| 法令の情報時期:2019年12月 公布版 | ページ作成時期:2026年05月 |
目的
本指令は、デジタル時代に対応した消費者保護ルールの現代化と実効性強化を目的に、既存の4つのEU指令(不当契約条項指令No 93/13/EEC、消費者向け製品価格表示指令No 98/6/EC、不公正商慣行指令No 2005/29/EC、消費者権利指令No 2011/83/EU)を改正するものである。
概要
本指令では既存の4つのEU指令のうち、第1条には不当契約条項指令No 93/13/EEC、第2条には消費者向け製品価格表示指令No 98/6/EC、第3条には不公正商慣行指令No 2005/29/EC、第4条には消費者権利指令No 2011/83/EUの追加・修正内容が明記されている。
本指令の主な柱は、デジタル取引への適応と透明性の確保である。SNSや無料アプリ等、金銭ではなく「個人情報の提供」を対価とするデジタルサービスを新たに適用対象とし、有料サービスと同等の保護を義務付けた。
ECサイトやプラットフォーム上における検索順位の決定基準の開示、過去30日間の最安値を基準とする値引き表示ルール、サクラレビューやボットによるチケット買い占めの禁止、さらに個人の属性に応じた自動価格設定(個人別価格、パーソナライズ価格)の開示義務など、多岐にわたるオンライン上の規制が新設された。
実効性を高めるため、加盟国をまたぐ広範な違反に対して「年間売上高の少なくとも4%」または「200万ユーロ以上」を罰金の上限とする強力な共通の罰則枠組みを導入した。
不公正な商慣行等により被害を受けた消費者個人が、契約解除や損害賠償を直接請求できる民事上の救済手段の確保を加盟国に義務づけており、事業者にはこれまで以上に厳格な法遵守体制の構築が求められている。
適用除外(対象外・猶予・免除等)
なし(本指令により改正される4つの既存指令の適用範囲による)
事業者が注意すべき内容
| 本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。 ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。 |
指令No 93/13/EEC(不当契約条項指令)の改正として、第8b条が追加された。
加盟国は、本指令(No 93/13/EEC) に違反した事業者に対し、効果的かつ均衡の取れた、抑止力のある罰則を科すための規則を定め、その実施に必要なあらゆる措置を講じなければならない。(詳しくは第1条 第1項参照)
加盟国は、EU域内の広範な侵害に対して罰金を科す際、その最高額を対象加盟国における販売者または供給者の年間売上高の少なくとも4%としなければならない。販売者または供給者の年間売上高に関する情報が得られないときは、その上限額が少なくとも200万ユーロとなる罰金を科すことができるようにしなければならない。(詳しくは第1条 第4項~第5項参照)
指令No 98/6/EC(消費者向け製品価格表示指令)に第6a条が追加された。
事業者は、価格低減(値引き)を公表する場合、値引きの適用前に適用していた「以前の価格」を表示しなければならない。「以前の価格」とは、当該価格低減の適用前の30日以上の一定期間において、当該販売事業者が適用した最も低い価格を指す。
ただし加盟国は、急速に劣化し、または賞味期限が切れる恐れのある製品については異なる規定を定めることができる。
事業者は、加盟国が規定する場合、「以前の価格」を最初の値引きの適用前の価格として、その後の段階的な値引きにおいても継続して使用することができる。(詳しくは第2条第1項参照)
指令No 98/6/ECの第8条が改正され、下記の内容が明記された。
加盟国は、価格表示ルールに違反した事業者に対し、効果的かつ抑止力のある罰則を定めなければならない。
罰則を科す際は、侵害の重大性、事業者の是正措置、過去の違反歴、侵害による経済的利益などを総合的に考慮して決定される。(詳しくは第2条第2項参照)
指令No 2005/29/EC(非公正商慣行指令)改正により、第3条(適用範囲)に以下の内容が追加される。
消費者の正当な利益を、攻撃的または誤認を招くような商慣行から保護するために、事業者が抜き打ちで自宅訪問を行うこと、または事業者による消費者の自宅への移動販売が、加盟国により制限または禁止されることがある。(詳しくは第3条第2項参照)
同指令No 2005/29/EC 第6条(誤認を招く作為)に、以下の項目が追加される。
