2026年08月26日、米国通商代表部(USTR)は、2026年版「悪名高い市場リスト」(Notorious Markets List)の作成に向け、著作権侵害または商標偽造に相当規模で従事し、あるいはこれを助長しているオンライン市場および実店舗市場の事例を特定するため、広く情報提供を求めると公表しました。連邦官報91 FR 55154に掲載されたもので、ドケット番号はUSTR-2026-0529、文書番号は2026-17351です。意見提出期限は2026年10月07日午後11時59分(米国東部時間)、提出された意見に対する反論および追加情報の提出期限は2026年10月21日午後11時59分です。
本レビューは、1974年通商法182条に基づくスペシャル301プログラムの一環として実施され、同法141条に定める米国通商代表の権限に基づくものです。2026年版のリストでは、「スーパーフェイク」(superfakes)または「スーパークローン」(superclones)と呼ばれる高品質の偽造商標品に関連する問題を重点的に検証するとされています。従来の粗悪な模倣品とは異なり、正規品との識別が困難な水準の偽造品が焦点となる点が今回の特徴です。
ブランドやコンテンツを保有する事業者にとって、本レビューは自社製品・著作物の侵害実態を米国政府に対して公式に申し立てる年次の機会です。提出には英語での作成、指定されたファイル名規則、企業秘密情報を含む場合の公開版の同時提出など、形式面の要件が複数課されており、これらを満たさない提出は受理されないおそれがあります。準備には相応の時間を要するため、対象市場の特定と証拠の整理を早期に始めることが実務上の要点となります。
悪名高い市場リストの沿革と位置づけ
USTRが悪名高い市場を初めて特定したのは2006年で、当時は年次のスペシャル301報告書のなかで言及される形でした。2010年に、これを年次報告書から切り離し「臨時レビュー」(out-of-cycle review)として独立に公表する方針へ転換し、2011年02月に初の独立したリストが発行されました。以後、毎年のレビューを経て公表されています。
ここで重要なのは、原典が明示している次の点です。
このリストは法的違反の判断を反映するものではなく、また特定国の知的財産保護・執行全般の分析でもありません。
個別国の知的財産環境に関する評価については、毎年春に公表される年次スペシャル301報告書を参照するよう案内されています。したがって、リストへの掲載は行政的・司法的な認定ではなく、米国政府による問題提起としての性格を持ちます。もっとも、掲載された市場に対しては、取引先や決済事業者、広告事業者などが取引方針を見直す契機となり得るため、実務上の影響は小さくありません。
USTRが求めている情報
提出者は、対象とする市場の類型に応じて、次の情報を整理して提出することが求められています。
オンライン市場(商標偽造に関するもの)
- ドメイン名、所有者・運営者名、地理的範囲、政府との関連性の有無
- 販売品数、規模、相対的重要性の推定
- 偽造品の数量・種類・割合の推定およびその算定根拠
- 権利者に生じた経済的損害の推定と計算方法
- 過年度との比較における増減状況
- 公衆衛生・安全上のリスクの有無
- 過去に採られた法的措置(契約上・民事・行政・刑事)とその結果
- 権利者による取組み(市場運営者への懸念の申入れ、削除要請、警告書の送付など)
- 市場運営者による対策(偽造品削除ポリシー、アカウント停止措置など)とその有効性
オンライン市場(著作権侵害に関するもの)
- ドメイン名、ホスティング提供者、所有者・運営者の氏名と所在地、地理的範囲
- 収益源(販売、購読、寄付、アップロードインセンティブ、広告)および徴収方法
- 著作権侵害による経済的損害の説明と推定
- 過年度との侵害件数・経済的損害の増減とその計算
- 法的措置の履歴と結果
- 権利者による措置とその結果
- 市場運営者による削除・制限・抑止措置とその有効性
実店舗市場
- 市場名、住所、近隣・ショッピング地区、都市、主要な所有者・運営者
- 政府との関連性の有無
- 販売・取引される偽造品・海賊版の種類
- 取扱量、規模、相対的重要性
- 経済的損害の説明と推定、過年度との増減
- 公衆衛生・安全上のリスク
- 法的措置の履歴と結果
- 権利者による措置(大家への警告書送付など)とその結果
- 市場運営者による対策とその有効性
いずれの類型でも、共通して「規模の推定」「経済的損害の推定と算定方法」「過年度との増減」「これまでに講じた措置とその結果」が求められている点が特徴です。単に侵害があるという指摘ではなく、数量・金額・時系列の変化・自助努力の履歴を伴った申立てが期待されていると読み取れます。
