| 法令の情報時期:2024年04月 統合版 | ページ作成時期:2026年06月 |
目的
本指令は、職場における発がん性物質、変異原性物質、または生殖毒性物質へのばく露から生じる、あるいは生じる可能性のある労働者の安全および健康へのリスクから労働者を保護すること、当該リスクの予防を目的としている。
■ 職場におけるばく露に関連するリスクの予防。
■ 健康と安全を保護するためのばく露限界値を含む、特定の最低要件の設定。
概要
本指令は、EUの労働安全衛生枠組み指令(89/391/EEC)の第16条第1項に基づく「第6個別指令」と位置付けられている。労働者が業務を通じて、発がん性物質、変異原性物質、または生殖毒性物質(以下「CMR物質」)にばく露される、またはその恐れがあるすべての活動に適用される。
■ 背景と問題意識:CMR物質へのばく露は、労働者の健康に重大な悪影響を及ぼす。科学的知見の進展に伴い、対象物質の拡大や限界値の見直しを継続的に行う必要がある。
■ 期待される効果:CMR物質の取り扱いに関するEU全体の厳格な共通最低基準を定めることで、労働災害や職業病の発生を抑え、公正な競争環境を確保する。
■ 適用対象:CMR物質へのばく露リスクがあるすべての事業セクターの事業者。
■ 主な事業者要件:リスク評価の実施、CMR物質の代替または使用削減、閉鎖系での使用、ばく露の最小化、健康監視、および労働者への教育・訓練。
■ 施行時期:現行の2004/37/ECは、1990年の旧指令を統合・更新したものであり、直近では2024年に生殖毒性物質の追加などの修正が行われている。
適用除外(対象外・猶予・免除等)
法令全体の適用から除外される対象は以下の通りである。
■ 放射性物質:欧州原子力共同体(Euratom)条約の適用範囲内にある放射線のみにばく露する労働者。
また、アスベストについて、原則として指令2009/148/ECが適用されるが、本指令の規定が職場における健康と安全により有利である場合には、本指令の規定も適用される。
事業者が注意すべき内容
| 本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。 ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。 |
雇用主(事業者)が職場における労働者の安全衛生を確保するために遵守すべき要件は以下の通り。
リスクの特定と評価
■ リスク評価の義務:CMR物質にばく露する恐れがあるすべての活動において、ばく露の性質、程度、期間を特定し、労働者の安全および健康へのリスク評価を行わなければならない(第3条第1項、第2項)。
■ 評価の更新:リスク評価は定期的に、また、ばく露条件に影響を及ぼす変化が生じた場合には必ず更新する(第3条第2項)。
■ 全ばく露経路の考慮:評価にあたっては、吸入だけでなく皮膚吸収などのすべてのばく露経路を考慮する(第3条第3項)。
■ 対象の特定(附属書I): CMR物質には、規則(EC)No 1272/2008に基づく分類だけでなく、附属書Iに列記された特定の作業工程や、それらの工程で放出される物質も含まれる。
■ 最低要件と限界値(附属書III・IIIa): 特に附属書IIIに規定された職業ばく露限界値(空気中濃度)や、附属書IIIaに規定された生物学的限界値(血液中濃度等)は実務上の重要な基準である。
■ 特定の配慮が必要な労働者:特にリスクの高い労働者に対して特別な注意を払い、CMR物質と接触する可能性がある区域にそれらの労働者を従事させないことの妥当性を検討する(第3条第4項)。
使用の削減と代替
■ 代替の義務:技術的に可能な限り、CMR物質を安全な、またはより危険性の低い物質、混合物、またはプロセスに代替することにより、使用を削減しなければならない(第4条第1項)。
■ 調査結果の提出:当局から要請があった場合、代替の可能性に関する調査結果を提出する(第4条第2項)。
ばく露の防止と削減
■ 閉鎖系での使用:代替が不可能な場合、技術的に可能な限り、閉鎖系でCMR物質を製造および使用しなければならない(第5条第2項)。
■ ばく露の最小化:閉鎖系が不可能な場合、閾値のない物質については技術的に可能な限り低いレベルまで、閾値のある物質については最小限までばく露レベルを削減する(第5条第3項、第3a項)。
■ 職業ばく露限界値の遵守:附属書IIIに定められた限界値を超えてはならない(第5条第4項)。
■ 具体的な防止措置の実施:職場での使用量の制限、ばく露労働者数の最小化、作業プロセスの設計、発生源におけるリスクの除去(局所排気、全体換気等)、適切な測定手順、集団保護および個人保護措置、衛生措置、警告サインの掲示、緊急時対応計画の策定、安全な保管・輸送・廃棄を確実に実施する(第5条第5項)。
■ 当局への情報提供:当局からの要請があった場合、活動の内容、使用量、ばく露労働者数、予防措置、保護具の種類、ばく露の程度、代替の事例などの情報を提出する(第6条)。
緊急事態と特定の活動への対応
■ 異常事態への通知と対応:事故等による異常なばく露が生じた場合、労働者に通知し、原因が解消されるまで影響エリアへの立ち入りを修理に必要な最小限の労働者に制限する。当該労働者には保護具を着用させる(第7条)。
■ メンテナンス時の措置:ばく露の著しい増加が予見される活動(メンテナンス等)では、労働者と協議の上、ばく露時間を最小限に抑え、必要な保護具を提供・着用させる(第8条第1項)。
■ リスク区域へのアクセス制限:リスク評価で危険が認められた区域には、職務上必要な労働者のみがアクセスできるように制限し、明確な表示を行う(第9条、第8条第2項)。