「2. (c) 商品を、複数の加盟国において同一であるかのように販売しているが、実際にはその組成や特徴において著しく異なる場合(いわゆる二重の品質)。」(詳しくは第3条第3項参照)
同指令No 2005/29/EC 第7条(誤認を招く不作為)に、以下の義務が追加される
「4. オンラインマーケットプレイスにおいて、商品やランキングを提示する際、事業者は以下の情報を消費者に提供しなければならない。
(a) 提示される商品の検索順位が、どのような主要なパラメータ(基準)に基づいて決定されているか。
(b) 商品を提供している第三者が「事業者」であるか、あるいは「非事業者(個人)」であるか。
非事業者の場合、消費者保護法が適用されない旨を告知しなければならない。」(詳しくは第3条第4項参照)
同指令No 2005/29/ECに第11a条が追加された。加盟国は、不公正な商慣行によって被害を受けた消費者に対し、契約の解除、代金減額、損害賠償請求といった民事上の救済手段を確保しなければならない。(詳しくは第3条第5項参照)
同指令No 2005/29/EC 第13条が置き換えられ、罰則が大幅に強化された。 加盟国は、指令(EU) 2017/2394の第21条で定義される「広範な侵害」行為に対し、当該加盟国における事業者の年間売上高の少なくとも4%(売上高が算出できない場合は少なくとも200万ユーロ)を罰金の上限として科さなければならない。(詳しくは第3条第6項参照)
同指令No 2005/29/EC 附属書 I(いかなる状況下でも不公正とされる商慣行)に、以下の項目が追加される。
11a. 消費者の検索クエリに応じた製品の提示において、より高い掲載順位を得るために事業者が支払った広告料または支払を、ランキングの一部として明確に開示することなく、ランキングを提供する行為。
23a. 事業者が、イベントチケットの購入に関する制限を回避するために自動化された手段(ボット等)を使用して購入したチケットを、消費者に転売する行為。
23b. 製品についてのレビューが、実際にその製品を使用または購入した消費者によるものであることを確認するための合理的かつ均衡の取れた措置を事業者が講じることなく、それらのレビューが真正であると表明する行為。
23c. 製品を宣伝するために、偽の消費者レビューや推薦文を投稿し、もしくは他者に投稿を依頼し、またはソーシャルメディア上のレビューや投稿を歪曲して表示する行為。(詳しくは第3条第7項参照)
指令No 2011/83/EU (消費者権利指令)の改正において、第2条第1項が改正される。消費者が金銭を支払う取引だけでなく、金銭を支払わずに「個人データを提供」して利用するデジタルサービスやコンテンツ取引(SNS、無料クラウド、無料アプリ等)も本指令の適用対象となる。(詳しくは第4条第1項参照)
指令No 2011/83/EU 第5条第1項が改正される。事業者は、店舗での通常販売(営業所内契約)において、事業者の「電話番号」や「その他のオンライン通信手段(消費者がやり取りを記録・保存できるもの)」を消費者に提供しなければならない。(詳しくは第4条第3項参照)
指令No 2011/83/EU 第6条が改正される。プラットフォーム運営者は、消費者が契約を結ぶ前に以下の情報を明確に提示しなければならない。
・ランキングを決定する主なパラメータ(基準)とその相対的な重要度。
・取引相手(売り手)が「事業者」か「非事業者(個人)」か。
・相手が個人の場合、EUの消費者保護法が適用されない旨の警告。(詳しくは第4条第4項参照)
指令No 2011/83/EU に第6a条が追加される。事業者は、EC(遠隔契約)や訪問販売(営業所外契約)において、事業者の電話番号に加え、消費者が内容を保存できる、メールアドレス等の電子的な通信手段の情報を事前に提供しなければならない。また、アルゴリズムによって価格が消費者ごとに自動調整されている場合は、その旨を消費者に開示しなければならない。(詳しくは第4条第5項参照)
指令No 2011/83/EU 第7条第3項が置き換えられる。消費者が、解約期間内に、限定された数量または定量で販売されていないサービス、あるいは水道、ガス、電気の供給、または地域暖房の提供の開始を希望する場合、かつ、当該契約により消費者に支払義務が課される場合には、消費者の事前の明示的な同意と権利喪失の確認により解約権(キャンセル権)の対象外となる。(詳しくは第4条第6項参照)
指令No 2011/83/EU第8条が改正される。事業者は、契約締結前の限られたスペース/時間において、最低限、以下の重要情報をその媒体上で直接(または適切な動線を通じて)提示しなければならない。
・商品・サービスの主な特徴
