手数料支払いの対象者予備リスト
2024年12月31日、環境保護庁(EPA)は、米国連邦官報を通じて、有害物質規制法(TSCA)のもとで、高優先度物質5物質のリスク評価手数料支払い義務対象となる事業者予備リストを公表し、03月03日までの意見募集を開始しました。関連5物質は12月18日に、正式にリスク評価を開始する高優先度物質に指定されました。
関連物質と予備リスト
物質 | CAS No. | 予備リスト |
Acetaldehyde | 75-07-0 | 予備リスト |
Acrylonitrile | 107-13-1 | 予備リスト |
Benzenamine | 62-53-3 | 予備リスト |
Vinyl chloride | 75-01-4 | 予備リスト |
4,4′-Methylene bis(2-chloroaniline) | 101-14-4 | 予備リスト |
概要
■ 手数料の支払い関係して、対象物質のいずれかについて、過去5年間に製造または輸入した者は、EPAに申告が必要です。(40 CFR 700.45(b)(5))
■ 申告は、化学物質情報提出システム(CISS)報告ツールを用いて、EPA の電子報告ポータルであるセントラル・データ・エクスチェンジ(CDX)を介して電子的に提出。
<適用除外>
■ 40 CFR 700.45(a)(3)(i)~(iii)に記載される成形品、副産物、および不純物の適用除外を満たす者
■ 申告に必要な情報、適用除外規程を満たすことの証明方法など、各種詳細は規則 40 CFR 700.45 を確認する必要があります。
参考1
■ TSCAのもと、既存化学物質の評価と規制化は、主に次の流れで行われます。
STEP 1:優先順位付け
・・・膨大な量の既存化学物質の中から、TSCA作業計画などを背景に、優先して評価すべき物質を特定する。優先すべきものは「高優先度物質」とされ、事前の意見募集・情報収集がなされる。
STEP 2:リスク評価
・・・リスク評価のステップは、「スコープ文書」の検討と、「リスク評価文書」の検討に大別される。
「スコープ文書」は、リスク評価の前に、考慮すべき範囲、使用条件、影響を受ける主体、関連法などの情報を集め、整理するもので、リスク評価の前提を定めるものとなる。
その後、リスク評価が行われ、「リスク評価文書」がまとめられる。いずれのステップでも、草案の意見募集、最終文書の意見募集が行われる。
STEP 3:リスク管理(規制化=規則の策定)
・・・リスク評価の結果、規則を策定し、強制力を持ってリスク管理を行う必要がある物質、使用条件(用途)などが特定され、不合理なリスクがあると評価された場合、それに対処するための規則の策定プロセスへ移る。
参考2
■ 12月18日、EPAは「STEP 1:優先順位付け」の対象とする次の5物質についても明らかにしました。当該5物質は次の通り:
Benzene
Ethylbenzene
Naphthalene
Styrene
4-tert-Octylphenol
参考情報
有害物質規制法(TSCA)とは?
米国の「有害物質規制法」、通称「TSCA」は、化学物質の管理・規制に関する米国の国レベルの基本的な法令の一つです。日本の化審法、EUのREACH規則と並べて、あるいは比較して言及されたりもします。 合衆国法典では第15編、第53章に収載されており、全部で6つの大項目から構成されています。このうち、日本の事業者が関心が高く、よく相談が持ち込まれる大項目は、「有害物質の管理」、「複合木材製品のホルムアルデヒド基準」です。
目次
SUBCHAPTER I 有害物質の管理 SUBCHAPTER II アスベスト有害性緊急対応 SUBCHAPTER III 屋内ラドン削減 SUBCHAPTER IV 鉛ばく露低減 SUBCHAPTER V 健康的な高いパフォーマンスの学校 SUBCHAPTER VI 複合木材製品のホルムアルデヒド基準
注目される制度
TSCAのもとでは様々な規制が敷かれていますが、事業者からの相談・問い合わせが多く、注目度が高い制度には次のものが例として挙げられます。
新規化学物質の製造前届出制度
■ 第5条(§2604)(a)(1)に基づき、新規化学物質の製造・輸入・加工については、90日前までにEPAへの届出が必要
化学物質の試験制度
■ 第4条(§2603)に基づき、EPAが人の健康や環境へ不当なリスクをもたらすと判断した場合には、化学物質や混合物の製造、商業流通、加工、使用、廃棄、またはそのような活動の組み合わせに関連して、関連事業者に試験の実施を要求することができる。関連規則に基づき、規則や同意命令などの形で発出される。
重要新規利用規則(SNUR)
■ 第5条(§2604)(a)(2)に基づき、化学物質の使用が、通知が必要とされる重要新規利用(Significant New Use)であるかどうかをEPAが判断し、必要に応じて規則を設ける。特定されたものについて、製造者・輸入者や加工業者は、当該新規利用を開始する90日前までに関連規則に基づいた通知(SNUN)が必要とされる。
化学物質のリスク評価制度に基づく個別の規制
■ 第6条(§2605)に基づき、EPAが化学物質または混合物の製造、加工、商業流通、使用、廃棄、またはそのような活動の組み合わせが、人の健康や環境へ不当なリスクをもたらすと判断した場合には、規制を定める規則の検討を行う。
既存化学物質の管理制度
■ 第8条(§2607)に基づく記録保持・報告要件は、インベントリー制度としても知られている。EPAが化学物質についての情報をインベントリーとして管理するために、事業者には情報の提出や更新が求められている。
輸出入規制
■ 輸出(§2611)や輸入(§2612)についても規制が敷かれているが、特に注目されるのは、輸入時における「TSCA証明」である。詳細は規則で規定されているが、輸入化学物質が TSCA に準拠していることを証明する方法(positive certification)と、TSCAの適用外であることを証明する方法(negative certification)が存在する。
複合木材製品規制
■ 米国内で販売、供給、販売促進、製造、輸入される複合木材製品は、TSCA Title VI適合と表示されなければならない。これらの製品には、広葉樹合板、中密度繊維板、パーティクルボード、およびこれらの製品を含む家庭用品やその他の完成品(finished goods)が含まれる。自主的合意基準、第三者認証制度など要件遵守保証のための制度が導入されている。
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