EU市場で製品を販売する際に必要となるのがCEマーキングです。CEマーキングは、製品が安全・健康・環境保護などに関するEUの必須要求事項を満たしていることを示す適合表示で、対象製品をEU域内で流通させるための前提条件となります。対象は玩具、電気・電子機器、機械、医療機器など分野別の指令・規則で定められており、違反すると販売停止や回収命令、罰金などの罰則が科されます。
当記事では、CEマーキングの基礎知識から関連法令、具体的な取得手順まで解説します。
1. CEマーキングとは
CEマーキングは、EU域内(EEAを含む)で上市される一定の製品について、EUの指令・規則が定める必須要求事項(安全、健康、環境保護など)への適合を示す表示です。製造事業者は、該当法令の特定、適合性評価の実施、技術文書の作成と保管、EU適合宣言書の作成などを行い、製品や銘板、包装、添付文書にCEマーキングを付します。製品分野によっては、ノーティファイドボディ(届出機関)による関与が求められる場合があります。
CEは一般にConformité Européenne(European Conformity)を指す略称として説明されます。CEマーキングが適切に付された対象製品は、原則としてEU域内での流通が可能になります。
(出典:日本貿易振興機構 JETRO「CEマーキングの概要:EU」/https://www.jetro.go.jp/world/qa/04S-040011.html)
1-1. CEマーキングの対象国
CEマーキングの対象となる主な国・地域は下記の通りです。
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・EU加盟27か国 オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン ・EU加盟候補国 トルコ ・EUと同じ製品規則が適用されるEEA加盟のEFTA3か国 アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー |
EEAは、EUの整合法令の枠組みが適用される市場として扱われ、対象製品はCEマーキングが求められます。なお、CEマーキングはすべての製品ではなく、分野別のEU指令・規則の対象品目に限られます。
(出典:東京都立産業技術研究センター「FAQ「CEマーキング」一覧」/https://www.iri-tokyo.jp/information/mtep/mtep-faq/ce-list/)
(出典:外務省「EU加盟国」/https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/map_00.html)
1-2. CEマーキングの対象製品
CEマーキングが必要なのは、EUの分野別指令・規則でCEマーキングが求められる製品です。対象はカテゴリごとに異なるため、上市前に該当法令を特定し、適合性評価と技術文書の整備を行います。代表例は下記の通りです。
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・玩具 ・電気・電子機器(低電圧、EMC、RoHSなど) ・機械 ・個人用保護具(ヘルメット、防護服など) ・無線機器 ・医療機器/体外診断用医療機器 ・圧力機器、ガス機器、リフト、計量器、建材 ・防爆機器(ATEX)、火工品、騒音規制対象の屋外機械など |
※最終的な要否は製品の仕様と用途で判断します。
(出典:東京都立産業技術研究センター「FAQ「CEマーキング」一覧」/https://www.iri-tokyo.jp/information/mtep/mtep-faq/ce-list/)
(出典:「CEマーキングEU指令」/https://www.iri-tokyo.jp/uploaded/attachment/15248.pdf#page=12)
1-3. CEマーキングの重要性と違反した場合の罰則
CEマーキングは、EUで対象製品を上市するための適合表示で、安全・健康・環境などの必須要求事項を満たすことを示します。適合性評価と技術文書の整備を含むメーカーの責務を明確にし、流通の前提になります。
表示がない、または不正表示だと市場監視当局の調査対象となり、是正指導(設計改良、書類補完)に加え、出荷制限、販売停止、回収・撤収、稼働停止が命じられます。罰則は国により異なりますが、罰金や起訴、場合によっては拘留の対象となることもあります。違反情報はRAPEXを通じてSafety Gateで公表される場合があります。
(出典:東京都立産業技術研究センター「FAQ「CEマーキング」一覧」/https://www.iri-tokyo.jp/information/mtep/mtep-faq/ce-list/)
(出典:「CEマーキングEU指令」/https://www.iri-tokyo.jp/uploaded/attachment/15248.pdf#page=9)
2. CEマーキングの関連法令
CEマーキングは、製品分野ごとのEU指令・規則(必須要求事項)と、EN規格(整合規格)を組み合わせて適合性を示す制度です。関連法令・枠組みは主に下記の通りです。
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・ニューアプローチ(1985年採択) 指令・規則は「守るべき最低限(必須要求事項)」を示し、細かな技術要件はEN規格でカバーする考え方です。 ・分野別の指令・規則(製品ごとのルール) 機械(機械指令/機械規則)、電気(低電圧指令、EMC指令など)、医療機器(MDR、IVDR)、玩具安全指令など、製品カテゴリごとに適用ルールが決まります。 ・整合規格(EN規格)とEU官報(Official Journal) 各指令・規則で参照できるEN規格の一覧はEU官報で公表されます。該当規格を適用すると、要求事項を満たしていると見なされやすくなります(適合推定)。 ・規則(EC)No 765/2008(制度の土台) CEマーキングの一般原則や市場監視、通関での管理など、制度全体の枠組みを定めています。 ・決定 No 768/2008/EC(手続きの共通ルール) 適合性評価の進め方を共通化し、モジュール方式として定型化しています。 ・適合性評価に伴う義務(実務で必要になるもの) 技術文書の作成・保管、EU適合宣言書の作成、製品分野によっては届出機関(ノーティファイドボディ)の関与が必要になります。 |