・事業者の身元
・合計金額
・解約権(キャンセル権)に関する情報
・契約期間(および無期契約の場合は解約条件)
解約フォームのひな形など、上記以外の法定情報については、別の適切な方法で消費者に確実に提供しなければならない。(詳しくは第4条第7項参照)
消費者が、14日間の契約解約期間中に有料のサービス(または水道・ガス・電気・地域暖房等の供給)の即時開始を希望する場合、事業者は消費者に対し、以下を要求しなければならない。
1.開始の希望について、事業者に対し明示的な請求(要請)を行うこと。
2.事業者がサービスを完全に履行した後は、消費者の解約権(キャンセル権)が消滅することを確認すること。(詳しくは第4条第7項参照)
指令No 2011/83/EU第9条が改正される。事業者が訪問販売や強引な出張販売(営業所外契約)を行った場合、加盟国は消費者による契約解約可能期間を通常の14日間から最大30日間に延長できる。(詳しくは第4条第8項参照)
指令No 2011/83/EU第13条に第4~第8項が追加される。
事業者は、消費者の個人情報に関して、GDPR(EU一般データ保護規則)に基づく義務を順守しなければならない。
事業者は、個人データを対価とするデジタルサービスが解約された場合、そのデータの利用を停止しなければならない。
事業者は、消費者が解約権を行使した際、消費者が生成した個人情報以外のデータ(ただし他者と共有されておらず、単独で無価値なもの等を除く)を、消費者の要求に応じて無償かつ合理的な期間内に利用可能な形式で返還・提供しなければならない。(詳しくは第4条第10項参照)
指令No 2011/83/EU第16条が改正される。サービスが完全に提供された後は、消費者は契約を撤回できない。ただし、それが有償の契約である場合、事業者が消費者の契約撤回権を失効させるためには、以下のすべてを満たしてサービスを開始しなければならない。
・事前の明示的な同意:消費者から「(本来のキャンセル可能期間内であっても)先にサービスを開始してよい」という明示的な同意を事前に得ること。
・権利喪失の認識:消費者が「サービスが完全に完了した時点で、契約撤回権を失う」という事実を確認していること。
ダウンロードやストリーミングなど、有形媒体(CD/DVD等)を伴わないデジタルコンテンツの提供において、配信・利用が開始された後は、原則として解約(キャンセル)できない。ただし、それが有償の契約である場合、事業者は以下のすべてを満たさなければ消費者の解約権を失効させられない。
1.期間内の開始への同意:本来の解約期間(通常14日間)中に、コンテンツの提供を開始することについて、消費者から事前の明示的な同意を得ること。
2.権利喪失の認識:それによって解約権を失うという事実を消費者が確認していること。
3.確認書の提供義務:事業者が、同意や認識の事実を含む契約内容の確認書を法律に従って消費者に提供していること。(詳しくは第4条第12項参照)
指令No 2011/83/EU第24条が置き換えられ、第3条(不公正商慣行指令)と同様、本指令の違反に対しても、実効性があり、抑止力のある罰則が科される。EU全体にまたがる広範な違反には、年間売上高の少なくとも4%(または200万ユーロ)の罰金上限が適用される。(詳しくは第4条第13項参照)
指令No 2011/83/EU指令附属書Ⅰが改正される。消費者が解約時に使用する「標準解約フォーム」の文言が更新されており、事業者は、自社のWebサイト等で提供する解約フォームや雛形を最新の様式に合わせて修正する必要がある。(詳しくは第4条第15項参照)
注目定義
<対象者>
■ 「消費者」(consumer)
| 「消費者」とは、自己の取引、ビジネス、工芸、または専門職の範囲外の目的で行動する自然人をいう。 |
■ 「事業者」(trader)
| 「事業者」とは、その取引、ビジネス、工芸、または専門職に関連する目的で行動する、公的または私的な自然人または法人、および、事業者の名において、または事業者の代理として行動する者をいう。 |
■ 「販売者」(seller)
| 「販売者」とは、その取引、ビジネス、工芸、または専門職に関連する目的で行動し、消費者に商品を販売または提供する事業者をいう。 |
■ 「供給者」(supplier)
| 「供給者」とは、公的または私的を問わず、本指令の対象となる契約において、その取引、ビジネス、または専門職に関連する目的で行動する自然人または法人をいう。 |
<対象製品>
■ 「商品」(goods)
| 「商品」とは、あらゆる有形の動産をいい、特定の限定された範囲で提供される水、ガス、電気などを含む。 |
