CBAMとは?仕組みや対象製品・事業者・必要な手続きを解説

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Updated:2026年02月27日

EUが導入を進めるCBAM(炭素国境調整メカニズム)は、EU域外から輸入される製品に対して、製造過程で排出された温室効果ガス量に応じた炭素コストを課す制度です。EU域内で排出量取引制度(EU ETS)が適用される一方、規制の緩やかな国からの輸入品との不公平を是正し、カーボンリーケージを防ぐ目的で設計されています。

2023年10月から移行期間が始まり、2026年1月から本格適用となっていることから、EU向けに対象製品を輸出・輸入する企業には、排出量算定や報告体制の整備が急務となっています。

当記事では、CBAMの基本的な仕組みや対象製品・事業者、求められる手続きや義務などを整理し、実務対応に必要なポイントを分かりやすく解説します。

1. CBAMとは

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CBAM(炭素国境調整メカニズム)とは、EU域外から輸入される特定製品に対し、製造時の温室効果ガス排出量に応じた炭素コストを課す制度です。

EUは「欧州グリーン・ディール」および「Fit for 55」に基づき、2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で55%以上削減し、2050年の気候中立を目指しています。この目標達成のため、EU域内ではEU排出量取引制度(EU ETS)により炭素価格が課されていますが、規制の緩やかな国からの輸入品が増えると、域内産業の競争力低下や排出の域外移転が生じます。

CBAMは、この問題を防ぎ、EU域内外で公平な炭素負担を確保するために導入されました。2023年10月から移行期間が始まり、2026年1月から本格運用が開始されました。

(出典:日本貿易振興機構「EU 炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)」/https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/b56f3df1fcebeecd/20230036.pdf

1-1. CBAMの仕組み

CBAMは、EU域外から輸入される対象製品の「組込排出量」に基づき、EU ETSと連動した炭素価格を課す仕組みです。

組込排出量とは、製品の製造過程で直接・間接的に排出された温室効果ガス量を指します。EU域内の輸入事業者は、対象製品を輸入する前に「認定申告者」として認定を受け、輸入量と組込排出量を記載したCBAM申告書を提出します。本格運用後は、申告された排出量に応じてCBAM証書を購入し、その分の金額を納付する必要があります。証書価格はEU ETSの排出枠価格と連動します。

1-2. CBAMの対象製品

CBAMの対象製品は、カーボンリーケージのリスクが高い分野に限定して始まり、EUの関税分類であるCNコードにより指定されています。

現時点での対象セクターは、セメント、肥料、鉄鋼、アルミニウム、電力、化学の6セクターで、化学セクターについては水素のみが対象です。対象となる温室効果ガスは、製品ごとに異なり、セメントや鉄鋼、電力は二酸化炭素(CO2)、肥料はCO2と亜酸化窒素(N2O)、アルミニウムはCO2とパーフルオロカーボン(PFC)が含まれます。また、最終製品だけでなく、フェロシリコマンガンや鉄鉱石などの前駆体、一部のねじやボルトといった川下製品も対象に含まれます。

1-3. CBAMの対象事業者・対象国

CBAMの義務を直接負うのは、EU域外から対象製品を輸入するEU域内の事業者です。事業者は、輸入前に認定申告者として承認を受けなければ対象製品をEUに輸入できません。認定申告者は、組込排出量の報告やCBAM証書の購入・納付を行います。一方、EU域外の製造業者や輸出者は直接の義務対象ではありませんが、EU側の輸入事業者から排出量データの提出を求められる可能性があります。対象国は原則としてEU域外のすべての国ですが、EU ETSが適用されている、または同制度と完全に連結している国や、同等の炭素価格が実効的に課されている国は適用除外となります。

 

2. CBAMの対象事業者に求められる手続きと義務

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CBAMの本格適用後、EU向けに対象製品を輸入する事業者には、事前申請から排出量報告、証書納付まで一連の手続きが義務付けられます。対応は単発ではなく、毎年継続的に行う必要があるので、自社製品が対象かを正確に把握し、排出量データの収集体制や社内の担当責任を明確にすることが大切です。

ここでは、対象事業者に求められる手続きについて詳しく解説します。

(出典:日本貿易振興機構「EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)解説(基礎編)」/https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/b56f3df1fcebeecd/20230036_02.pdf

2-1. 自社製品(EU域内企業であれば輸入品)が対象か確認

まず、自社がEU向けに取り扱う製品がCBAMの対象に該当するかを確認します。対象かどうかは、製品の種類とEUの関税分類であるCNコードに基づいて判断されます。

現行ではセメント、肥料、鉄鋼、アルミニウム、電力、水素が対象ですが、前駆体や一部の川下製品も含まれます。また、将来的に排出量データの提出を求められる可能性を踏まえ、製造段階での排出量モニタリング体制の検討も求められます。

