| 法令の情報時期:2023年12月 統合版 | ページ作成時期:2026年06月 |
目的
本指令は、職場におけるアスベストへのばく露から生じる、または生じる恐れのある健康へのリスクから労働者を保護することを目的として、以下の事項を定めている。
■ アスベストばく露による健康リスクの防止および、そのようなリスクからの労働者保護。
■ アスベストばく露に関する限界値(ばく露限界値)の設定。
■ 労働者の安全と健康を確保するための追加要件の確立。
概要
本指令は、EUにおけるアスベストに関連する労働安全衛生の基準を定めたものである。
■ 背景・問題意識:アスベスト(石綿)は特定の繊維状ケイ酸塩を指し、発がん性物質(カテゴリー1A)に分類されている。アスベスト繊維の吸入は、アスベスト肺、中皮腫、肺がん等の深刻な健康被害を引き起こすため、厳格な管理が求められる。
■ 適用範囲:労働者がその業務において、アスベストまたはアスベスト含有材料から発生する粉じんにばく露される、あるいはばく露される可能性があるすべての活動に適用される。
■ 主な事業者要件: 事業者には、リスク評価の実施のほか、ばく露限界値の遵守とばく露の最小化および衛生措置の実施、労働者への適切なトレーニングの提供、ならびに健康監視の実施と記録の長期保存等が求められる。
■ 施行時期:本指令(統合版)は2023年12月20日に発効しており、特定のばく露限界値の変更について2029年12月21日から適用される段階的なスケジュールが設けられている。
適用除外(対象外・猶予・免除等)
事業者が注意すべき内容
| 本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。 ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。 |
リスク評価と活動の優先順位
■ リスク評価の実施:アスベスト粉じんばく露のリスクがある活動では、評価を行ってばく露の性質と程度を見極め、アスベストの除去を封じ込めやシーリング等の対処法よりも優先しなければならない(第3条第2項)。
■ 労働者との協議と見直し:リスク評価は社内の労働者またはその代表者と協議の上で行い、評価内容が不正確であると疑われる場合や作業に重大な変更があった場合には見直さなければならない(第3条第5項)。
当局への届出義務
■ 事前の届出:作業開始前に、加盟国の指定当局へ届出を提出しなければならない(第4条第2項、第3項)。
■ 届出内容:作業場所、使用するアスベストの種類と量、従事する労働者数と個別のトレーニング証明書、最新の健康監視日、作業期間、ばく露制限措置等を含める必要がある(第4条第3項)。
■ 情報の更新:作業条件の変更によりばく露が大幅に増加する恐れがある場合は、新たに届出を行わなければならない(第4条第5項)。
禁止事項とばく露の最小化
■ 吹き付けおよび低密度材料の禁止:アスベストの吹き付け工程、および密度1g/cm³未満のアスベスト含有断熱・遮音材の使用は禁止される(第5条)。
■ 抽出・製造の禁止:アスベストの抽出、アスベスト製品の製造・加工は原則禁止されている。ただし、解体や除去作業に伴う処理は除外される(第5条)。
■ ばく露の最小化措置:ばく露を技術的に可能な限り低く抑えるため、従事者数の制限、粉じんを発生させない作業プロセスの設計、発生源での吸引、除染手順の実施、適切な清掃、および密閉容器での保管・輸送を行わなければならない(第6条)。
測定とばく露限界値
■ 空気中濃度の測定:リスク評価の結果に基づき、特定の作業段階で空気中のアスベスト繊維を定期的に測定しなければならない(第7条第1項)。
■ 測定の実施要件:サンプリングは労働者が実際にばく露される量を反映しなければならず、有資格要員が実施し、電子顕微鏡または同等の精度を持つ方法で計数しなければならない(第7条第2項、第4項、第6項)。
■ ばく露限界値の遵守: ・2029年12月20日まで:8時間加重平均で0.01繊維/cm³を超えてはならない(第8条第1項)。 ・2029年12月21日以降:より細い繊維も計数対象に含めた上で0.01繊維/cm³、または0.002繊維/cm³という、加盟国が選択する厳格な限界値を遵守しなければならない(第8条第2項、第3項)。
限界値超過時および異常事態への対応
■ 作業の即時停止:限界値を超えた場合、または事前に特定されていないアスベスト含有材料が撹乱された疑いがある場合は、直ちに作業を停止し、対策が完了するまで再開してはならない(第10条第1項)。
■ 呼吸用保護具と休憩の付与:他の手段でばく露を低減できず保護具の使用が不可避な場合、その使用は最小限とし、身体的・気候的条件に応じた適切な定期的な休憩時間を設けなければならない(第10条第3項)。
事前調査と作業計画
