UTC閾値の更新:PCBと5つのPBDE
2025年02月18日、欧州委員会はPOPs規則改正案2件を公表し、意見募集を開始しました。期限は03月18日までとなっております。2件はいずれもPOPs規則の附属書Iを改正するもので、ポリ塩化ビニル(PCB)とポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDEs)に関連する内容となっています。
PCBに関する改正規則
■ 附属書I、PCBに関するエントリーの「中間用途又はその他の仕様に関する特定の免除」の内容に、次の文章が追加されます。
本エントリーの目的上、第 4 条(1)(b)は、物質、混合物又は成形品中に存在する、0.2 mg/kg(0.00002 wt%)以下の PCB 濃度の合計に適用される。 ISO 787-28/2019に適合する分析法、又はISO 787-28/2019と同等又は類似の精度及び性能を有することが証明された有機顔料及び有機染料、ならびに有機顔料又は有機染料を含む混合 物及び成形品については、第4条(1)(b)は、以下のPCB濃度の合計に適用される。 -25 mg/kg(0.0025 wt%)以下(本規則発効時) |
■ これまで、PCBに関するエントリーでは、非意図的微量汚染物質(UTC)の規制値なしで記載されています。しかし、古い機器にはPCBがまだ含まれている可能性があり、特定の化学工程で意図せず微量のPCBが発生することもあるとされています。
■ 欧州化学物質庁(ECHA)は、物質、混合物、成形品中の不純物としてのPCBの存在に関する閾値に関するいくつかの問い合わせを受けていました。UTC閾値がない場合、検出限界が適用されると解釈され、事業者に とって不確実であり、施行が困難であるという状況が生じていました。そのため、調和のとれたUTC閾値の設定が適切であるとされ、改正案が提示されました。
PBDEsに関する改正規則
■ 附属書Iでは、複数のPBDEについて個別のエントリーが設けられています。
【改正対象エントリー】
■ Tetrabromodiphenyl ether C12H6Br4O
■ Pentabromodiphenyl ether C12H5Br5O
■ Hexabromodiphenyl ether C12H4Br6O
■ Heptabromodiphenyl ether C12H3Br7O
■ Bis(pentabromophenyl) ether (decabromodiphenyl ether; decaBDE)
【改正内容】
■ それぞれのエントリーの「中間用途又はその他の仕様に関する特定の免除」の2点目の内容を次のものに置き換え
テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ及びデカBDEに関する項目については、第4条(1)(b)を、これらの物質の濃度の次の合計に適用する: (a) 混合物または成形品に含まれる場合、10 mg/kg(本規則発効時)。ただし、規則(EC) No 1935/2004の対象となる食品接触材料を除く。 (b) (a)からの適用除外として、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタまたはデカBDEを含むまたはリカバリー材料で作られた混合物または成形品の場合、本規則発効時点で500 mg/kg、2025年12月30日時点で350 mg/kg、2027年12月30日時点で200 mg/kg。 ただし、規則(EC) No 1935/2004の対象となる食品接触材料を除く。 (c) (a)からの適用除外として、指令 2009/48/ECの対象となる玩具、またはテトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタもしくはデカBDEを含むまたはリカバリー材料で作られた、子供の着座、睡眠、リラクゼーション、衛生、着替え、一般的な身体のケア、摂食、吸啜、輸送、保護を容易にする製品の場合は、本規則発効時点で500 mg/kg、2025年12月30日時点で350 mg/kg、[発効18ヶ月後]時点で10 mg/kg。 ただし、規則(EC) No 1935/2004の対象となる食品接触材料を除く。 |
■ POPs規則の附属書IVとVを改正する規則(EU)2022/2400の採択に伴い、特にPBDEsについて、廃棄物中の関連するPBDEsの濃度制限値が引き下げられます。合計の1000mg/kgの濃度制限が500mg/kgに、2025年12月30日からは350mg/kgに、2027年12月30日からは200mg/kgに引き下げられます。
■ 電気電子機器、繊維製品、発泡体など幅広い製品に難燃剤として使用されており、EU市場におけるPBDEの製造、上市、使用はほぼ廃止されています。
■ 改正案は、それらの背景や循環経済の側面を考慮して、附属書Iの内容を修正するものとなっております。
参考情報
■ PCB関連意見募集/欧州委員会
■ PBDEs関連意見募集/欧州委員会
第4条第1項(b)とは?
免除規定の第1及び2段落で登場する「第4条第1項(b)」とは何でしたでしょうか?
これは、「非意図的な微量汚染物質として存在する物質」に対する適用除外を定める項目のことです。
まず、POPs規則では、第3条「製造、上市及び使用の管理、ならびに物質のリスト化」の条項で、基本となる規制内容が規定されています。それは、附属書Iの物質、それを含む混合物、成形品の製造、上市および使用を禁止することや、附属書IIのの物質、それを含む混合物、成形品の製造、上市および使用を制限することです。
ですが、この厳しい規制内容には、特定の免除規定が設けられており、それが第4条「管理措置からの免除」条項で規定されています。
そのメインとなる免除規定が第1項の(a)と(b)の2つがあり、(a)は、ラボスケール(試験所で使う規模)用途や標準物質としての用途について、そして(b)は、非意図的な微量汚染物質として存在する物質についてのものです。但し、この(b)の免除については、特に混合物や成形品中の物質について、どの濃度以下で「微量」なのかという点が焦点になりがちで、免除規定の中でれが特定される傾向にあります。
※特別無料記事