■ 「デジタルサービス」(digital service)
| 「デジタルサービス」とは、消費者がデジタル形式のデータを作成、処理、保存、またはアクセスすることを可能にするサービス、あるいは消費者がアップロードまたは作成したデータを共有・やり取りすることを可能にするサービスをいう。 |
■ 「デジタルコンテンツ」(digital content)
| 「デジタルコンテンツ」とは、デジタル形式で作成および提供されるデータをいう。 |
■ 「販売価格」(selling price)
| 「販売価格」とは、商品の単位、または一定数量の商品に対する、消費税等を含む最終的な価格をいう。 |
■ 「単位価格」(unit price)
| 「単位価格」とは、商品の1キログラム、1リットル、1メートル等、当該加盟国で使用される単一の単位あたりの最終的な価格をいう。 |
■ 「オンラインマーケットプレイス」(online marketplace)
| 「オンラインマーケットプレイス」とは、消費者が、事業者または他の消費者と遠隔契約を締結することを可能にする、ウェブサイト、ウェブサイトの一部、またはアプリ等のソフトウェアを用いたサービスをいう。 |
■ 「ランキング(順位付け)」(ranking)
| 「ランキング(順位付け)」とは、事業者が提示、組織、または伝達する商品の相対的な目立ちやすさをいい、アルゴリズム、評価・格付けの仕組み、視覚的な誘導、またはその他の索引付けツールの使用によるものをいう。 |
■ 「不公正な商慣行」(unfair commercial practices)
| 「不公正な商慣行」とは、専門的注意の要件に反し、平均的な消費者の経済的行動を著しく歪める、または歪める可能性のある商慣行をいう。 |
■ 「誤認を招く作為」(misleading actions)
| 「誤認を招く作為」とは、事実に反する情報、あるいは何らかの方法で消費者を欺き、消費者が本来行わなかったはずの取引決定を行わせる行為をいう。 |
■ 「不当な勧誘」(undue influence)
| 「不当な勧誘」とは、消費者の意思決定能力を著しく制限するような方法で、強制、強要、または物理的な力を含む不適切な力を行使することをいう。 |
■ 「標準的な契約条項」(standard contractual terms)
| 「標準的な契約条項」とは、あらかじめ作成され、消費者がその内容に影響を与えることができなかった契約条項をいう。 |
■ 「不当な条項」(unfair terms)
| 「不当な条項」とは、誠実の原則に反し、消費者にとって著しく不利な権利義務の不均衡を引き起こす契約条項をいう。 |
■ 「広範な侵害」(widespread infringement)
| 「広範な侵害」とは、少なくとも3つの加盟国において、多数の消費者の共通の利益を害する行為や作為、またはこれに類する広域的な侵害をいう。 |
■ 「解約権」(right of withdrawal)
| 「解約権」とは、消費者が理由を告げることなく、また費用を負担することなく、一定期間内(通常14日間)に契約を解除できる権利をいう。 |
■ 「適合性」(conformity)
| 「適合性」とは、提供される商品、デジタルコンテンツ、またはサービスが、契約上の説明、数量、品質基準、および消費者が合理的に期待する機能を満たしている状態をいう。 |
■ 「個人別価格」(personalised price)
| 「個人別価格」とは、自動化された意思決定および消費者行動のプロファイリングに基づき、特定の消費者向けに提示された価格をいう。 |
目次
前文 1~60
第1条 指令No 93/13/EECの改正
第2条 指令No 98/6/ECの改正
第3条 指令No 2005/29/ECの改正
第4条 指令No 2011/83/EUの改正
第5条 情報発信
第6条 欧州委員会による報告および見直し
第7条 国内法化
第8条 発効日
第9条 名宛人
基礎情報
| 法令(現地語) | |
| 法令(日本語) | 消費者保護規則の執行強化および近代化に関する2019年11月27日付け欧州議会および理事会指令 No (EU) 2019/2161(理事会指令No 93/13/EECならびに欧州議会および理事会指令98/6/EC、2005/29/ECおよび2011/83/EUを改正) |
| 公布日 | 2019年12月18日 |
| 所管当局 | 欧州委員会 司法・消費者総局(DG JUST) |
作成者
株式会社 先読 + 齋藤 由貴子