■ アスベストの特定:解体やメンテナンス等の開始前に、所有者等から情報を得るか、専門家による調査を行い、アスベストの有無を特定しなければならない(第11条)。
■ 作業計画書の作成:解体や除去作業の開始前に、アスベストの事前除去や作業後のリスク不在確認の手順を含む作業計画を策定しなければならない(第13条)。
労働者の保護、教育、監視
■ トレーニングの提供:ばく露の恐れのあるすべての労働者に対し、定期的に、労働者側の費用負担なしに、内容の理解しやすいトレーニングを提供しなければならない(第14条)。
■ 衛生設備の提供:喫煙の禁止、飲食エリアの分離、適切な作業着の提供、およびシャワーを含む洗浄・トイレ施設の設置を行い、労働者に費用を負担させてはならない(第16条)。
■ 健康監視の実施:ばく露開始前に健康状態の評価を行い、その後少なくとも3年に1回は継続的に評価を受けさせなければならない(第18条第2項)。
■ 登録および記録の保管:雇用主は、従事した労働者とそのばく露内容を登録簿に記録し、ばく露終了後も少なくとも40年間保管しなければならない(第19条第2項、第3項)。
将来的に事業者へ影響を及ぼすと思われる内容
■ 限界値のさらなる引き下げ検討:欧州委員会は2028年12月31日までに、技術進歩に基づき、限界値をさらに引き下げる可能性を評価する(第22a条)。
■ 対象物質の拡大:エリオナイト等の他の繊維状ケイ酸塩を本指令の対象に含めるべきかどうかの評価が進行中である(第18c条)。
■ 一部要件の適用免除:以下の条件をすべて満たす場合、加盟国は一部の要件(第4条の届出、第18条の健康監視、第19条の登録)の適用を免除することができる。ただし、ばく露が散発的かつ低強度であり、ばく露限界値を超えないことがリスク評価から明らかな場合に限られる(第3条第3項)。
・非脆性材料のみを取り扱う、短時間の非連続的なメンテナンス活動。
・アスベスト繊維が基質にしっかりと結合しており、劣化していない材料を損傷させずに除去する作業。
・良好な状態にあるアスベスト含有材料の封じ込めまたはシーリング作業。
・特定の材料がアスベストを含んでいるか確認するための空気モニタリング、制御、およびサンプルの収集。
注目定義
■ 「アスベスト」(asbestos)
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欧州議会及び理事会規則(EC)No 1272/2008(2)の附属書VI、パート3に従って発がん性物質1Aに分類される以下の繊維状ケイ酸塩。
(a)アクチノライト、CAS番号 77536-66-4 (b)アモサイト (グルネライト)、CAS番号 12172-73-5 (c)アンソフィライト、CAS番号 77536-67-5 (d)クリソタイル、CAS番号 12001-29-5 (e)クロシドライト、CAS番号12001-28-4 (f)トレモライト、CAS番号 77536-68-6 |
■ 「ばく露限界値」(limit values)
| 労働者が吸入する空気中のアスベスト濃度の許容上限値。 |
■ 「散発的かつ低強度のばく露」(sporadic and low-intensity exposure)
| 一部要件が免除される条件となる、定期的でない非常に低いレベルのばく露。 |
目次
※各条項のタイトルは内容に基づき当社で仮設定
第1条:目的
第2条:定義
第3条:適用範囲およびリスク評価
第4条:届出
第5条:禁止事項
第6条:ばく露の低減措置
第7条:測定手法
第8条:ばく露限界値
第10条:限界値超過時の措置
第11条:アスベストの存在特定
第12条:限界値超過が予想される場合の措置
第13条:作業計画書
第14条:作業員トレーニング
第15条:アスベスト関連作業の許可制
第16条:衛生および個人保護
第17条:情報の提供
第18条:健康監視
第18a条:委任権限の行使
第18b条:緊急手続
第18c条:科学的知見に基づくリストの見直し
第19条:登録および記録の保管
第20条:罰則
第21条:アスベストに関連した職業病の登録
第22条:実施報告
第22a条:将来的な見直しと技術支援
第23条:国内法規定の伝達
第24条:廃止
第25条:発効
第26条:宛先
※第9条は欠番
附属書
附属書I:第18条第2項第2段に言及される労働者の臨床評価に関する実務上の勧告
附属書Ia:トレーニングに関する最小要件
附属書II:廃止された指令およびその累次改正の一覧
附属書III:相関表(旧指令との対照表)
基礎情報
| 法令(現地語) | |
| 法令(日本語) | 職場におけるアスベストばく露に関連するリスクからの労働者保護に関する2009年11月30日付欧州議会および理事会指令2009/148/EC |
| 公布日 | 2009年12月16日 |
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