米国|TSCAに基づくNMPのリスク管理規則案

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輸入、加工、流通、使用の禁止、濃度制限も

2024年06月14日、連邦官報にて、有害物質規制法(TSCA)に基づき、n-methylpyrrolidone (NMP)を対象とするリスク管理規則の案が公表されました。07月29日まで意見募集期間が設けられています。

注目すべき内容

§751.205 製造、加工、商業的流通、使用の禁止

■ 本セクションの禁止要件は、次のものに適用されます。

- 機械製造における潤滑油及び潤滑油添加剤の成形品への加工組み込み<(a)(1)>
- 工業用及び商業用の使用条件:<(a)(2)>
>>凍結防止剤および解氷剤、自動車ケア製品、潤滑剤およびグリースへの工業的および商業的使用<(a)(2)(i)>
>>他でカバーされていない金属製品、親水性コーティング剤を含む潤滑剤および潤滑剤添加剤における工業的および商業的使用<(a)(2)(ii)>
>>洗浄および脱脂、ならびに木材クリーナーおよびガスケットリムーバーを含む洗浄および家具ケア製品における工業的および商業的使用<(a)(2)(iii)>
>>肥料およびその他の農薬製造-加工助剤および溶剤における工業用および商業用<(a)(2)(iv)>

■ 禁止要件:

いつ 誰が 何を
最終規則の連邦官報公告日から12カ月後 すべての者 (a)(1)および(2)に記載された用途のNMPの製造(輸入を含む)は禁止
最終規則の連邦官報公告日から15カ月後 すべての者 (a)(1)および(2)に記載された使用条件のために、NMP含有製品を含め、NMPを加工することは禁止
最終規則の連邦官報公告日から18カ月後 すべての者 (a)(2)に記載された使用条件のために、NMP含有製品を含め、NMPを小売業者に商業的に流通させること(利用可能にすることを含む)は禁止
最終規則の連邦官報公告日から21カ月後 すべての者及び小売業者 (a)(2)に記載された使用条件について、NMP含有製品を含め、NMPを商業的に流通させること(利用可能にすることを含む)は禁止
最終規則の連邦官報公告日から24カ月後 すべての者 (a)(2)に記載された使用条件のために、NMP含有製品を含め、NMPを工業的および商業的に使用することは禁止

§751.207 濃度制限、容器サイズ制限、ラベル

■ 本セクションの禁止要件は、次のものに適用されます。

- 輸送機器製造における塗料添加剤及びコーティング添加剤の成形品への加工組み込み<(a)(1)>
- 工業用及び商業用の使用条件:<(a)(2)>
>>米国国防総省および米国航空宇宙局が所有または運用する航空機、宇宙船、船舶のミッションクリティカルまたはセーフティクリティカルなコンポーネントのための塗料、コーティング剤、接着剤除去剤を除く、塗料、コーティング剤、接着剤除去剤におけ る工業的および商業的使用<(a)(2)(i)>
>>ラッカー、ステイン、ワニス、下塗り剤、床仕上げ剤、および表面処理用粉体塗料における工業用および商業用使用<(a)(2)(ii)>
>>建設業、金属加工製品製造業、機械製造業、その他の製造業、塗料・塗装製造業、一次金属製造業、輸送機器製造業、卸売業および小売業における塗料添加剤および塗装添加剤での工業用および商業用使用<(a)(2)(iii)>
>>結着剤、潤滑性接着剤を含む一液性接着剤・粘着剤、一部の樹脂を含む二液性接着剤・粘着剤を含む接着剤・粘着剤における工業的および商業的使用<(a)(2)(iv)>
>>プリンターインクのインク、トナー、着色剤製品の工業的および商業的使用
>>工業用および商業用のはんだ付け材料への使用

- 消費者の使用条件:<(a)(3)>
>>塗料およびコーティング除去剤における消費者使用<(a)(3)(i)>
>>接着剤除去剤における消費者使用<(a)(3)(ii)>
>>ラッカー、ステイン、ワニス、下塗り剤、床仕上げ剤における塗料およびコーティング剤での消費者使用<(a)(3)(iii)>
>>塗料および美術工芸用塗料における塗料添加剤およびコーティング添加剤における消費者使用<(a)(3)(iv)>
>>自動車ケア製品における消費者使用<(a)(3)(v)>
>>木材クリーナー、ガスケットリムーバーを含む、クリーニングおよび家具ケア製品 における消費者使用<(a)(3)(vi)>
>>親水性コーティングを含む、潤滑剤および潤滑剤添加剤における消費者使用<(a)(3)(vii)>
>>潤滑性接着剤を含む、接着剤および接着剤中の接着剤およびシーリング剤における消費者使用<(a)(3)(viii)>

■ 禁止要件:

いつ 誰が どの用途で 何を
最終規則の連邦官報公告日から12カ月後 すべての者 (a)(1)、(a)(2)(ii)~(iv)および(a)(3)(viii) 45wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品の輸入は禁止
    (a)(2)(i) 30wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品の輸入は禁止
    (a)(2)(v) 5wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品の輸入は禁止
    (vi) 1wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品の輸入は禁止
最終規則の連邦官報公告日から15カ月後 すべての者 (a)(1)、(a)(2)(ii)~(iv)および(a)(3)(viii) 45wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品への加工は禁止
    (a)(2)(i) 30wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品への加工は禁止
    (a)(2)(v) 5wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品への加工は禁止
    (vi) 1wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品への加工は禁止
最終規則の連邦官報公告日から18カ月後 すべての者 (a)(1)、(a)(2)(ii)~(iv)および(a)(3)(viii) 45wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品の小売業者への商業的流通は禁止
    (a)(2)(i) 30wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品の商業的流通は禁止
    (a)(2)(v) 5wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品の商業的流通は禁止
    (vi) 1wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品の商業的流通は禁止
最終規則の連邦官報公告日から21カ月後 すべての者 (a)(1)、(a)(2)(ii)~(iv)および(a)(3)(viii) 45wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品の商業的流通は禁止
    (a)(2)(i) 30wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品の商業的流通は禁止
    (a)(2)(v) 5wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品の商業的流通は禁止
    (vi) 1wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品の商業的流通は禁止
最終規則の連邦官報公告日から24カ月後 すべての者 (a)(1)、(a)(2)(ii)~(iv)および(a)(3)(viii) 45wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品の商業的使用は禁止
    (a)(2)(i) 30wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品の商業的使用は禁止
    (a)(2)(v) 5wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品の商業的使用は禁止
    (vi) 1wt%を超えるNMPを含有するNMP製剤および製品の商業的使用は禁止

その他、特定の使用条件下における容器サイズ制限やラベル表示規定のほか、ほかのセクションでは作業場での化学品保護プログラム、川下通知や記録保持などの規定が盛り込まれています。

背景

■ TSCAに基づく2020年のNMPのリスク評価によれば、NMPがもたらす悪影響には、着床後胎児死亡と受胎能・繁殖力の低下、肝毒性、腎毒性、免疫毒性、神経毒性、刺激性、感作性などが挙げられています。

■ 評価結果及び計算結果では、すべての使用条件ではないものの、NMPへの暴露の99~100%が液体との経皮接触によるものであることが示されていました。そのたEPAは、NMPの不合理なリスクは主に経皮ばく露経路によるものであると特定しています。

改正対象箇所

40 CFR Part 751
§751.5 定義

Subpart C—n-Methylpyrrolidone
§751.201 総則
§751.203 定義
§751.205 製造、加工、商業的流通、使用の禁止
§751.207 濃度制限、容器サイズ制限、ラベル
§751.209 作業場での化学品保護プログラム
§751.211 規定作業場要件
§751.213 記録保持要件
§751.215 川下への通知
§751.217 塗料、コーティング剤、接着剤除去剤、または塗料とコーティング剤のミッションクリティカルまたはセーフティクリティカルな使用

参考情報

■ 連邦官報(89 FR 51134)

有害物質規制法(TSCA)とは?

米国の「有害物質規制法」、通称「TSCA」は、化学物質の管理・規制に関する米国の国レベルの基本的な法令の一つです。日本の化審法、EUのREACH規則と並べて、あるいは比較して言及されたりもします。 合衆国法典では第15編、第53章に収載されており、全部で6つの大項目から構成されています。このうち、日本の事業者が関心が高く、よく相談が持ち込まれる大項目は、「有害物質の管理」、「複合木材製品のホルムアルデヒド基準」です。

目次

SUBCHAPTER I 有害物質の管理 SUBCHAPTER II アスベスト有害性緊急対応 SUBCHAPTER III 屋内ラドン削減 SUBCHAPTER IV 鉛ばく露低減 SUBCHAPTER V 健康的な高いパフォーマンスの学校 SUBCHAPTER VI 複合木材製品のホルムアルデヒド基準

注目される制度

TSCAのもとでは様々な規制が敷かれていますが、事業者からの相談・問い合わせが多く、注目度が高い制度には次のものが例として挙げられます。

新規化学物質の製造前届出制度

■ 第5条(§2604)(a)(1)に基づき、新規化学物質の製造・輸入・加工については、90日前までにEPAへの届出が必要

化学物質の試験制度

■ 第4条(§2603)に基づき、EPAが人の健康や環境へ不当なリスクをもたらすと判断した場合には、化学物質や混合物の製造、商業流通、加工、使用、廃棄、またはそのような活動の組み合わせに関連して、関連事業者に試験の実施を要求することができる。関連規則に基づき、規則や同意命令などの形で発出される。

重要新規利用規則(SNUR)

■ 第5条(§2604)(a)(2)に基づき、化学物質の使用が、通知が必要とされる重要新規利用(Significant New Use)であるかどうかをEPAが判断し、必要に応じて規則を設ける。特定されたものについて、製造者・輸入者や加工業者は、当該新規利用を開始する90日前までに関連規則に基づいた通知(SNUN)が必要とされる。

化学物質のリスク評価制度に基づく個別の規制

■ 第6条(§2605)に基づき、EPAが化学物質または混合物の製造、加工、商業流通、使用、廃棄、またはそのような活動の組み合わせが、人の健康や環境へ不当なリスクをもたらすと判断した場合には、規制を定める規則の検討を行う。

既存化学物質の管理制度

■ 第8条(§2607)に基づく記録保持・報告要件は、インベントリー制度としても知られている。EPAが化学物質についての情報をインベントリーとして管理するために、事業者には情報の提出や更新が求められている。

輸出入規制

■ 輸出(§2611)や輸入(§2612)についても規制が敷かれているが、特に注目されるのは、輸入時における「TSCA証明」である。詳細は規則で規定されているが、輸入化学物質が TSCA に準拠していることを証明する方法(positive certification)と、TSCAの適用外であることを証明する方法(negative certification)が存在する。

複合木材製品規制

■ 米国内で販売、供給、販売促進、製造、輸入される複合木材製品は、TSCA Title VI適合と表示されなければならない。これらの製品には、広葉樹合板、中密度繊維板、パーティクルボード、およびこれらの製品を含む家庭用品やその他の完成品(finished goods)が含まれる。自主的合意基準、第三者認証制度など要件遵守保証のための制度が導入されている。

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