株式会社先読(当社)では、「化学物質」分野について、以下の細かな分野に分けて整理しています。
一般・工業
最も広く流通している一般化学品、工業用化学品は、化学物質の評価と登録制度、分類・表示制度、有害な化学物質の上市・使用・排出・廃棄等の規制、有害な化学物質の保管・情報伝達・移動の把握、有害な化学物質へのばく露規制、有害な化学物質の緊急時対応、化学物質の環境への排出規制などで必要な制限が敷かれています。
食品
食品分野の化学物質規制は主に安全性の観点から特定の食品添加物の規制、特定の容器包装の規制(含有物質のポジティブリスト制度も)、農薬等のポジティブリスト制度、食品等の規格基準(残留基準)、食品、添加物、包装の表示規制および誇大広告の禁止、添加物、包装の検査義務などの要件が敷かれています。
農薬
農薬や肥料は農作物や食品への影響のほか、土壌や水質へ与える影響などもあります。また、抗菌剤などは工業用途でも製品に使用されます。農薬や肥料の試験・評価・登録制度、製造者及び輸入者の表示、販売者の届出、特定の農薬の販売・使用の制限・禁止、虚偽の広告や特定の表示の禁止、水質汚濁性農薬の使用の規制等の要件があります。
医薬品
医薬品といえど、ヒト用・動物用医薬品、体外診断用医薬品や生物由来製剤など、様々な観点から区分され規制が敷かれています。医薬品の製造販売の許可・届出制度、医薬品の審査・評価制度、医療機器および体外診断用医薬品の製造販売の許可・届出制度、表示・陳列等の取扱規制、誇大広告の禁止、承認前の広告の禁止などの要件があります。
化学物質規制と国際条約
POPs条約(ストックホルム条約)
POPs条約とは、難分解性有機汚染物質(残留性有機汚染物質、persistent organic pollutants)を国際的に管理・規制するための枠組みです。2001年にストックホルムで行われた会合で採択されたため、「ストックホルム条約」としても知られています。2004年05月に発効し、180ヵ国以上の締約国を有しています。
難分解性有機汚染物質(POPs)とは?
条約の中に「難分解性有機化合物」の定義はありませんが、前文において、分解しにくく、ヒトの体内または環境中に蓄積しやすく、それゆえに長距離を移動でき、且つ、毒性が高い物質であるとされています。附属書AおよびBに物質リストが収載されており、一般にこれらがPOPsとして認識されています。代表的なものとしては、ポリ塩化ビフェニル(PCB)やDDT、デカBDEなど、農薬や難燃剤、絶縁材料のための添加剤などが挙げられます。
■ 附属書A:廃絶(Elimination)-製造・使用、輸出入の原則禁止
■ 附属書B:制限(Restriction)-製造・使用、輸出入の制限
■ 附属書C:非意図的生産(Unintetional Production)
規制内容は?
主な規制内容としては、製造や使用、輸出入の禁止や制限(第3条)、非意図的生産からの放出削減・廃絶(第5条)、ストックパイルや廃棄物からの放出削減・廃絶(第6条) などが挙げられます。
条約と締約国
条約の締約国は、各国の国内法令に条約の内容を反映させる形で履行する形になります。日本の場合は化審法や農取法などに反映され、EUではPOPs規則などに反映されます。
企業コンプライアンス上、関心が高いのは、規制対象になる物質は何か、新しく何が追加されるのか、という点だと思われますが、附属書への新たな物質の追加は、まずPOPsの検討委員会(POPRC)と呼ばれる専門の組織で検討され、締約国会議での検討を通じて決定されます。決定(Decision)という形で公表され、条約の改訂がなされれば、それまでの決定が条約に反映されます。最新改訂版以降の決定については、個別に決定を確認しなければなりません。
また、禁止や制限の免除用途について、各締約国が意見を提出することができ、それが決定されると、条約において特定の物質の特定の用途の免除が認められることとなります(第4条)。その結果、各締約国が国内で反映させる法令にもそのような免除を反映できるようになります。
PIC条約(ロッテルダム条約)
PIC条約とは、「国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約」という名称の条約で、事前同意手続き(Prior informed consent procedure)が主な内容となるため、PIC条約として知られています。何の事前同意手続きかというと、特定の有害な化学物質の輸出入についてです。そのため、PIC条約は特定の有害な化学物質を国際的に管理・規制するための枠組みとなります。1998年にロッテルダムで行われた会合で採択されたため、「ロッテルダム条約」としても知られています。2004年02月に発効し、150ヵ国以上の締約国を有しています。
対象となる化学物質とは?
「事前同意手続き」の対象となる化学物質は条約の附属書IIIにリストアップされています。これらは禁止物質または厳しく制限される物質と位置付けられ、
■ 附属書III:事前通達手続きの対象となる化学物質
但し、附属書III収載物質以外に、各国が独自に禁止または厳しく制限している物質がある場合には、それも規制の対象となります。日本の場合については、経済産業省がまとめており、外為法のもと輸出貿易管理令に基づき、経済産業大臣の承認を得なければならないものとして整理されています。
他方、放射性物質、廃棄物、化学兵器、医薬品(ヒト用・動物用)、食品添加物、食品などについては適用除外となっています。
■ 有害化学物質の輸出/経済産業省
規制内容は?
