2026年08月25日、米国運輸省連邦航空局(FAA)は、新たな宇宙港(スペースポート)の立地選定および重要な宇宙打上げ回廊のための優先空域の設定について、情報提供要請(RFI:Request for Information)を公表し、意見募集を開始しました(91 FR 54909、文書番号2026-17290、ドケット番号FAA-2026-9736)。
本RFIは、2026年国家宇宙輸送政策(NSTP、国家安全保障大統領覚書第17号)および大統領令14369「Ensuring American Space Superiority」(2025年12月18日)を実施するものです。これらの政策文書は、運輸長官に対して「追加の打上げ施設の潜在的立地を特定する」ことおよび「重要な宇宙打上げ回廊のための優先空域を指定する」ことを指示しており、本RFIはその第一段階として、産業界および一般からの意見を募るものです。
FAAが示す見通しによれば、2025年には世界全体の打上げ329回のうち217回が米国発でしたが、そのうち83%がケープカナベラル、ケネディ宇宙センター、ヴァンデンバーグの3か所の連邦施設に集中しています。国家宇宙輸送政策は2030年までに年間1,000回を超える打上げおよび再突入を目標としており、FAAはさらに2035年までに年間1万件のFAA許認可による打上げおよび再突入を見込んでいます。この規模に対応するには、既存の連邦射場だけでは打上げ・再突入サイトの空きが制約要因(ボトルネック)となる可能性があるとされています。
意見の提出期限は2026年10月26日(公表から59日)です。本RFIは規則制定手続ではなく、法的拘束力を持つものではありませんが、今後の立地選定および空域制度の設計の前提となるため、打上げ事業者、宇宙港の運営者・開発者、輸送機の製造事業者に加え、空域を共用する航空事業者にとっても、制度設計に意見を反映させる機会となります。
1. 本RFIの位置付け
1-1. 根拠となる政策
- 2026年国家宇宙輸送政策(NSTP):2026年08月20日に署名され、08月25日に連邦官報に掲載された国家安全保障大統領覚書第17号。2030年までに年間1,000回超の打上げ・再突入を支える能力の実現を目標として掲げ、運輸長官に対し、追加の打上げ施設の潜在的立地の特定、空域・交通管制の現代化への統合、優先空域の指定を180日以内に行うよう指示しています。
- 大統領令14369「Ensuring American Space Superiority」:2025年12月18日付。
1-2. RFIの目的
FAAは、商業宇宙運用の加速を支えるため、「輸送に関係する2つの主要な要素」、すなわち(1)新たな宇宙港の立地選定、(2)重要な宇宙打上げ回廊のための優先空域の整備、について公衆および産業界からの意見を求めるとしています。
2. 意見提出の手続
- 提出期限:2026年10月26日
- 提出方法:
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- オンライン:regulations.gov(ドケット番号 FAA-2026-9736)
- 郵送:Docket Operations, U.S. Department of Transportation, 1200 New Jersey Avenue SE, Washington, DC
- 問合せ先:James Hatt(電話 202-267-4156)、電子メール NSTP2026@faa.gov
- 提出時の記載事項:氏名、所属、会社のURL、連絡先。営業秘密・機密情報に該当する部分については、その旨と理由を明示する必要があります。
- 留意点:回答は簡潔かつ適度な分量とすることが求められています。運輸省は説明や説明会を求めることがあり得ますが、日程上、対面での面談は保証されません。本RFIは拘束力を持たず、運輸省は回答者の全部、一部またはいずれとも連絡を取らない権利を留保しています。情報提供や資料作成に対する対価の支払いはなく、提出された営業秘密資料は運輸省の所有となります。なお、本RFIは選定情報要請(Screening Information Request)でも提案要請(Request for Offers)でもなく、提案書の提出を求めるものではありません。
3. 主な質問事項
RFIは6つの分野について具体的な質問を提示しています。
3-1. 宇宙港の立地基準
- 赤道への近接性、人口密度、上空通過(overflight)の考慮といった戦略的・地理的要因
- 開発の容易さ、アクセス、インフラといった物流上の要件
- 島嶼部の立地と大陸部の立地の相違
- 立地決定における国際的な利害
- 公衆安全の基準(現行基準は1運用あたり1×10-4人の死傷)
3-2. 既存の商業宇宙港が十分に活用されていない理由
- 既存の商業宇宙港が低利用にとどまっている理由
- 軌道打上げ活動を増加させるために連邦がとり得る措置
- 運用面での開発の障壁
- 過去に許可を受けた施設の再開(更新)の経路
3-3. 過去に提案された立地
RFIは、次の4つの具体的な候補について意見を求めています。
- Spaceport Shiloh(フロリダ州):Space Floridaによる連邦土地150エーカーの提案