2-2. 「認定申告者」として事前申請

CBAM対象製品をEUに輸入するためには、「認定申告者」として事前に申請し、認定を受ける必要があります。申請はCBAM登録簿を通じて行い、管轄当局が一定の基準を満たしているかを審査します。

審査は一定基準に申請内容が適合していれば15営業日以内に行われ、認定されると全EU加盟国で有効な地位が付与されます。設立から2会計年度を経ていない事業者には、保証金の提出を求められる場合があります。認定後は、CBAM登録簿にアクセスするための口座番号が付与されます。

2-3. CBAM申告書の提出

認定申告者は、前暦年に輸入した対象製品について、翌年5月31日までにCBAM申告書を提出します。申告書には、製品種類ごとの輸入量、組込排出量、納付が必要なCBAM証書の総数などを記載します。組込排出量は、認定検証者による検証を受け、その検証報告書の写しを添付する必要があります。期限を過ぎた申告は制裁の対象となるため注意が必要です。

2-4. 組込排出量の算出と報告

組込排出量とは、EU域外から輸入される対象製品の生産過程で発生した温室効果ガス排出量を指します。本格適用後は、認定申告者がCBAM申告書に記載する組込排出量について、認定検証者による検証を受ける必要があります。

排出量は原則として実際の測定値に基づき、製品ごとに算出しますが、算出が困難な場合は欧州委員会が定めるデフォルト値の使用が認められています。

2-5. CBAM証書の購入・納付

CBAMの本格適用後、認定申告者は申告した組込排出量に応じてCBAM証書を購入し、納付しなければなりません。CBAM証書は電子形式で発行され、価格はEU排出量取引制度(EU ETS)の排出枠価格と連動します。

原則として、四半期ごとに必要量の50%以上を保有し、毎年9月末までに前年分の組込排出量に相当する証書を納付します。原産国で既に炭素価格を支払っている場合は控除が可能ですが、証明書類の提出が求められます。証書管理の不備は追加納付や制裁につながるため注意が必要です。

3. 2025年12月に公布された関連する下位法令の内容

2026年1月からのCBAM本格適用に向け、2025年12月22日および31日に、CBAM規則を具体化する複数の下位法令がEU官報で公布されました。これらは、組込排出量の算定・検証方法、デフォルト値の設定、CBAM証書の価格算定、認定申告者や検証機関の要件、CBAM登録簿の運用など、実務対応に不可欠な詳細を定めるものです。

公布日 法令番号&情報源 焦点 適用開始
2025年12月22日 (EU) 2025/2551 検証機関への認定付与の条件、認定検証機関の管理及び監督、認定の撤退、ならびに認定機関の相互承認及び相互評価に関する条件 2026年01月01日
2025年12月22日 (EU) 2025/2546 申告組込排出量の検証原則の適用 2026年01月01日
2025年12月22日 (EU) 2025/2547 組込排出量の算定方法 公布20日後
2025年12月22日 (EU) 2025/2548 CBAM証明書の価格の算定及び公表 2026年01月01日
2025年12月22日 (EU) 2025/2549 認定CBAM申告者の地位に関連する条件及び手続き 公布20日後
2025年12月22日 (EU) 2025/2550 CBAM登録簿 2026年01月01日
2025年12月22日 (EU) 2025/2620 排出量取引制度に基づくCBAM証明書提出義務数量に対する無償割当調整量の算定 2026年01月01日
2025年12月31日 (EU) 2025/2621 デフォルト値の設定(組込排出量の決定関連) 2026年01月01日

特に、実排出量に基づく算定と国別・品目別デフォルト値を用いる算定のルールが明確化され、前駆体を含むサプライチェーン全体の排出量把握が求められることになりました。また、デフォルト値には段階的なマークアップが設定され、排出量削減努力の有無がCBAM負担額に直結します。

法令は2026年以降の申告・納付の前提となるため、対象事業者は内容を正確に理解し、算定方法の選択やデータ管理体制を早期に整備する必要があります。

まとめ

CBAMは、EU域内外で公平な炭素負担を確保するために導入される制度であり、対象製品をEUに輸入する事業者には、組込排出量の算定・報告、CBAM申告書の提出、証書の購入・納付といった継続的な対応が求められます。特に本格適用後は、実排出量に基づく算定や認定検証者による検証が原則となり、排出量データの正確性と管理体制の整備が企業の負担額やリスクに直結します。

こうした状況においては、CBAM関連法令の最新動向を継続的に把握し、自社の実務に正しく落とし込むことは不可欠です。先読では、CBAM関連の法令調査やモニタリング、対応支援、適用解釈などを通じて、企業の実務対応を総合的にサポートすることが可能です。サポートが必要な方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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