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EU|高懸念物質(SVHC)案について新たな公開協議が開始(2エントリー)

REACH規則の高懸念物質(SVHC)提案文書に関する公開協議

2024年03月01日、EUにおける一般・工業用化学品の基本法令であるREACH規則の附属書XIV、認可対象物質の候補物質のリストという位置づけのいわゆる「候補リスト」に高懸念物質(SVHC)として特定することを提案する提案一式文書の公開協議が開始されました。期限は2024年04月15日までとなっており、今回の対象は2エントリー(物質または物質群)です。

対象物質

名称 CAS No. 特定理由
Bis(α,α-dimethylbenzyl) peroxide 80-43-3 Toxic for reproduction (Article 57c)
Triphenyl phosphate 115-86-6 Endocrine disrupting properties (Article 57(f) – environment)

主な用途

Triphenyl phosphate(CAS No. 115-86-6)
・プラスチック(コンパウンド)およびゴム製剤(コンパウンド)、コーティング剤および接着剤製品の処方 難燃剤・可塑剤製剤および化粧品の調剤
・プラスチック・ゴム製品の製造(転換)
・接着剤とシーリング剤(屋外・屋内)
・実験用化学薬品としての用途 など

 リン酸トリフェニル(TPhP)は、内分泌かく乱特性を理由にSVHCへの特定が提案されています。
 現状、CLP規則のもと調和分類・表示(CLH)の対象にはなっていません。

Bis(α,α-dimethylbenzyl) peroxide(CAS No. 80-43-3)
・ポリマー
・有機過酸化物および混合物の調剤および(再)包装、化学品流通部門での流通
・プラスチック製品、ゴム製品
・加工助剤
・重合開始剤、架橋剤または硬化剤としての有機過酸化物の工業的使用
・コンパウンドと転換を含むプラスチック製品の製造 ポリマー産業における有機過酸化物の工業的使用 など

高懸念物質(SVHC)とは?

高懸念物質(Substance of Very High Concern, SVHC)とは、その名の通り、懸念の程度が高い物質ですが、EUの化学物質規制の基幹法令たるREACH規則では、明確にその位置づけ、判断基準、特定プロセス等を規定しています。

1.位置づけ

SVHCの位置づけは、REACH規則附属書XIVに列挙されている認可対象物質の「候補物質」というものです。そのため欧州化学品庁(ECHA)が公表・管理しているSVHCの物質リストは「候補リスト(Candidate List)」として知られています。日本語の表現として混乱しがちですが、候補リストはSVHCを選ぶためのリストではなく、認可対象物質の候補のSVHCリストとなります。

2.判断基準

では、どのような物質がSVHCとして特定されるのでしょうか?単に懸念の程度が高いといっても、様々な有害性があり、それぞれに懸念の程度の問題があります。この点について、REACH規則では次のようにSVHCの特定基準を設けています。下記のいずれかがSVHC特定の公表の際に、特定理由として明らかにされる内容になります。

SVHC提案の対象となるのは以下の条件のいずれか、または複数に該当する物質である。

■ CLP規則に従って、発がん性区分1Aまたは1Bの分類基準に該当する物質

■ CLP規則に従って、変異原性区分1Aまたは1Bの分類基準に該当する物質

■ CLP規則に従って、生殖毒性区分1Aまたは1Bの分類基準に該当する物質

■ REACH規則附属書XIIIの基準に従い、難分解性、生体内蓄積性および有害化学毒性(PBT)を有する物質

■ REACH規則附属書XIIIの基準に従い、極めて難分解で生態蓄積性の高い特性(vPvB)を有する物質

■ 内分泌かく乱特性を有するか、難分解性、生体内蓄積性および有害化学毒性(PBT)を有する、もしくは、極めて難分解で生態蓄積性の高い特性を有するような物質(vPvB)であって、(d)または(e)の基準を満たさないが、(a)から(e)に列記した他の物質と同等レベルの懸念を生じさせるような、ヒトまたは環境に対する深刻な影響をもたらすおそれがあるとの科学的証拠があり、かつ第59条に定める手続きに従って個別に特定される物質

(REACH規則第57条「附属書XIVに含まれることとなる物質」より一部引用・仮訳 ※一部省略および略称補足)

3.特定プロセス

SVHCを特定するプロセスもREACH規則で詳細に規定されています。ここでは覚えておくべき点として次のものがあります。

■ SVHCが特定されるケースには3種類あること

    1.  公開協議でコメントがなく、そのECHAがウェブサイト上で公表するケース
    2.  公開協議でコメントがあり、専門委員会の協議で全会一致となり、ECHAがウェブサイト上で公表するケース
    3. 公開協議でコメントがあり、専門委員会の協議で全会一致とならず、欧州理事会および議会で検証した後、法令文書である「決定」の形で公布されるケース

日本で知られている情報に「SVHCは年2回公表される」という内容をたまに見かけますが、上記3つのケースがあるため、SVHCの公表・特定は年2回とは限りません。これは、実際に過去にどのくらいの頻度で、どの時期にSVHCが特定されていたのかを検証すると明らかになります。

コンプライアンス対応上、注意しておきたいことは、上記3つのケースでは特定までの所要時間が異なるため、SVHCが特定されるかどうかは、時期を予め特定せず、常に情報をチェックしておく必要があるという点です。

  • SVHC特定の元となる情報は、REACH規則の元での登録情報や、CLP規則のもとでの分類情報であること

新たにSVHCを特定する、新たな収載理由を追加するための提案は、欧州委員会の要請を受けたECHAか、各加盟国の所轄当局が行いますが、基本的にその元となる情報源は、REACH規則の元で蓄積された情報や、CLP規則のもとでの有害性分類情報です。

勿論、新たな試験結果や文献情報も参考にされますが、特に、CLP規則のもとで運用されている調和分類・表示(CLH)制度の分類結果には注意が必要です。CLHの分類は、欧州委員会、理事会および議会が検討・審議して決定した分類結果であるため、EUでの検討においては、信頼性の高い情報としてみなされます。

つまり、ここでの注意喚起はSVHCはREACH規則のもとで敷かれている規制であるとはいえ、その新規特定には、CLP規則のもとでの有害性分類情報も重要であるという点です。CLP規則のもとでの分類情報はC&Lインベントリーで一括管理されています。

高懸念物質(SVHC)に特定されると?

SVHCに課せられる要件は多岐にわたります。

特定されてから半年以内の届出要件、SDSへの記載要件、閾値以上でSVHCを含有する成形品の供給者に対する情報伝達要件、成形品の廃棄物処理の観点から新たに追加された成形品に含まれるSVHCのデータベース(SCIPデータベース)への通知要件など様々な要件が存在します。

さらなる詳細にご関心のある方、整理をご希望の方は個別調査で対応可能です。

参考

■ SVHC意見募集ページ/ECHA

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