※製品によって複数法令が同時に適用される場合があるため、用途・仕様から適用範囲を確認します。
(出典:日本貿易振興機構 JETRO「CEマーキングの概要:EU」/https://www.jetro.go.jp/world/qa/04S-040011.html)
3. CEマーキングをする流れ
CEマーキングを行う流れは、まず製品に適用する指令・規則を確認し、整合規格と評価手順(モジュール)を定めた上で適合性評価と文書作成を進め、最後にCEマークを表示します。以下で順に説明します。
3-1. 製品に適用する指令や規則を確認する
最初に行うのは、製品に適用されるEUの指令・規則を特定する作業です。用途、使用環境、電源や無線機能の有無、付属品まで仕様を整理し、各法令の適用範囲と照合します。該当法令が複数になるケースも多いため、漏れがないよう一覧化します。
判断が難しい境界領域は、整合規格のスコープや当局のガイダンスを参照し、採否の根拠を技術文書に残します。ここで法令を誤ると後工程の評価方法や書類一式が無効になり得ます。
3-2. 指令や規則に沿って整合すべき規格を決める
適用する指令や規則が決まったら、次に要求事項へ適合させるための根拠を整理します。その際、選択肢の1つが整合規格の活用です。指令や規則の要求事項は抽象的な表現が多く、製品へ直接当てはめて適否を判断しにくい場合があります。整合規格に沿って設計や試験、評価を行うと、規格がカバーする範囲について要求事項を満たしていると見なされやすくなります。これは適合性の推定の考え方です。
一方で、整合規格の採用は原則として事業者の判断に委ねられており、必ずしも整合規格を用いる必要はありません。整合規格を使わない場合は、別の技術的手段で要求事項を満たすことを説明できるよう、根拠と検証方法を技術文書に整理します。整合規格を用いない場合でも、指令や規則の要求事項への適合を技術文書などで説明できれば、適合宣言の作成とCEマーク表示まで対応するケースがあります。ただし、法令や適合性評価手順で整合規格への準拠が義務付けられている場合は、その要求に従うことが必要です。
規格には適用範囲があるため、製品の用途や仕様と照合し、必要に応じて複数の規格を組み合わせます。採用した規格と採用理由、適用範囲は、後工程の技術文書に残します。
3-3. 適合性評価手順(モジュール)を決める
次に、該当する指令・規則が求める適合性評価手順(モジュール)を選びます。多くの製品は自己宣言で進めるモジュールA(内部生産管理)を採用できますが、製品リスクや区分によっては届出機関(ノーティファイドボディ)の関与が必須です。
採用可能なモジュールを確認し、必要な試験・審査の範囲、証明書の要否、担当分担、外部委託の有無を決めます。判断根拠は技術文書に整理して残します。
3-4. 適合性評価を行う
選定したモジュールに基づき、整合規格を採用する場合はその規格に沿って、採用しない場合は別の技術的根拠に基づいて、製品が必須要求事項を満たすかを確認します。設計レビューと必要な試験を行い、使用者や使用環境を想定したリスクアセスメント、取扱説明書・警告表示の妥当性も点検します。
不適合があれば原因を特定して設計、部材、表示、製造工程を修正し、再試験します。届出機関が関与する場合は審査・立会い結果も記録し、試験成績書や評価レポートとして残し、版管理も徹底します。
3-5. 技術文書を作成する
適合性評価の結果を根拠として示すため、技術文書(Technical Documentation)を作成します。技術文書には、回路図や図面、部品表、試験成績書、リスクアセスメント、取扱説明書などをまとめ、どの指令・規則と整合規格に対して適合したのかを追跡できる形にします。
決まった様式はありませんが、市場監視当局から提示を求められた際に、短時間で説明できる構成が重要です。更新履歴と版管理も徹底します。
3-6. 適合宣言書を作成する
技術文書で適合の根拠を整理できたら、EU適合宣言書(DoC)を作成します。これはメーカー(または輸入者)が、適用される指令・規則の要求事項を満たしていることを公式に宣言する文書で、責任者が署名します。
適用法令が複数ある場合でも、宣言書は原則1通にまとめ、対象製品の識別情報、適用した指令・規則、整合規格、必要に応じて届出機関の情報などを記載します。作成後は版管理し、求められた際に提示できるよう保管します。
3-7. CEマークを表示する
適合性評価と技術文書、EU適合宣言書(DoC)の準備が整ったら、最後に製品へCEマークを表示します。表示は原則として製品本体(銘板など)に行い、視認しやすく消えにくい方法で記載します。製品が小さく表示が難しい場合は、包装や添付文書への代替表示が認められることがあります。また近年では、印刷や取り扱い説明書への表示、デジタル形式での提供など提供手段が多様化しているのも実情です。
届出機関が関与する手順では、必要に応じて届出機関番号の併記も行います。表示後も、製品仕様の変更時は再評価が必要になります。
まとめ
CEマーキングは、EU域内で製品を販売する際に必要な適合表示で、安全・健康・環境などの必須要求事項を満たすことを示します。対象はEU加盟27か国、トルコ、EEA加盟のEFTA3か国で、玩具、電気・電子機器、機械、医療機器など分野別の指令・規則で定められた製品が該当します。
手続きは、適用法令の確認、整合規格の選定、適合性評価手順の決定、評価の実施、技術文書とEU適合宣言書の作成、CEマークの貼付という流れで進めます。違反すると販売停止や回収命令、罰金などの罰則が科される場合があります。
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