解説EU-電離放射線防護指令

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法令の情報時期:2014年01月 統合版 ページ作成時期:2026年06月

目的

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本指令は、電離放射線へのばく露から生じる危険に対し、職業ばく露、医療ばく露、および公衆ばく露の対象となる個人の健康を保護するための、統一された基本安全基準を確立することを目的としている。

■ 電離放射線による健康被害からの個人の保護。

■ 域内における共通の安全基準の策定。

概要

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本指令は、電離放射線に関する5つの旧指令を統合・更新し、最新の科学的知見(ICRP勧告等)に基づいた放射線防護の法的枠組みを提供するものである。

■ 背景・問題意識:放射線防護基準を最新の科学的知見に適合させ、かつ複数の指令に分散していた規定を整理・簡素化することで、一貫性のある高度な保護を実現する必要がある。

■ 適用範囲:放射線防護の観点から無視できないリスクを伴う、あらゆる計画的な、既存の、または緊急のばく露状況に適用される。具体的には、放射性物質の製造・使用・輸送・廃棄、電離放射線を放出する、5kV以上の電圧で動作する電気機器の運用、天然放射線源を伴う人間の活動(航空機運用、ラドンばく露等)が含まれる。

■ 主な事業者要件:放射線防護原則(正当化、最適化、線量制限)の遵守、活動の届出または認可の取得、労働者の教育訓練、区域管理、および個人線量モニタリング。

■ 附属書は第1から第19まであり、技術的基準や判断基準、 特定の線源や慣行に関するリスト、事業者の管理実務・手続きに関する要件等の具体的情報を網羅している

適用除外(対象外・猶予・免除等)

適用除外

以下の事項は、本指令の適用範囲から除外される。

■ 人体に含まれる放射性核種や地表レベルの宇宙放射線など、自然レベルの放射線へのばく露。

■ 航空機・宇宙船の乗組員以外の公衆または労働者に対する、飛行中または宇宙空間での宇宙放射線ばく露。

■ 物理的に乱されていない地殻に存在する放射性核種からの地上ばく露。

事業者が注意すべき内容

本法令が定める事業者に係わる主な要件は次の通りとなります。本項は網羅的なものではないため、詳細や罰則については、個別調査にて承ります。
ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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放射線防護の一般原則

■ 三原則の遵守:すべてのばく露状況において、正当化(便益が害を上回ること)、最適化(ALARA原則:経済・社会的要因を考慮し、合理的に達成可能な限り低く保つこと)、および線量制限(個人線量限度を超えないこと)を反映しなければならない(第5条)。

■ 線量拘束値の設定:最適化のための運用ツールとして、職業ばく露に対する線量制限を設定しなければならない(第6条)。

職業ばく露に関する制限と保護

■ 線量限度の遵守:職業ばく露を受ける労働者に対し、実効線量で年間20mSvを超えてはならない。ただし、特定の状況下で加盟国が認める場合、5年間平均で20mSv/年を超えないことを条件に、単年で最大50mSvまで認められる場合がある(第9条)。

■ 妊婦・授乳婦の保護:労働者が妊娠を報告した場合、胎児への線量が1mSvを超えないよう作業条件を調整しなければならない。また、授乳中の労働者は、放射性核種の摂取や身体汚染の重大なリスクがある作業に従事させてはならない(第10条)。

■ 年齢制限:18歳未満の者を被ばく労働者に割り当ててはならない(第8条)。

教育訓練と情報提供

■ 労働者への教育:被ばく労働者に対し、健康リスク、一般的な保護手順、緊急時の対応、および医学的・行政的要件の遵守の重要性について、適切なトレーニングと情報を提供しなければならない(第15条)。

■ 密封線源の管理教育:高放射能密封線源(HASS)を扱う事業者は、その安全管理と紛失時の影響について、特に重点的なトレーニングを実施しなければならない(第15条第5項)。

