリスク評価に関するEPAのプロセスを改善するための以下のような変更が含まれています。
ー 同じ化学物質に対する複数のばく露経路(例えば、大気中や水中など)や、EPAが科学的情報を有している場合に は複数の化学物質による複合リスクなど、現実のばく露シナリオを考慮すること
ー リスク評価は包括的な範囲であり、使用条件やばく露経路を除外しないという要件
ー EPAがリスク評価においてすべての労働者に対するリスクを適切に考慮するための明確化
ー 他の連邦省庁による国家安全保障または重要インフラのために必要とされる可能性のある化学物質 の用途を考慮すること
ー EPAは、リスク評価を実施するために入手可能な最善の科学を引き続き使用し、決定は科学的証拠の重みに基づき、リスク評価は連邦およびEPAの両指針に従って専門家によるレビューを受けることを保証すること
ー リスク評価が、潜在的リスクが低いと予想される使用条件にも焦点を当て、法令が要求する期間内に確実に完了できるように、様々な種類とレベルの分析を可能にする、化学物質固有の目的に適合した方法の検討
ー リスク評価は、個々の化学物質の使用条件を個別に評価するのではなく、化学物質に関する単一のリスク判定にまとめるという明確な要件を設け、不合理なリスクに大きく寄与する使用方法に関するコミュニケーションを改善すること
ー 透明性を向上させるため、EPAが適用範囲とリスク評価文書を改訂するかどうか、またどのように改訂す るかに関する新たな手順と基準を設けること
ー EPA が主導するリスク評価に関連する工程と予定表との整合性を高めるとともに、EPA が、当該化学物質に関する必要な追加情報を収集するために、法律に規定される権限を使用できるようにするため、化学物質のリスク評価に関する製造者の要望の提出と審査の工程を調整すること
ー リスク評価は、リスク評価に関連する潜在的にばく露される可能性のある集団や影響を受けやすい集団 を特定する際に、過重な負担を強いられている地域社会を明示的に考慮することを求める要件
改正対象箇所
■ 40 CFR Part 702
§702.31 一般規定
§702.33 定義
§702.35 リスク評価対象の化学物質
§702.37 評価要件
§702.39 リスク評価要素
§702.41 ピアレビュー
§702.43 リスク評価アクションおよびタイムフレーム
§702.45 リスク評価に関する製造者要請書の提出
§702.47 機関間協力
§702.49 一般に利用可能な情報
参考情報
有害物質規制法(TSCA)とは?
米国の「有害物質規制法」、通称「TSCA」は、化学物質の管理・規制に関する米国の国レベルの基本的な法令の一つです。日本の化審法、EUのREACH規則と並べて、あるいは比較して言及されたりもします。 合衆国法典では第15編、第53章に収載されており、全部で6つの大項目から構成されています。このうち、日本の事業者が関心が高く、よく相談が持ち込まれる大項目は、「有害物質の管理」、「複合木材製品のホルムアルデヒド基準」です。
目次
SUBCHAPTER I 有害物質の管理 SUBCHAPTER II アスベスト有害性緊急対応 SUBCHAPTER III 屋内ラドン削減 SUBCHAPTER IV 鉛ばく露低減 SUBCHAPTER V 健康的な高いパフォーマンスの学校 SUBCHAPTER VI 複合木材製品のホルムアルデヒド基準
注目される制度
TSCAのもとでは様々な規制が敷かれていますが、事業者からの相談・問い合わせが多く、注目度が高い制度には次のものが例として挙げられます。
新規化学物質の製造前届出制度
■ 第5条(§2604)(a)(1)に基づき、新規化学物質の製造・輸入・加工については、90日前までにEPAへの届出が必要
化学物質の試験制度
■ 第4条(§2603)に基づき、EPAが人の健康や環境へ不当なリスクをもたらすと判断した場合には、化学物質や混合物の製造、商業流通、加工、使用、廃棄、またはそのような活動の組み合わせに関連して、関連事業者に試験の実施を要求することができる。関連規則に基づき、規則や同意命令などの形で発出される。
重要新規利用規則(SNUR)
■ 第5条(§2604)(a)(2)に基づき、化学物質の使用が、通知が必要とされる重要新規利用(Significant New Use)であるかどうかをEPAが判断し、必要に応じて規則を設ける。特定されたものについて、製造者・輸入者や加工業者は、当該新規利用を開始する90日前までに関連規則に基づいた通知(SNUN)が必要とされる。
化学物質のリスク評価制度に基づく個別の規制
■ 第6条(§2605)に基づき、EPAが化学物質または混合物の製造、加工、商業流通、使用、廃棄、またはそのような活動の組み合わせが、人の健康や環境へ不当なリスクをもたらすと判断した場合には、規制を定める規則の検討を行う。
既存化学物質の管理制度
■ 第8条(§2607)に基づく記録保持・報告要件は、インベントリー制度としても知られている。EPAが化学物質についての情報をインベントリーとして管理するために、事業者には情報の提出や更新が求められている。
輸出入規制
■ 輸出(§2611)や輸入(§2612)についても規制が敷かれているが、特に注目されるのは、輸入時における「TSCA証明」である。詳細は規則で規定されているが、輸入化学物質が TSCA に準拠していることを証明する方法(positive certification)と、TSCAの適用外であることを証明する方法(negative certification)が存在する。
複合木材製品規制
■ 米国内で販売、供給、販売促進、製造、輸入される複合木材製品は、TSCA Title VI適合と表示されなければならない。これらの製品には、広葉樹合板、中密度繊維板、パーティクルボード、およびこれらの製品を含む家庭用品やその他の完成品(finished goods)が含まれる。自主的合意基準、第三者認証制度など要件遵守保証のための制度が導入されている。
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