EU領域外国籍の労働者に関する手続きと権利
2024年04月30日、EU理事会はEU領域外国籍人の居住及び労働に関する申請並びに権利に関する指令(EU)2024/1233を公布しました。居住及び就労を許可するための手続きが簡略化され、労働における権利についてもEU市民と原則的に同等となります。
背景
EUは加盟国内において、合法的に居住するEU領域外国籍の人々の公平な待遇を確保し、EU市民と同じ権利と義務を与えるための統合政策を推進すべきであると考えています。
そのうえでEU領域外国籍の人々の居住や就労の申請手続きは透明、公正、非差別的などの特長を有するものであり、合理的な期間内に適切な法的確実性を提供できる必要があるとされています。
2017年11月17日にイェーテボリで宣言された「欧州社会権の柱」は機会均等、労働市場へのアクセス、公正な労働条件、社会的保護と包摂の確保に向けた指針となる一連の原則を定めたものです。
また、加盟国以外の労働者に対する滞在・就労許可を定めた指令(EU)2011/98は、「技能と人材」対策パッケージの一部として改正が行われています。さらに、この改正は2021年03月04日に欧州委員会が発表した「欧州社会権の柱」アクションプランに組み込まれています。
なお、指令(EU)2011/98は条文の明瞭性の観点から、再構成の必要性が指摘されています。
概要
本指令は、EU領域外国籍の人々が加盟国で働くための統一的な許可手続きの確立およびその簡素化の実現と、EU領域外国籍の労働者の権利を保護するための共通枠組みを提供するものです。
EU領域外国籍の人々の居住および就労を兼ねた申請が可能になり、国民またはその雇用主が申請する権利を持ちます。
しかし、出向者、社内転勤者、季節労働者などは単一申請の対象外です。
EU領域外国籍の人々は、加盟国の領域内に居住する権利、加盟国全域への自由なアクセス、特定の雇用活動を行う権利を単一申請に基づいて与えられます。
EU領域外国籍の労働者は、少なくとも次の点で加盟国の国民と平等に扱われます。
■ 雇用条件と労働条件
■ 労働組合への加入とストライキ
■ 教育と職業訓練
■ 資格の認定
■ 社会保障
■ 税制上の利益
■ 商品やサービスへのアクセス
■ 雇用サービスへのアクセス
しかし、加盟国は特定の条件下において平等に制限をかけられます。
また、加盟国は、平等を遵守しない雇用主に対して罰則を設け、EU領域外国籍の労働者が雇用主に対して苦情を申し立られる仕組みを整備することとされています。
目次
■ 第1章 総則
第1条 主題
第2条 定義
第3条 適用範囲
■ 第2章 単一申請手続きと単一許可証
第4条 単一申請手続き
第5条 所轄官庁
第6条 単一許証証
第7条 就労以外の目的で発行された滞在許可証
第8条 手続き上の保護
第9条 情報へのアクセス
第10条 手数料
第11条 単一許可に基づく権利
■ 第3章 平等待遇の権利
第12条 平等待遇を受ける権利
第13条 監視、評価、検査、罰則
第14条 苦情および法的救済の円滑化
■ 第4章 最終規定
第15条 より有利な規定
第16条 一般市民への情報提供
第17条 報告
第18条 転記
第19条 廃止
第20条 発効及び適用
第21条 宛先
附属書I 国内法への移行の期限
附属書II 相関表
参考情報
加盟国の領域内に居住し就労するEU領域外国籍人の単一許可証の単一申請手続きおよび加盟国に合法的に居住するEU領域外国籍の労働者の権利の共通化に関する指令(EU)2024/1233
加盟国の領域内に居住し就労するEU領域外国籍人の単一許可証の単一申請手続き、および加盟国に合法的に居住する共通権利に関する指令(EU)2011/98