2026年9月16日、オーストラリアの「2026年財務法改正(税務助言者の不正行為に対する説明責任の強化その他の措置)法」(2026年法律第86号)の附則4が施行されました。同法は2026年9月15日に裁可され、附則4と附則5は裁可の日の翌日から施行されます。附則4は2010年競争・消費者法の企業結合届出制度を見直すもので、届出が必要であるにもかかわらず届出をせずに実行された企業結合について、法律上当然に無効とする扱いを改め、裁判所の命令によって無効とする扱いとしました。あわせて、支配と関連者(associate)の判定規則の見直しと、届出の効力が失われるまでの期間を延長する仕組みが設けられています。オーストラリアで企業結合を予定する事業者にとって、取引の法的安定性と手続の設計に直結する改正です。
未届出で実行された企業結合の扱い
新設された第77E条は、届出義務により実行が停止されている企業結合が実行された場合に、裁判所は、オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)の申立てにより、当該企業結合が無効であり、かつ当初から無効であったものとみなす旨の命令をしなければならないと定めます。ただし、裁判所が当該命令をすることが望ましくないと考える場合は、この限りではありません。
- 裁判所は、無効の宣言に代えて、当該企業結合に対処するために望ましいと考えるその他の命令をすることができます
- 申立ては、当該企業結合が実行された日から6年以内に行わなければなりません
- 裁判所は、当該企業結合が競争を実質的に減殺するか否か、公共の利益をもたらすか否か、その利益が弊害を上回るか否かを考慮してはならないとされています
従来は届出を欠いた実行が当然に無効となる建て付けでしたが、改正により、ACCCの申立てと裁判所の判断を経て無効となる仕組みに改められました。
支配と関連者の判定規則
新設された第51ABSA条は、ある者が法人を支配しているかどうかの判定について、2001年会社法第50AA条の「支配」の意義を出発点としたうえで、同条を読み替えて適用するものとしています。読み替え後の基準では、その者と1人以上の関連者が共同して、財務および運営の方針に関する決定の結果を左右する能力を有する場合に、その者が当該法人を支配しているものとされます。
第51ABSB条は、関連者の定義を次のとおり定めます。
- 当該者を支配し、または当該者に支配されている者
- 決定の結果を支配しまたは左右する目的で関連する合意をしている者
- 当該決定に関して協調して行動し、または行動しようとしている者
他方で、少数株主の保護条項を保有しているにすぎない場合、独立当事者間の融資契約に基づく権利を有するにすぎない場合、通常のガバナンス条項があるにすぎない場合には、関連者の関係は生じないとされています。
届出の効力が失われるまでの期間
第51ABG条は、届出は所定の期間の満了後直ちに効力を失う(stale となる)と定め、その期間を、ACCCの決定から12か月としています。ACCCは、書面による請求に基づき、さらに6か月を上限として延長することを決定できます。延長の判断にあたっては、企業結合が実行されていないことに合理的な理由があるか、および市場に実質的な変化があるかが考慮されます。
適用範囲
附則4の改正は、施行日である2026年9月16日以後に実行され、または実行されたとされる企業結合に適用されます。
事業者への影響
未届出取引が自動的に無効とはならなくなったことで、手続上の誤りが直ちに取引の効力を失わせるという事態は避けられるようになりました。もっとも、ACCCの申立てにより6年間にわたって無効の命令を求められ得る状態は残ります。届出の要否の判断は引き続き取引の前提として重要です。関連者の判定規則が明確化されたことにより、共同投資や株主間契約を伴う取引では、単独では支配に至らない持分でも、関連者と合わせて支配が認められる可能性を検討する必要があります。また、ACCCの決定から12か月以内に実行できない見込みの取引については、延長の請求を織り込んだ実行計画を立てることが有用です。
参考情報
オーストラリア連邦法令登録簿「Treasury Laws Amendment (Strengthening Accountability for Tax Adviser Misconduct and Other Measures) Act 2026(2026年法律第86号)」
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