2026年08月27日、米国環境保護庁(EPA)は、有害物質規制法(TSCA)第6条に基づくトランス-1,2-ジクロロエチレンのリスク評価案を公表し、意見募集を開始しました。連邦官報91 FR 55337に掲載されたもので、ドケット番号はEPA-HQ-OPPT-2018-0465です。評価案は、分析した使用条件(conditions of use)の下で、同物質がヒトの健康に対し不合理なリスク(unreasonable risk)をもたらすと暫定的に結論づけており、その主たる要因は職業曝露であるとしています。意見提出期限は2026年10月26日です。同物質は2019年12月に高優先度物質として指定され(84 FR 71924)、2020年09月04日に評価範囲が確定していました(85 FR 55281)。今後、パブリックコメントを経てEPA科学諮問委員会(SACC)によるピアレビューが実施され、最終リスク評価が発行される予定です。最終評価で不合理なリスクが確定した場合、EPAはTSCA第6条に基づき使用の禁止や使用条件の制限などのリスク管理措置を講じる義務を負います。溶剤や洗浄剤として同物質を製造・輸入・使用する事業者は、評価案の内容と自社の使用実態との整合を確認する必要があります。
評価の対象となった使用条件
原典で示されている主な用途および評価対象の使用条件は次のとおりです。
- 溶剤、反応生成物、洗浄剤(脱脂剤)、表面修飾剤、加工助剤としての用途
- 製造時の曝露シナリオ
- 蒸気脱脂での使用
- 製剤・混合物・反応生成物への組込み(溶剤として)
- 半導体製造での使用
- 吹出し剤(発泡剤)としての使用
評価された曝露経路と対象集団
評価案は、吸入(労働者、職業的非使用者、一般人)および皮膚(労働者)の経路、ならびに製品使用時の消費者曝露(吸入・皮膚)を対象としています。対象集団は、労働者、職業的非使用者(occupational non-users)、消費者、一般人口、周辺地域住民(fenceline communities)、および潜在的に曝露する感受性の高い部分集団(PESS)です。
リスクの種類としては、急性・中期・慢性の非がんリスクに加え、水生種および陸生種に対する環境リスクが評価されています。
EPAが特に情報提供を求めている事項
- 職業曝露シナリオにおける曝露制御および個人用保護具(PPE)の使用実態
- 蒸気脱脂施設の数
- 副産物製造における職業曝露評価に関するモニタリングデータ
- バッチ製造の頻度
- 特定の製剤化工程におけるPPEの使用実績
- EPAが把握していない関連研究・データソース
今後の手続と事業者の対応
- 2026年10月26日:意見提出期限。提出はRegulations.gov(ドケットID:EPA-HQ-OPPT-2018-0465)を通じて行います。
- 意見募集の終了後、EPA科学諮問委員会(SACC)によるピアレビューを実施予定。
- ピアレビューを経て最終リスク評価を発行し、TSCA第6条に従って不合理なリスクの有無を確定します。
現段階では具体的な規制措置は示されていません。ただし、EPAが求めている情報の多くは事業者側でなければ保有していない操業実態に関するものであり、この段階で自社の曝露制御の実態を示さないまま評価が確定すると、実態より厳しい前提で規制が設計されるおそれがあります。該当する用途を持つ事業者は、意見募集期間中の対応を検討することになります。
参考情報
米国環境保護庁(EPA)/連邦官報「trans-1,2-Dichloroethylene Draft Risk Evaluation Under the Toxic Substances Control Act (TSCA); Notice of Availability and Request for Comment」(91 FR 55337、2026年08月27日)
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