解説米国-大気浄化法(CAA)-新規排出源審査(NSR)

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法令の情報時期:2024年11月 U.S.C.確認 ページ作成時期:2024年11月

目的

目的

■ この解説の対象が属するチャプター85「大気汚染の防止と管理が構成する大気浄化法(Clean Air Act、CAA)」の目的は、米国民の健康と米国の大気資源の質を保護するために、大気汚染の防止と制御を達成するための国家的研究開発プログラムを立案し実施して、州政府および地方政府に技術的で財政的支援を提供することである。

■ CAAにおいて、国家環境大気質基準(NAQQS)が設けられ、一般的な大気汚染物質である、粒子状物質、地上オゾン、一酸化炭素、二酸化硫黄、二酸化窒素、鉛の6物質への規制が行われている。NAAQSを達成している地域では、対象物質の排出を増やすような新規施設の建設あるいは既存施設の拡張を行う場合、工事前に許可を取得していなければならない。この許可プログラムを「新規排出源審査(NSR、パートC §7470-7492)」という。

概要

概要

■ 大気浄化法(CAA)の§7470から§7479に概説されている新規排出源審査(New Source Review、NSR)プログラムは、新規または大規模な変更を行う主要排出源による大気質への影響を規制している。

■ NAAQSを達成している地域における新規、または大規模な変更を行う主要排出源は、パートC(§7470-§7479)の「著しい悪化の防止(Prevention of Significant Deterioration、PSD)許可」と言われる許可要件が必要である。許可の要件(対象物質の変更に伴って許可される増加分を含む)は、州が決定する、主要排出源が立地する地域のクラスによって異なる。

■ EPAは、本パートCに基づいた連邦規則においてNSRプログラムの基本要件を定めている。ほとんどのNSR許可は、州または地方の大気汚染防止機関より発行されているが、EPAが許可を発行する場合もある。各州は、少なくともEPAの要件と同程度である限り、自州の大気質の様子に合わせた独自のNSR許可の要件と手順を策定することができる。EPAは、州実施計画(SIP)においてこれらのプログラムを承認している。

注目定義

■ 「主要排出施設」(major emitting facility)

「主要排出施設」(major emitting facility)とは、以下の固定排出源から、いずれかの大気汚染物質を年間100トン以上排出している、または排出する可能性のあるものをいう。  熱入力が1時間あたり2億5,000万英熱単位(British thermal unit、Btu)を超える化石燃料燃焼蒸気発電所、石炭洗浄プラント(熱乾燥機)、 クラフトパルプ工場、ポルトランドセメント工場、一次亜鉛製錬所、鉄鋼工場、一次アルミニウム鉱石還元工場、一次銅製錬所、1日あたり50トン以上の廃棄物を処理できる都市ごみ焼却炉、フッ化水素酸、硫酸、硝酸工場、石油精製所、石灰工場、リン鉱石処理工場、コークス炉、硫黄回収工場、 カーボンブラック製造施設(ファーネス法)、一次鉛製錬所、燃料転換施設、焼結施設、二次金属生産施設、化学処理施設、熱入力が毎時2億5000万Btuを超える化石燃料ボイラー、容量が30万バレルを超える石油貯蔵および移送施設、タコナイト鉱石処理施設、ガラス繊維処理施設、木炭生産施設。また、この用語には、大気汚染物質を年間250トン以上排出する可能性のあるその他の排出源も含まれる。  一方、この用語には、州によって免除された非営利の保健または教育施設である新規または改修された施設は含まれないものとする。(§7479 (1))

■ 「開始」(commenced)

「開始」(commenced)とは、大気汚染物質排出施設の建設際して適用される。「開始」とは、所有者または運営者が連邦、州、または地方の大気汚染排出および大気質に関する法律または規則で義務付けられている建設前の承認または許可をすべて取得し、 (i) 施設の現場での物理的な建設の継続的なプログラムを開始したか、あるいは、 (ii) 相当な損失を被ることなく取り消しまたは修正することができない拘束力のある合意または契約上の義務を締結し、合理的な期間内に完了する施設建設のプログラムを実施する、のいずれかをいう。(§7479(2)(A))

■ 「建設」(construction)

「建設」(construction)には、いかなる排出源または施設に関連して使用される場合、排出源または施設の変更を含む。(§7479(2)(C))

■ 「利用可能な最善の制御技術」((best available control technology、BACT)

「利用可能な最善の制御技術」(best available control technology)とは、本チャプターに基づく規制の対象となる各汚染物質について、主要排出施設から排出される、または主要排出施設に起因する排出の最大削減度に基づく排出制限をいう。  許可当局が エネルギー、環境、経済への影響およびその他のコストを考慮し、生産工程および利用可能な方法、システム、技術(燃料の浄化、クリーン燃料、または各汚染物質の抑制のための処理または革新的な燃料燃焼技術を含む)の適用により、そのような施設で達成可能であると許可当局が判断するものをいう。  いかなる場合においても、「利用可能な最善の制御技術」の適用により、本セクションに従って制定された適用可能な基準で認められた排出量を上回る汚染物質の排出が生じることはない。  本セクションを遵守するためにクリーン燃料またはその他の手段を利用する排出源からの排出量は、1990年11月15日以前の本項で要求されていたレベルを超えて増加することは認められない。(§7479(3))

■ 「基準濃度」(baseline concentration)