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管理体制と専門家の関与

■ 放射線防護専門家(RPE)の助言:事業者は、保護装置のテスト、設置計画のレビュー、線源の受け入れ、計測器の校正等について、放射線防護専門家から助言を得なければならない(第34条)。

■ 区域の分類:ばく露リスクに基づき、職場を「管理区域」と「監視区域」に分類し、適切なアクセス制限、標識掲示、および監視を行わなければならない(第36条、第37条、第38条)。

モニタリングと健康監視

■ 労働者の区分と測定:年間実効線量が6mSvを超える可能性のある労働者を「カテゴリーA」として区分し、線量計による体系的な個別モニタリングを実施しなければならない(第40条、第41条)。

■ 医学的監視:カテゴリーA労働者に対し、就業前および年1回以上の定期的な健康診断を実施し、健康記録を退職後も(75歳になるまで、かつ少なくとも30年間)保管しなければならない(第45条、第48条)。

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特定の放射線源の管理

■ 職場におけるラドン:地上階または地下の職場等でラドン濃度を測定し、加盟国が定める参照レベル(最大300 Bq/m³)を超える場合は、最適化原則に基づき濃度低減措置を講じなければならない。改善後も超過する場合は当局への届出が必要となる(第54条)。

■ 高放射能密封線源(HASS):HASSを保持する事業者は、その安全管理のために財源を確保し(第87条)、漏れテストを定期的に実施し、紛失や盗難を防止するための手順を文書化しなければならない(第91条、附属書XV)。

政府への要件を通して将来的に事業者へ影響を及ぼす内容

■ ラドン行動計画の策定:加盟国は、職場や住宅におけるラドンの長期的リスクに対処するための「国家行動計画」を策定する義務がある(第103条)。これにより、将来的に特定の地域(ラドン優先地域)に所在する事業者に対し、追加の測定や建築的対策が義務付けられる可能性がある。

■ 検査体制の強化:加盟国は本指令を執行するための検査システムを構築し、不備がある場合には是正措置の要求や認可の取り消しを行う権限を有する(第104条、第105条)。事業者は当局による査察プログラムの対象となり、コンプライアンス状況が厳格にチェックされることになる。

注目定義

■ 「事業者」(Undertaking)

慣行(後述)を実施するため、または放射線源に対して、国内法に基づき法的責任を負う自然人または法人を指す。これには、線源の所有者や保持者が自ら活動を行わない場合も含まれる。

■ 「職業保健サービス」(Occupational health service)

被ばく労働者の医学的監視(健康診断等)を行う能力を有し、管轄当局に認められた専門家または組織。

■ 「放射線防護専門家」(Radiation protection expert / RPE)

個人の効果的な保護を確実にするため、放射線防護に関する助言を行うための知識や訓練、経験を有し、管轄当局に認められた個人またはグループ。

■ 「放射線防護責任者」(Radiation protection officer / RPO)

射線防護の手配を実施・監督するために必要な技術的能力を有し、事業所内での実務を担う個人。

■ 「管理区域」(Controlled area)

電離放射線に対する保護、または放射性汚染の拡散防止を目的とした特別な規則が適用され、かつアクセスが制御されている区域。

■ 「監視区域」(Supervised area)

電離放射線に対する保護を目的として、監督(監視)下にある区域。

■ 「実効線量」(Effective dose)

内部ばく露および外部ばく露による、体内のすべての組織・臓器の加重等価線量の合計。単位はシーベルト(Sv)である。

■ 「線量拘束値」(Dose constraint)

計画的ばく露状況において、特定の放射線源に対する最適化プロセスで検討される選択肢の範囲を定めるため、個人線量上限値として事前設定される制約。

■ 「参照レベル」(Reference level)

緊急ばく露状況または既存ばく露状況において、「超えてはならない限度値」でなくとも、それを上回るばく露を許容することは不適切であると判断される線量または放射能濃度のレベル。

■ 「慣行」(Practice)

放射線源からの個人のばく露を増加させる可能性のある人間の活動であり、計画的ばく露状況として管理されるもの。

■ 「高放射能密封線源」(High-activity sealed source / HASS)