衛生・教育・関与
■ 衛生措置の徹底:汚染リスクがある区域での飲食・喫煙の禁止、適切な保護衣の提供、および保護具の点検・清掃を実施する。これらにかかる費用を労働者に負担させてはならない(第10条)。
■ 十分な訓練の提供:健康リスク、予防措置、衛生要件、保護具の使用方法について、定期的に訓練を提供する。新しい物質の導入など状況の変化に応じて訓練を更新する(第11条第1項)。
■ ラベルと警告:CMR物質を含む容器や設置物にはラベルを付し、警告表示する(第11条第2項)。
■ ばく露リストの作成とアクセス:ばく露リスクのある労働者のリストを作成し、更新する。(第12条)。
■ 協議と関与:本指令の事項について、労働者およびその代表者との協議を行い、均衡のとれた関与を可能にする(第13条)。
健康監視と記録保持
■ 健康監視の実施:リスク評価に基づき、ばく露前および定期的な健康監視を実施する。生物学的限界値が設定されている場合は必須となる(第14条、第11条第3項)。
■ 長期の記録保存:発がん性・変異原性物質に関するリストと医療記録は、ばく露終了後少なくとも40年間保存する(第15条第1項)。生殖毒性物質については少なくとも5年間保存する(第15条第1a項)。
将来的に事業者へ影響を及ぼすと思われる内容
■ ばく露限界値の新設・改訂:少なくとも25の優先物質について新たな、または改訂された職業ばく露限界値を設定するためのアクションプランが提示されており、規制が強化される可能性がある(第18a条第3項)。
■ 有害医薬品(HMP)への規制:医療現場における有害医薬品の定義確立やガイドライン配布が進められており、ヘルスケア部門の事業者は今後の国内対応を注視する必要がある(第18a条第4項、第5項)。
■ 内分泌攪乱物質への範囲拡大:2026年4月までに内分泌攪乱物質を本指令の範囲に含めるかどうかの科学的評価が開始される予定である(第18a条第9項)。
注目定義
■ 「発がん性物質」(carcinogen)
| (i)欧州議会及び理事会の規則(EC)No 1272/2008の附属書Iに規定されているカテゴリー1Aまたは1Bの発がん性物質として分類される基準を満たす物質または混合物。 (ii)本指令の附属書Iに記載されている物質、混合物またはプロセス、ならびに同附属書に記載されているプロセスによって放出される物質または混合物。 |
■ 「変異原」(mutagen)
| (i)規則(EC)No 1272/2008の附属書Iに規定されているカテゴリー1Aまたは1Bの生殖細胞突然変異原として分類される基準を満たす物質または混合物。 (ii)本指令の附属書Iに記載されている物質、混合物またはプロセス、ならびに同附属書に記載されているプロセスによって放出される物質または混合物。 |
■ 「生殖毒性物質」(reprotoxic substance)
| 規則(EC)No 1272/2008の附属書Iに規定されているカテゴリー1Aまたは1Bの生殖毒性物質として分類される物質または混合物。 |
■ 「非閾値生殖毒性物質」(non-threshold reprotoxic substance)
| 労働者の健康に対する安全なばく露レベルが存在しない生殖毒性物質であって、附属書IIIの表記欄にそのように記載されているもの。 |
■ 「閾値生殖毒性物質」(threshold reprotoxic substance)
| 労働者の健康にリスクがない安全な曝露レベルが存在し、附属書IIIの表記欄にそのように記載されている生殖毒性物質。 |
■ 「限度値」
| 特に指定がない限り、附属書IIIに規定される特定の参照期間における、作業者の呼吸域内の空気中の発がん性物質、変異原性物質または生殖毒性物質の濃度の時間加重平均の限度。 |
■ 「生物学的限界値」
| 当該物質、その代謝物、または効果の指標の適切な生体試料における濃度の限界。 |
目次
第I章:一般規定
第1条:目的
第2条:定義
第3条:範囲 - リスクの特定および評価
第II章:雇用主の義務
第4条:削減および代替
第5条:ばく露の防止および削減
第6条:管轄当局への情報提供
第7条:予期しないばく露
第8条:予見可能なばく露
第9条:リスクエリアへの立ち入り制限
第10条:衛生および個人保護
第11条:労働者への情報提供および訓練
第12条:労働者への情報提供
第13条:労働者との協議および関与
第13a条:労使合意
第III章:雑則
第14条:健康監視
第15条:記録保持
第16条:ばく露限界値
第16a条:生殖毒性物質の特性特定
第17条:附属書IIの修正
第17a条:委任権限の行使
第17b条:緊急手続
第18条:データの利用
第18a条:評価
第19条:委員会への通知
第20条:廃止
第21条:施行
第22条:宛先
附属書
附属書I:第2条(a)(ii)および(b)(ii)に言及される物質、混合物およびプロセスのリスト
附属書II:労働者の健康監視に関する実務上の勧告
附属書III:職業ばく露限界値 附属書
附属書IIIa:生物学的限界値および健康監視措置
附属書IV:廃止された指令およびその修正のリスト
附属書V:相関表
基礎情報
| 法令(現地語) | |
| 法令(日本語) | 職場における発がん性物質、変異原性物質、生殖毒性物質へのばく露に関連するリスクからの労働者保護に関する欧州議会および理事会指令2004/37/EC(理事会指令89/391/EEC第16条(1)の意味における第6個別指令) |
| 公布日 | 2004年4月30日 |
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