「基準濃度」(baseline concentration)とは、汚染物質に関して、EPAまたは州大気汚染管理局が入手可能な大気質データ、および許可申請者が提出を義務付けられているモニタリングデータに基づき、本パートCの対象地域における最初の許可申請時に存在していた環境濃度レベルをいう。  このような環境大気中濃度レベルは、1975年1月6日以前に建設が開始されたものの、基準大気質濃度決定日までに操業を開始していない大規模排出施設から、当該地域内または当該地域に影響を及ぼす可能性のあるすべての予測排出量を考慮したものとする。  1975年1月6日以降に建設が開始された主要排出施設からの硫黄酸化物および粒子状物質の排出は、ベースラインに含めることはできず、本規定で定められた汚染物質濃度の最大許容増加分として計上される。(§7479(4))

事業者が注意すべき内容

本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。
ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
制限、限定

■ CAAとそれに基づいた連邦規則集により、各州はNSRプログラムを施行する。まず、州は悪化が許容される程度によって、限定的な悪化のみ許容(クラスI、自然国立公園などを含む)、中程度の悪化が許容(クラスII)、NAQQSの範囲内であるが大きな悪化が許容(クラスIII)される地域の3つに、地域を分類して指定し(§7472、§7474)、大気質がどの程度悪化してもよいかを規定する。(§7473)

資格、認定

NSR許可要件において、新規、または大規模な変更を行う主要排出施設は、以下の事を行うことが義務付けられている。(§7475)

  • 建設開始前に大気質の著しい悪化の防止(Prevention of Significant Deterioration、PSD)のためのPSD許可を取得する。
  • 施設の申請者は、排出量が許容限度を超えないこと、および大気質が著しく低下しないことを証明する。
  • 施設ごとに許可証を発行する前に、必ず公聴会および一般からの意見提出の機会に参加する。
  • 環境および大気質分析のための継続的なモニタリングに同意する。
  • 最善利用制御技術(BACT)などの制御技術を導入する。

ただし、大気汚染物質の許容排出量が年間50トン未満となる場合、および、そのような施設の所有者または運営者が、粒子状物質および硫黄酸化物の排出がNAQQSを超える大気質レベルを引き起こしたり、それに寄与したりしないことを証明する場合、例外とされる。(§7475)

工場・施設の停止・禁止

■ 粒子状物質もしくは硫黄酸化物に関しては、地域のクラスごとに許容される最大増加量が設けられている。以下はクラスIIまたはクラスIIIの量を示す。単位はmg/m3

クラスII

粒子状物質(PM):

 

年間の幾何平均

19  

24時間の最高値

37  

硫黄酸化物:

 

年間の幾何平均

20  

24時間の最高値

91  

3時間の最高値

325  

クラスIII

粒子状物質(PM):

 

年間の幾何平均

37  

24時間の最高値

75  

硫黄酸化物:

 

年間の幾何平均

40  

24時間の最高値

182  

3時間の最高値

700  

(§7473)

■ クラスIの地域では、クラスIIもしくはIIIより厳しい最大増加量が設けられているが、知事等の判断で例外が認められる場合がある。(§7475(d)(D))

機械安全、設備安全

■ 粒子状物質もしくは硫黄酸化物以外の汚染物質、炭化水素、一酸化炭素、石油化学オキシダント、窒素酸化物、直径が10マイクロメートル以下の粒子状物質(PM-10)についても、同様に具体的な数値指標や最善の制御技術を奨励するプログラムが、各州で設けられる。ただし、地域のクラス分けは行われない。(§7476)

■ 各州は、施設の新設もしくは変更の影響を評価するために環境および大気質分析(視認性を含む)を行い、分析結果、汚染レベルや施設の許可に関して、EPA長官に通知する。(§7475、§7476)

■ EPA長官または国は、本パートCに適合しない、新規主要排出施設の建設または主要排出施設の変更を防止するために必要な、命令の発行または差し止めなどの措置をとる。(§7477)

目的

■ 連邦のクラスI地域(class I Federal area)のための視認性保護の要件において、各州は汚染の特定、数値化、測定する方法、および、予想される程度を決定するためのモデリング技術、防止および是正する方法などを決定する。また、各州は、排出源の施設の耐用年数や遵守のための費用等を考慮する。

■ EPA長官は、このクラスI地域を継続的なモニタリングなどにより研究し、排出源の特定や評価を5年ごとに行う。州の請願などにより、クラスI地域に影響している地域を「可視性輸送地域(visibility transport regions)」とされることがある。(§7491、§7492)

目次

チャプター85 大気汚染の防止と管理

サブチャプターI プログラムと活動 パートC—大気質の著しい悪化の防止

サブパートI—大気の清浄化
7470. 連邦議会の目的宣言
7471. 計画要件
7472. 初期分類
7473. 増分および上限
7474. 地域再指定
7475. 建設前要件
7476. その他の汚染物質
7477. 施行
7478. 計画承認までの期間
7479. 定義

サブパートII—視認保護
7491. 連邦のクラスI地域における視認性保護
7492. 視認性

基礎情報

法令(現地語)

Clean Air Act 42 U.S.C.§7470-7492

法令(日本語)

大気浄化法(CAA)-新規排出源審査(NSR)

公布日

大気浄化法(CAA):1963年12月17日(本稿執筆時点の最終改正:2022年12月27日)

所管当局

米国環境保護庁(Environmental Protection Agency、EPA)

作成者

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株式会社先読

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