主な規制内容としては、輸出国は輸入国の附属書III化学物質の輸入意思を事前に確認した上で輸出を行うこと(第11条)、輸出通知には附属書Vに記載の情報を含まなければならないこと(第12条)、附属書III化学物質や各国が独自に禁止または厳しく制限している物質の輸出には、有害性・危険性に関するラベルや安全性データシート(SDS)の添付が必要であること(第13条)などの内容が挙げられます。
条約と締約国
条約の締約国は、各国の国内法令に条約の内容を反映させる形で履行する形になります。日本の場合は化審法や外為法などに反映され、EUではPIC規則などに反映されます。
企業コンプライアンス上、関心が高いのは、規制対象になる物質は何か、新しく何が追加されるのか、という点だと思われます。附属書への新たな物質の追加は、化学物質評価委員会(CRC)で検討され、締約国会議での検討を通じて決定されます。決定(Decision)という形で公表され、条約の改訂がなされれば、それまでの決定が条約に反映されます。最新改訂版以降の決定については、個別に決定を確認しなければなりません。
水銀条約(水俣条約)
水銀条約とは、を国際的に管理・規制するための枠組みです。2013年に日本の熊本市及び水俣市で行われた会合で採択され、「水俣条約」としても知られています。2017年08月に発効し、130ヵ国以上の締約国を有しています。
規制対象は?
■ 水銀|CAS No. 7439-96-7
■ 水銀化合物|水銀の原子及び一又は二以上の他の元素の原子から成る物質であって、化学反応によってのみ異なる成分に分離することができるもの
■ 水銀添加製品|意図的に添加された水銀又は水銀化合物を含む製品又は製品の部品で、附属書Aに列挙
■ 水銀または水銀化合物が使用される製造プロセス|附属書B
第3条「水銀の供給源及び貿易」の規定適用上は、次のものに適用されます。
■ 水銀|水銀と他の物質との混合物(水銀の合金を含む)であって、水銀の濃度が全重量の九十五パーセント以上であるもの
■ 水銀化合物|塩化第一水銀(甘汞と称することもある。)、酸化第二水銀、硫酸第二水銀、こう硝酸第二水銀、辰砂及び硫化水銀
規制内容は?
主な規制内容としては、水銀の一次採掘の原則禁止(第3条)、水銀の輸出は特定許可用途・環境上適正な暫定的保管など特定要件を満たす場合に限定(第3条)、水銀添加製品の製造、輸出入の段階的禁止(第4条)、水銀又は水銀化合物を使用する製造工程の制限・段階的廃止(第5条)、零細及び小規模な金の採掘及び加工における水銀及び水銀化合物の使用並びに当該採掘及び加工から生ずる水銀の環境への排出及び放出を削減(第7条)、附属書D記載の発生源分類からの水銀及び水銀化合物の大気排出規制(第8条)、土壌・水への放出について(第9条)などが挙げられます。
日本企業の事業との関連では、特に「水銀添加製品」の規制(第4条)が注目を集める内容だと思われます。
条約と締約国
条約の締約国は、各国の国内法令に条約の内容を反映させる形で履行する形になります。日本の場合は水銀汚染防止法や大気汚染防止法などに反映され、EUでは水銀規則などに反映されます。
企業コンプライアンス上、関心が高いのは、規制対象になる物質は何か、新しく何が追加されるのか、という点だと思われますが、附属書への新たな物質の追加は、まず専門の組織で検討され、締約国会議での検討を通じて決定されます。決定(Decision)という形で公表され、条約の改訂がなされれば、それまでの決定が条約に反映されます。最新改訂版以降の決定については、個別に決定を確認しなければなりません。
職場における化学物質の使用の安全に関する条約(1990年化学物質条約)
「職場における化学物質の使用の安全に関する条約」は、1990年6月25日に採択され、1993年11月4日に発効した、労働安全衛生分野の化学物質管理に関する条約です。
この条約については、日本は批准をしていません(2023年07月時点)が、国内法と条約の内容を見比べると、国内法で既により厳しい要件を敷いていることがわかります。
規制対象は?
■ 化学物質を使用するすべての経済活動の部門について適用される。
■ 生物については適用しない。ただし、生物から生ずる化学物質については適用する。
■ 規制対象は主に「有害な化学物質」となる。
規制内容は?
主な規制内容としては、
■ 各国の所管機関に対して、一定の有害な化学物質の使用を禁止し若しくは制限し又はそれらの化学物質の使用前にその使用についての事前届出若しくは許可を求める権限を有することを求め(第5条)
■ 健康及び身体に対する特有の有害性の種類及び程度に従いすべての化学物質を分類するための並びに化学物質が有害かどうかを決定するために要求される情報の関連性を評価するための適当な体系及び特定の基準を定めること(第6条)
■ すべての化学物質について、物質名を示すために標章を付して、労働者が容易に理解できる方法で、それらの物質の分類、それらの物質の有する有害性及び遵守されるべき安全上の予防措置に関する不可欠な情報を提供するためにラベルをつけること(第7条)
■ 有害な化学物質については、物質名、供給者、分類、有害性、安全上の予防措置及び緊急手続に関する詳細なかつ不可欠な情報を含んでいる化学物質の安全に関する情報資料を使用者に提供すること(第8条)
■ サプライヤーに対して、化学物質の評価、ラベル表示、情報提供を求めること(第9条)、
のほか、確認要件、化学物質の移転、ばく露、作業管理、化学物質の処分、雇用者の要件、労働者への周知・教育などについて規定されています。
条約と締約国
本条約は国際労働機関(ILO)が所管しており、批准している国は23ヵ国が確認されています。(2023年07月時点)
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