提出方法と形式要件
- 提出先:Regulations.gov上のドケット「USTR-2026-0529」を検索して電子的に提出します。
- ファイル形式:Microsoft Word(.docx)またはAdobe Acrobat(.pdf)が推奨されます。
- ファイル名規則:「提出者名または組織名_2026 Notorious Markets」とします。
- 言語:英語のみです。
企業秘密情報(BCI)を含む場合
企業秘密情報(Business Confidential Information)を含む提出については、次の取扱いが求められます。
- ファイル名を「BCI」で開始すること
- BCIを含むページに「BUSINESS CONFIDENTIAL」と表記すること
- 秘密に該当する部分を括弧またはハイライトで明示すること
- 秘密情報であることの認証を行うこと
- ファイル名を「P」で始める公開版を別途提出することが必須
公開版の提出を欠くと、秘密情報を含む提出そのものが受理されない可能性があります。社内の法務・知財部門と広報部門の間で、どこまでを公開版に含めるかを事前に整理しておく必要があります。
誰が、いつまでに、何を、どうすればよいのか
- 誰が:商標権・著作権を保有し、その侵害品がオンライン市場または実店舗市場で流通していると認識している事業者、および業界団体。市場の所有者・運営者も、自らの対策について説明する立場で提出できます。
- いつまでに:意見は2026年10月07日午後11時59分(米国東部時間)まで。他者の提出に対する反論・追加情報は2026年10月21日午後11時59分(同)まで。
- 何を:対象市場を特定する情報(ドメイン名または所在地、運営者)に加え、規模、偽造品・海賊版の割合、経済的損害の推定と算定方法、過年度との増減、これまでの法的措置と自助努力の履歴、市場側の対策とその有効性。
- どうすればよいのか:Regulations.govのドケットUSTR-2026-0529に、英語で、指定されたファイル名規則に従って提出します。企業秘密情報を含む場合は、BCI版と公開版の2種類を用意します。
市場運営者および外国政府への呼びかけ
USTRは、市場の所有者・運営者に対し、正規のコンテンツ・製品の認可された流通に依拠するビジネスモデルの採用を促し、権利者および執行機関との協力を奨励しています。また、外国政府当局に対しては、侵害行為の調査を強化し、適切な法的措置を追行するよう促しています。
この呼びかけは、自社がプラットフォームを運営する立場にある事業者にとっても意味を持ちます。削除ポリシーやアカウント停止措置の運用実績を整理しておくことは、仮に自社のプラットフォームが第三者から申し立てられた場合の説明材料となります。
実務上の留意点
本レビューは規制の新設や義務の賦課を伴うものではなく、参加は任意です。しかし、提出を行わなければ、自社が直面している侵害の実態はリストに反映されません。また、リストは毎年更新されるため、過年度に掲載された市場の状況が改善したか悪化したかという時系列の情報も、USTRが重視する要素として明示されています。
2026年版の重点である「スーパーフェイク」については、原典は用語の定義以上の具体的な判断基準を示していません。正規品との識別が困難な高品質の偽造商標品に関連する問題を検証するという記載にとどまるため、提出にあたっては、品質水準や識別困難性を裏付ける具体的な事実(鑑定結果、購買テストの記録など)を自ら整理して示すことが有効と考えられます。
参考情報
米国通商代表部(USTR)/連邦官報「2026 Review of Notorious Markets for Counterfeiting and Piracy: Comment Request」(91 FR 55154、2026年08月26日、文書番号2026-17351、ドケット番号USTR-2026-0529)
問い合わせ先:USTR 革新・知的財産部門 Claire Avery-Page(電話 202-395-6862、電子メール notoriousmarkets@ustr.eop.gov)
USTRウェブサイト:https://www.ustr.gov
注目情報一覧
新着商品情報一覧
調査相談はこちら
概要調査、詳細調査、比較調査、個別の和訳、定期報告調査、年間コンサルなど
様々な調査に柔軟に対応可能でございます。
- ●●の詳細調査/定期報告調査
- ●●の他国(複数)における規制状況調査
- 細かな質問への適宜対応が可能な年間相談サービス
- 世界複数ヵ国における●●の比較調査 など