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タイ|刑法典改正の草案についてパブリックコメントを募集

個人・法人に対する刑事責任を明確に分けることを目的としたもの

※特別無料記事

法制委員会事務局のホームページ上で刑法典改正の草案についてのパブリックコメントが2023年05月02日より公募されました。

刑法典改正草案の目的とは

タイにおける現行の刑法典は「仏暦2499年(西暦1956年)刑法典」であり、改訂増補を繰り返しながら今に至ります。

その中において刑罰は

①死刑
②懲役
③拘留
④罰金
⑤財産の没収

5つの種類に類別されていますが、個人・法人、いずれに対するものかの区別は明確に定義されておらず、また、刑事責任に関する基本原則についても同様に個人・法人の区別が明確ではありません。 

今回の刑法典改正の草案は法人に対する刑罰と刑事責任の基本原則を刑法典の中で明文化することにより、個人に対するものとはっきりと区別することに焦点を当てたものとなっています。

刑法典改正草案の内容

今回の刑法典改正草案の主な内容は以下の通りです。

第18/1条、第18/2条の追加

刑法典の第3章「刑罰および保安処分」第1節「罰」第18条において、刑罰は ①死刑 ②懲役 ③拘留 ④罰金 ⑤財産の没収の5つである旨定められていますが、この第18条に新たに第18/1条、第18/2条の追加がなされています。

■第18条/ 1条 法人が犯罪者である場合に対する罰(罰金、財産の没収)

法人に対し具体的な罰が定められていない場合、以下の原則をもとに法人を罰するものとする。

1)懲役もしくは死刑に処される犯罪の場合:
  1,000万バーツを超えない罰金を科すものに替え法人を罰するものとする

2)懲役および罰金に処される犯罪、もしくは้ひとつの罪状に対する罰金が処される場合:
  法人に対しては科せられた罰金の5倍を超えない額の罰金が科せられるものとする。

ただし、一定の額が定められていない他罰金を科す犯罪については、定められた規定に準じて法人に罰金刑を科す。法人に対する公訴時効は、当該犯罪に対する当初の刑罰規定に従うものとする

■第18 / 2条  裁判所が第18条/1 第2段に基づき法人に刑罰を科し、法人の行動や振る舞いの重大さを考慮した場合、要請の有無に関わらず、以下の措置より然るべきものをひとつ、発出することができる。

1)法人の解散:犯罪を目的として設立された法人、または犯罪を犯すために本来の事業範囲を逸脱した行為をした場合

2)事業所またはコンピュータシステムの閉鎖、もしくは最長5年、または恒久的に犯罪に使用されていたコンピュータシステムから発せられる情報の発信・消去の停止

3)最長5年、または恒久的に一般市民から資金を集めることを禁ずる
・・・など、全6項目。但し、1)2)の措置は国営企業には適用されない。

「刑法典改正草案についてのパブリックコメント募集」より引用、仮訳

第59/1条の追加

刑法典の第59条(※1)では、刑事上の責任を問われる行為に関して規定されていますが、これに法人に対するものを第59条/1として追加しています。
※1 第59条は、第1編: 総則 / 第1部:一般犯罪に関する通則 / 第4章:刑事責任の中で規定されているものです。

■第59/1条

法人の代表、もしくはその権限を持つ者による、その権限の範囲内における法人の利益を目的とした行為に対し、法人は刑事責任を負う。国営企業を除く各行政機関は、特段の定めがない限り刑事責任は負わないものとする。

法人が刑事責任を負う・負わないに関わらず、犯罪を犯した個人やその共犯者の刑事責任が免責されることはない。

「刑法典改正草案についてのパブリックコメント募集」より引用、仮訳

第196/1条の追加

刑法典の第196条(※2)では、第50条(※3)に基づく裁判所の差止命令に違反した者は6か月以下の懲役もしくは1,000バーツ以下の罰金、もしくはその両方に処する旨を定めていますが、これに法人に対するものを第196/1条として付け加えています。

※2 第196条は、第2編: 罰 / 第3部:司法に関連する罪の中で規定されているものです。
※3 第50条では、下記を定めています。

裁判所が個人を罰する際、その者が自身の事業や職業により罪を犯し、なおかつその事業や職業を継続すれば再び同様の罪を犯すであろうと判断した場合においては、判決を言い渡す際に、刑の終了した日から 5 年を超えない期間、その職業への就業を禁止することを命じることができる

「仏暦2499年(西暦1956年)刑法典」より引用、仮訳

第196/1条の内容は以下の通りです。

■第196/1条

第18/2条に基づく判決文による裁判所命令に背く、もしくは従わない法人に対し、5万バーツから30万バーツの罰金を科す。
第1段に関して法人が裁判所命令に背く、もしくは従わないことで利益を得る場合は、その利益の2倍を超えない、かつ第1段で規定される最低罰金額を下回らない額の罰金を科す。

第1段の違反が、法人の経営者側による命令や所業の場合、もしくは法人が違反するまで経営者側が何も対処しなかったことに依る場合、当該者に1年以下の懲役、もしくは30万バーツの罰金、あるいはその両方を科す。

「刑法典改正草案についてのパブリックコメント募集」より引用、仮訳

参考

「刑法典改正草案についてのパブリックコメント募集」2023年5月2日より法制委員会事務局のホームページ上にて公募

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