含有される放射性核種の放射能量が、附属書IIIで定められた値以上である密封線源。

■ 「身元不明線源」(Orphan source)

免除対象でも規制管理下でもない放射性線源。具体的には、当初から規制を受けていないものや、放棄、紛失、盗難、または適切な許可なく譲渡されたものが含まれる。

■ 「画像撮影ばく露」(Non-medical imaging exposure))

画像の生成を主目的とし、ばく露を受ける個人の健康上の利益を主目的としない、意図的な人体へのばく露。

目次

第1章:目的と範囲

  第1条:対象事項

  第2条:範囲

  第3条:範囲からの除外

第2章:定義

  第4条:定義

第3章:放射線防護体系

  第5条:放射線防護の一般原則

 第1節:最適化ツール

  第6条:職業、公衆、医療ばく露に対する線量制限

  第7条:参照レベル

 第2節:線量制限

  第8条:被ばく労働者の年齢制限

  第9条:職業ばく露に対する線量限度

  第10条:妊婦および授乳婦の保護

  第11条:見習いおよび学生に対する線量限度

  第12条:公衆ばく露に対する線量限度

  第13条:実効線量および等価線量の推定

第4章:放射線防護に関する教育、訓練、情報提供

  第14条:教育、訓練、情報提供に関する一般的責任

  第15条:被ばく労働者に対する訓練と情報提供

  第16条:身元不明線源に遭遇する可能性のある労働者への教育

  第17条:緊急時作業員に対する事前の情報提供と訓練

  第18条:医療ばく露分野における教育、情報、訓練

第5章:慣行の正当化および規制管理

 第1節:正当化と禁止

  第19条:慣行の正当化

  第20条:消費者製品に関わる慣行

  第21条:慣行の禁止

  第22条:非医療目的の意図的な人体ばく露

 第2節:規制管理

  第23条:天然放射性物質を伴う慣行の特定

  第24条:規制管理への段階的アプローチ

  第25条:届出

  第26条:届出の免除

  第27条:登録または認可

  第28条:認可

  第29条:認可手続

  第30条:規制管理からの解除

第6章:職業ばく露

  第31条:責任

  第32条:被ばく労働者の運用上の保護

  第33条:見習いおよび学生の運用上の保護

  第34条:放射線防護専門家との協議

  第35条:職場における対応の手配

  第36条:職場の分類

  第37条:管理区域

  第38条:監視区域

  第39条:職場の放射線監視

  第40条:被ばく労働者の分類

  第41条:個別モニタリング

  第42条:事故ばく露時の線量評価

  第43条:結果の記録と報告

  第44条:個別モニタリング結果へのアクセス

  第45条:被ばく労働者の医学的監視

  第46条:医学的分類

  第47条:不適格労働者の雇用禁止

  第48条:医学記録

  第49条:特別医学監視

  第50条:不服申し立て

  第51条:外部労働者の保護

  第52条:特別に承認されるばく露

  第53条:緊急職業ばく露

  第54条:職場におけるラドン

第7章:医療ばく露

  第55条:正当化

  第56条:最適化

  第57条:責任

  第58条:手順

  第59条:訓練と認定

  第60条:機器

  第61条:特殊な慣行

  第62条:妊娠中および授乳中の特別な保護

  第63条:事故ばく露および意図しないばく露

  第64条:集団線量の推定

第8章:公衆ばく露

 第1節:通常時における公衆の保護および長期的な健康保護

  第65条:公衆保護の実務

  第66条:公衆の線量推定

  第67条:放射性排出物のモニタリング

  第68条:事業者の任務

 第2節:緊急ばく露状況

  第69条:緊急時対応

  第70条:緊急時に影響を受ける可能性のある公衆への情報提供

  第71条:緊急時に実際に影響を受けた公衆への情報提供

 第3節:既存ばく露状況

  第72条:環境モニタリング計画

  第73条:汚染地域

  第74条:屋内におけるラドンばく露

  第75条:建築材料からのガンマ線

第9章:一般的責任および規制管理のその他の要件

 第1節:制度的基盤

  第76条:管轄当局

  第77条:透明性

  第78条:機器に関する情報

  第79条:サービスおよび専門家の認定

  第80条:労働衛生サービス

  第81条:個人線量測定サービス

  第82条:放射線防護専門家(RPE)