- Camden Spaceport(ジョージア州):NASAのアポロ計画期の旧施設。郡の許可は2026年12月まで有効
- プエルトリコの宇宙港:小型・中型輸送機を想定した構想(2012年から2016年にかけて検討)
- 海上打上げリグ:石油掘削リグの転用、または専用の海上プラットフォーム
3-4. 新たな立地の特定
- 垂直打上げ型の宇宙港として具体的に推薦される候補地
- 開発を支える規制の見直し(14 CFR第420部に言及)
- 4つの中核的課題への対応策:関係者との調整、空港との併設、環境コンプライアンス、空域統合
- 前提となるインフラ(大型積載に対応する道路、深水港など)
- 建設費および工期短縮の方策
- 供給網およびエネルギー制約の緩和策
- 資金調達の手法(NIDO(国家インフラ開発室)の取組で示された公民連携を含む)
3-5. 重要な宇宙打上げ回廊の整備
- 回廊の優先順位付けに関する産業界の期待
- 空域の効率性に対する悪影響の緩和
- 宇宙分野および航空分野の双方にとっての運用上の便益
- 運用および調整のタイムラインの調整
- 回廊を発動するための要件(ペイロードの性格付け:商業、民生、国家安全保障)
- 対象とすべき宇宙港の範囲(すべての宇宙港か、主要な宇宙港のみか、連邦施設のみか)
- ガバナンスの構造(料金、運用制限、監督)
- 公衆安全および航空安全に関する緊急時手順
- 回廊の位置および発動に関する環境影響評価
- 現行の航空機危険区域(AHA:Aircraft Hazard Area)に代えて「重要な宇宙打上げ回廊」という枠組みを指定することの利点
3-6. その他
RFIの枠組みで明示的に扱われていない論点についても、回答者が指摘することが奨励されています。
4. 事業者への影響
4-1. 打上げ事業者・宇宙港の開発者
2035年までに年間1万件という運用需要の見通しは、打上げ・再突入サイトの拡張需要を生みます。優先空域へのアクセスが確保されれば、より高い打上げ頻度(launch cadence)の実現につながります。他方で、射場の「利用申請の時期と空き状況」が引き続き重要な運用要因になると指摘されています。既存の商業宇宙港を運営する事業者にとっては、低利用の要因と改善策について意見を述べる機会となります。
4-2. 航空事業者・空域利用者
宇宙打上げの加速と、航空機危険区域(AHA)の時期・規模・継続時間の事前通知との両立が課題として挙げられています。RFIは「空域効率および航空輸送産業の継続的成長に対する悪影響」の可能性に言及しており、航空事業者にとっては、航路運用や遅延への影響を評価し、緩和策を提案する機会となります。あわせて、航空の安全を確保するための緊急時措置についても意見が求められています。
4-3. 既存の連邦射場の利用者
ケープカナベラル、ケネディ宇宙センター、ヴァンデンバーグに集中する現状では、打上げ・再突入サイトの空き状況が国家目標の達成にとって制約要因となる可能性があると指摘されています。これらの施設を利用している事業者にとっては、代替サイトの整備が中長期的な運用計画に関わります。
4-4. 環境・公衆安全
新たな宇宙港の立地は、公衆安全の基準を満たすとともに、立地段階および運用段階の双方において環境上の懸念に対応する必要があるとされています。環境コンプライアンスは、RFIが挙げる4つの中核的課題の一つに位置付けられています。
5. 対応にあたっての整理
- 誰が:打上げ事業者、宇宙港の運営者・開発者、輸送機および関連機器の製造事業者、航空事業者および空域利用者、立地候補地に関係する地方自治体・港湾・インフラ事業者。
- いつまでに:2026年10月26日まで。
- 何を:上記6分野の質問事項のうち、自社の事業に関わるものについての意見。とりわけ、立地基準、既存宇宙港の低利用の要因、回廊の発動要件とガバナンス、AHAとの比較、環境・安全上の要請への対応策。
- どうすればよいのか:regulations.govのドケットFAA-2026-9736に、氏名・所属・連絡先を付して意見を提出します。営業秘密に該当する情報を含める場合は、その範囲と理由を明示します。提出は非拘束であり、提出したことにより調達上の地位が生じるものではありません。
なお、本RFIに対しては公表時点で4件の意見が提出されています。今後、FAAは寄せられた意見を踏まえ、国家宇宙輸送政策が定める180日以内という期限に沿って、打上げ施設の潜在的立地の特定および優先空域の指定を進めることが見込まれます。
参考情報
Federal Register(連邦官報)「Siting New Spaceports and Use of Priority Airspace for Critical Space Launch Corridors」(91 FR 54909、文書番号2026-17290、ドケット番号FAA-2026-9736)
Federal Register(連邦官報)「The National Space Transportation Policy」(91 FR 54929、文書番号2026-17372)
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