  第83条:医学物理専門家

  第84条:放射線防護責任者(RPO)

 第2節:放射性線源の管理

  第85条:非密封線源に関する一般的要件

  第86条:密封線源に関する一般的要件

  第87条:高放射能密封線源(HASS)の管理要件

  第88条:HASSの認可に関する具体的要件

  第89条:事業者による記録保持

  第90条:当局による記録保持

  第91条:HASSの管理

 第3節:身元不明線源

  第92条:身元不明線源の検出

  第93条:金属汚染

  第94条:身元不明線源の回収、管理、制御および処分

  第95条:身元不明線源のための財源確保

 第4節:重大な事象

  第96条:重大事象の通知および記録

 第5節:緊急ばく露状況

  第97条:緊急事態管理システム

  第98条:緊急事態への準備

  第99条:国際協力

 第6節:既存ばく露状況

  第100条:既存ばく露状況に関するプログラム

  第101条:戦略の策定

  第102条:戦略の実施

  第103条:ラドン行動計画

 第7節:執行システム

  第104条:検査

  第105条:執行

第10章:最終規定

  第106条:国内法化

  第107条:廃止

  第108条:発効

  第109条:宛先

附属書I:第7条および第101条に言及される公衆ばく露の参照レベル

附属書II:第4条第25項および第33項に言及される放射線および組織加重係数

附属書III:第4条第41項に言及される高放射能密封線源(HASS)を定義する放射能値

附属書IV:第20条に言及される消費者製品に関わる新たな種類の慣行の正当化

附属書V:第22条に言及される非医療目的の画像撮影ばく露を伴う慣行の例示的リスト

附属書VI:第23条に言及される天然放射性物質(NORM)を伴う産業部門のリスト

附属書VII:第24条、第26条および第30条に言及される免除およびクリアランス基準

附属書VIII:第75条に言及される建築材料から放出されるガンマ線の放射能濃度指数の定義と使用

附属書IX:第29条に言及される認可申請のための例示的情報リスト

附属書X:第43条、第44条および第51条に言及される個人放射線モニタリングのためのデータシステム

附属書XI:第69条、第97条および第98条に言及される緊急事態管理システムおよび緊急時対応計画

附属書XII:第70条および第71条に言及される緊急時に適用される健康保護措置および講ずべき手順に関する公衆への情報

附属書XIII:第75条に言及される放出ガンマ線に関して考慮される建築材料の種類の例示的リスト

附属書XIV:第89条に言及される高放射能密封線源(HASS)の記録に含まれるべき情報

附属書XV:第91条に言及される高放射能密封線源に責任を負う事業者への要件

附属書XVI:第91条に言及される高放射能密封線源の識別および標識

附属書XVII:第100条に言及される既存ばく露状況の種類の例示的リスト

附属書XVIII:第54条、第74条および第103条に言及されるラドンばく露による長期的リスクに対処するための国家行動計画の策定において考慮すべき事項

附属書XIX:第107条に言及される旧指令との相関表

基礎情報

法令(現地語)

Council Directive 2013/59/Euratom of 5 December 2013 laying down basic safety standards for protection against the dangers arising from exposure to ionising radiation, and repealing Directives 89/618/Euratom, 90/641/Euratom, 96/29/Euratom, 97/43/Euratom and 2003/122/Euratom

法令(日本語)

電離放射線被ばくに起因する危険からの防護に関する基本安全基準を定める2013年12月5日付理事会指令2013/59/Euratom(指令89/618/Euratom、90/641/Euratom、96/29/Euratom、 97/43/Euratom および 2003/122/Euratom を廃止)

公布日

2014年01月17日

作成者

株式会社先読

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